「カワはカワからウミはミから」ということばがある。魚の正しい焼き方を言ったものだが、語呂が良いので覚えやすい。川の魚は皮の方から焼き、海の魚は身の方から焼くという意味である。
もちろん、魚を一匹丸ごと焼く場合には、皮の方とか身の方とかいうことはない。このことばは、干物などの開きや切り身を焼くときにあてはまる。海の魚を焼くときには、身の方から先に、身と皮を7対3の割合で焼くとおいしい。これは、身を先に焼き固めた方が、身がくずれずにきれいに焼け、うまみも逃げないからである。しかし、川魚の場合は、逆に皮の方から先に、皮と身を7対3の割合で焼くのがよい。これは、皮の部分に臭みがあるためである。皮の方をよく焼くことで、臭みをとることができるわけである。
魚を焼くときには、焼き網かガスコンロのグリルを使うことが多い。最近では、ガスコンロのグリルでも両面焼きタイプのものが多く、両面焼きの電気ロースターを使う人も増えている。こうなってしまうと、皮が先か身が先かという話にはもはや意味がない。
しかし、両面焼きでも変わらないこともある。川魚の皮をよく焼くことである。海の魚は焼きすぎると脂や水分が抜けてまずくなるが、もともとそれらの少ない川魚は焼きすぎてもまずくならない。川魚では、皮を焼きすぎと思えるほど焼くのがうまいのである。