ラオス 山からだより 9号           2008年4月

 

新年のご挨拶をと思っておりましたが、大変遅くなってしまいました。

南の方から桜の季節が巡ってきますが、仙台はまだ三寒四温の落着かないお天気が続いております。皆様はお健やかにお花見などを楽しんでいらっしゃるでしょうか?

 昨年の「通信」7号でご報告させていただきましたが、3月にお陰様で小さいながらも図書館の建物が完成し、図書館の活動を始めてから1年が経過致しました。

この1年間の図書館の活動は、予想をはるかに超える大きな広がりがありました。

もちろん、安井さん、ニア・ノーポーとツィアの図書館員さん、村の方々の応援のお力が大きいのですが、小さな建物でも拠点ができるということの大きな力を改めて感じました。

まず5月には、早速ラオスの人形劇団「カボーンラオ」を村にお招きして、ノンヘートや近くの村の学校、図書館など4ヶ所での公演を実現することができました。「カボーンラオ」は日本、フランス、スウェーデン、タイなど外国でも公演を重ねているそうですが、ラオスの中でも辺境の山の村で公演したのは初めてだったのではないでしょうか?もちろん山の子ども達にとっては初めてのことだったしょう。

夏には、有難いことに石川県小松市の那谷寺にある清水基金から、ご寄付のお申込みを頂き、3年間の継続的な援助を頂ける事になりました。更にこの2月には、那谷寺副住職の木崎議之さんがわざわざ現地まで足を運んで下さり、Gの麓の村やさらに山奥の村など5つの小学校をまわって約千冊の図書を贈呈して下さいました。今年のゲオバトウ村はとても寒くて、副住職さんがいらした間も濃い霧で特別寒い日が続いたそうです。今の日本の生活からは想像もつかないような山の村に3泊もなさってどんなにびっくりなさったことだろうと心配しておりましたが、原点のような村の人達の生活や自然など、村への訪問を楽しんで来られたというお話をお聞きし、ほっと致しました。

 昨年の開館の時にも、ビエンチャンの国立図書館の館長さんと児童図書室のプーヴィエンさんがワークショップに出向いて下さいましたが、この時にもプーヴィエンさんが同行して下さり、図書を寄贈した学校の先生方にワークショップを実施して下さったそうです。

ラオスの図書館活動としても評価されているのではないかと嬉しく思っています。

 また、2月には12年程前からラオスで障害者のための援助活動をなさっているという、日本のNGOのメンバーの方々も、日本からの絵本を持って図書館を訪ねて下さいました。

 ニア・ノーポーとツィアの二人の図書館員は、得意の刺繍でモンの民話の絵本を作ったり、近くの村を訪問して絵本の読み聞かせをしたりと独自に活動を始めてくれています。

この1年、安井さんは何度もラオスに渡り、村の様子も見に行っています。図書館活動が着実に根付いて、村の子ども達の将来に必ず役に立っていってくれるだろうと信じられる1年でした。この1年間ほどの広がりはなかなか出来ないだろうと思いますが、ここで図書館の力を感じてくれた子ども達が、大きくなって安井さんの手助けしてくれるように育ってくれることを願っています。

 これからもどうぞ皆様のご支援をよろしくお願い申し上げます。

2008年3月

                                         武内桂子  











「たろうの図書館・活動報告」  

   G村 太郎の図書館 これまでの利用者数(2007/3~2008/3)

年月

来館者数

子ども

大人

老人

本を借りた人

2007/3

535

348

147

40

277

258

101

2007/4~5

1110

617

446

47

544

566

129

2007/6

 366

216

122

28

205

161

26

2007/7

 530

273

220

37

247

283

34

2007/8

 739

343

344

52

320

419

 46

2007/9

 677

339

296

42

374

303

128

2007/10

 748

394

306

48

370

378

113

2007/11

625

311

266

48

337

288

105

2007/12

 483

273

169

41

275

208

55

2008/1

 560

286

256

18

308

252

 47

2008/2

 443

259

170

14

258

185

 51

2008/3

 493

305

178

10

310

183

 60

Total

7,309

3,964

2,920

425

3,825

3,484

895

































G村の「たろうの図書館」がオープンしてから、1周年を迎えた。週2日の開館日、水・金には、大勢の子どもたちで、建物があふれかえっている。

 学校のある平日なので、朝一番にやってくるのは、学齢前の小さな子どもたち。自分の好きな絵本を抱え込んでは、一心にめくっている。図書館スタッフに「お話して」とせがんでモン語でお話してもらうと、夢中で聞いている。お話をおぼえてしまうと、自分でぶつぶつ言いながら、ページをめくっている。小さな子どもでも、ちゃんとお話を理解している。

