日本で台風の季節といえば8月・(9月)だが、台湾では6月には台風の(季節に)なっている。これは台湾で働く(日本人には)、大きな問題である。運が悪いと、(台湾で)台風に遭い、夏休みに日本で(また)台風の被害を受けることになるからである。
(ところで)、「台風」は、なぜ台風と呼ばれるのだろうか。(昔の)日本では、夏から秋にかけての強い(風を)「野分」と呼んでいた。野分というのは、野原の(草を)掻き分けるように吹く風という意味である。和歌や(俳句にも)使われた優雅な語だが、今では(ほとんど)使われない。
「台風」の語源としてよく(耳に)するのは、台湾から来る風だから(台風だ)という話である。しかし、「台風」は、戦後に(なってから)使われた表記で、もともとは「颱風」と(書かれていた)という。そうならば、「『台』湾から来る『風』」では(ないことに)なる。もっとも、台湾の立場からすれば、(台風は)台湾にも来るのだから、「台湾から来る風だ」(というのは)日本側の言いがかりだといえなくもない。
実は、(この)「颱風」という語は、日本では、1907年に岡田武松博士が論文の(中で)使ったのが初めてだといわれている。しかし、正確な(語源は)知られておらず、中国福建省地方で使われていた「颱」(という)語(台湾の辺りの風という意味)を借りたものだという(説も)ある。それが正しければ、台湾から来る風だから(台風だと)いう話もあながち間違いではないことになる。
(一方で)、「颱風」は、英語の「typhoon」に漢字を(あてたもの)だといわれることもある。さらには、「嵐」を(意味する)アラビア語の「tuffon」やウルドゥー語で「暴風雨」を(意味する)「tufan」に由来するという説もある。ただ、明治時代には「タイフーン」というカタカナ語も使われていたようであり、(英語の)「typhoon」を「颱風」と書いたとする説は少し(無理が)あるようにも思われる。
また、「颱風」(という)語は、中国語(広東語)の「大風(tai fung)」をもとにしているという考えも(ある)。中国語の「大風」がアラビア語の「tuffon」になり、(それが)英語の「typhoon」になって、中国語に逆輸入された(「typhoon」が)「颱風」となったという説である。日本語の(「台風」は)、それをさらに輸入したことになる。
(また)、「typhoon」の語源は、ギリシャ神話にあらわれる(怪物)「typhon(テュフォン)」だという説もある。テュフォンは、100の蛇の(頭)を持った巨大な龍で、(目)からは炎を吐き、口からは溶岩を吐き出し、巨大な(翼で)太陽を覆い隠し、竜巻や嵐を(起こすと)いわれている。もともと「typhon」は、疾風という(意味の)ギリシア語で、テュフォンは後には「風の神」と(考えられるよう)になる。もし「typhon」が「台風」の語源ならば、(古代の)怪物が現代の日本や台湾で暴れ回っている(という)ことで、少しおもしろい気もする。