お昼前になると、小学校から昼休みで家に帰る子どもたちが、走ってくる。一気に図書館は子どもたちで溢れかえり、足の踏み場もない時もしばしば。自分で本をめくる子あり、読む子あり、そしてお話をするスタッフの回りを子どもが取り囲んでいる。この光景を見ていると、この子どもたちの「本を見る」この熱気、エネルギーとは何なのだろう?子どもを惹きつけるお話や絵本の力とは何なのだろう?と改めて不思議に思う。

G村はモン族の村なので、子どもたちは小学校で初めてラオス語を習う。だが、1年生2年生はもちろん、3年生になってもなかなかラオス語を読もうとはしない。とにかく「お話して!」なのである。もちろんモン語で。でも、小5ほどになると、ラオス語の本を一生懸命読んでいる子もでてくる。それ以降、読みはじめた子たちは、どんどんラオス語の本を借りて、自分で読んでいるようである。中高生になれば、もうラオス語で読むにも不自由しない。もちろん、読むことが好きであれば・・・である。

ラオスは少数民族が多いので、少数民族に対するラオス語教育が問題となっている。でも、私が思うに、小さい時は、ラオス語で読むことは強要せずに、うんとモン語で(各民族の自分の言語で)お話をしてあげればいいのである。要するに、お話をきく・・・絵本を見る・・・本をめくる・・・ことが好きになった子どもたちは、いつのまにかラオス語でも読めるようになる。ラオス語を勉強するための図書館ではない。ただ、それは後からちゃんとついてくる。この1年間の子どもたちを見ていて、そう思う。

子どもたちは、もっと大切なことを本から得ている、と思う。

村の子どもたちは、小さな頃から、水くみ、薪とり、家事、畑仕事、家畜の世話、妹弟の世話・・・遊びも仕事もさまざまなことを体験して生きてきている。小さくても、自分の足で生きている子どもたちがほとんどである。ある意味では、日本の子どもたちよりも、ずっと世界は深い。でも、そんな子どもたちでも、やはり、子どものときに出会うべき世界というものはあるのだろう。洗濯物のたらいをほったらかして、絵本のページを一心にめくる子どもたちを見ると、子どもの時だからこそ、出会える世界というものの大切さを感じる。この「たろうの図書館」で、子どもたちにたくさんの出会いをしてほしい。そして、もちろん、関わる私たちも、山の村の人々、山の子どもたちとの出会いを通して、「人間にとって大切なこと」とたくさん出会っていきたい。                               安井清子

「刺繍絵本のお話」

 図書館のスタッフ、ニア・ノーポーとツィアは、これまでに3作の刺繍の絵本を作った。元々は、安井が以前働いていたタイの難民キャンプ、バンビナイキャンプで、モンの子どもたちが作った刺繍の絵本のカラーコピーを製本したものを「たろうの図書館」にも入れているのだが、彼女たちはそれを見て、触発されたのであった。「私たちも作るわ」と、二人で刺繍をして、作り始めた。「モンの絵本は私たちが作らなければ、ないからね」と言うのが頼もしい。

「センサイ」「むかで娘」「ココナッツ息子」という3作ができているが、なかなか面白い。

 

「むかで娘」

両親をトラに襲われて一人ぽっちのみなし子は、いつも一人、山の畑に通っていた。ある日、道のまん中に金と銀に輝くむかでがいる。みなし子は、踏まれないように、倒木の上に置いて畑へ行って帰ってくると、またそのむかでが道のまん中にいる。みなし子はまたよけてやった。次の日もまた同じ。3日目にみなし子がまた山から帰ってくると、むかでを置いた倒木の上に、美しい娘が座っている。

「おじょうさん、どいておくれよ。もう日が暮れるから早く家に帰らないと」「あら、どかないわ。私を越えていったらどう?」

仕方ないので、みなし子が通ろうとすると、娘の脚にひっかかって転んでしまう。どうしても起き上がることができない。みなし子が、「あぁ、誰かぼくを助けてくれたら、その人をぼくの嫁にするよ」と言うと、娘が「本当ね?」と手を引っ張った。すると、簡単に立ち上がることができた。こうして二人は結婚した。


ほどなく、殿様が、美しい娘の噂を聞き、自分の妻にしようと家来をさしむける。娘は蝶になって空に飛んでいってしまった。娘は空の番人に、「もしみなし子が私を追ってきたら、この指輪を渡して帰してちょうだい」と頼む。まもなく追ってきたみなし子を、番人は帰そうとするが、みなし子はどうしても娘を追っていくときかない。番人は、みなし子に、指輪と3つの実をくれる。みなし子は、現れた大蛇、大虎に、実を投げつけて退治し、大きな川には実をなげて橋を作り、進んでいく。


夜、わしの夫婦の住む大木で、休んでいると、わしの夫婦が「明日は、空の王様の娘の結婚式だから、ご馳走の残りにあずかりにいこう」と話しているのをきく。みなしごはそぉっと、わしの羽根の中にもぐりこんで、空の国へと飛んでいく。到着すると、そこへ、お手伝いの娘たちが、娘が水浴びするための水をくみにきていた。みなし子は、水を飲ませてもらうふりをして、桶の中に指輪を落とした。家で水浴びをしようとした娘は、指輪を見て、みなし子が来たことを知り、走って会いに行き、二人は再会した。娘は、父である空の王様に「結婚はやめにするわ。地上から私の夫が来たの」と言うが、結婚相手は承知しない。そこで、王様は、「わしには7人の娘がいる。7つの穴から指を出させて、その指で選んだ相手と結婚しなさい」と提案する。娘は「黒くて細い指が私のよ。白くて美しい指を選んではダメ」と教える。みなし子は、黒くて細い指を選び、再び娘と幸せに暮らしました。













「その他の活動報告」

 昨年8月以降、すっかり報告が遅れてしまったことお詫びいたします。G村の「たろうの図書館」は前述の通り、週2日の開館日は、休むことなく開いています。

この村の図書館を確実に運営していくことが、一番力を注ぐべきことなのですが、この地域には、もちろんG村以外にも小学校がたくさんあり、子どもたちもたくさんいます。G村の図書館だけに集中していいのだろうか? やはりその輪を少し広げてもいいのではないか? もちろん、その後の大変さは倍増するけれど、でも、長い目で見たら、それがまた「たろうの図書館」の活動も深めていくのではないか?・・・などとも思い、このたび、活動の範囲を少し広げました。今後、は広げるのではなく、今回配布した小学校を中心に、活動を深めていく必要があります。

2008年1月:図書館スタッフ2人と安井、G村から車で2時間ほどのパーエン村に出張お話サービス。夜、昼間畑仕事に行っていた子どもたちが、大勢、宿泊していた副村長宅に押し寄せ、ろうそく灯りで延々とお話をすることとなり、私たちも感動する。

2008年2月:ADDP(障害者支援の日本のNGO)の方々が、フレーベル館が寄贈してくださった絵本をもって、図書館を訪問。

2008年2月:清水基金の木崎氏、国立図書館員、安井がG村の麓にあるノーンサーン村小学校に文庫(本と本棚)を寄贈。同時に、タムクー村、ノンオ村、パリン村、サンドン村という、この地域にある小さな小学校(小1,2年生のみ)にも本を寄贈。先生をノーンサーン村に集めて、図書館活動とストーリーテリングについてのワークショップを行う。翌日サンドン村小学校を訪問、出張お話サービス。極寒の中で熱演?

2008年4月:建設担当の鈴木が村を訪ねる。村の人たちが協力して、屋根の葺き替え作業を行う。

 昨年の3月に「たろうの図書館」の建物はできましたが、なんと言っても活動を支えるのは「人」です。今、二人の村の女性が支えてくれていますが、今後どうなるのか? Gでも他の地域でも、本と子どもたちの間に立つ「人」を育てることが一番重要だと思っています。また、村で作られている刺繍絵本も、ぜひじきに印刷して、多くの人々に見てもらえるようになりたいと思っています。まだまだ、これからです。どうぞ、今後とも、ご指導ご支援をよろしくお願いいたします。

お知らせ:8月18日~28日に、新宿のコニカ・ミノルタプラザで、安井の写真展「子どもの時間」が決まりました。写真はG村の子どもたちの日常を写したものです。また、ご案内いたしますが、どうぞその折には見にいらしてください。