意志動詞と無意志動詞の違い
日本語の動詞は、意志動詞と無意志動詞の2つに分けることができる。
意志動詞/無意志動詞とは?
「する」や「食べる」のように動作・行為を表わす動詞が意志動詞である。一方、「ある」や「できる」のように動作・行為を表わさない動詞が無意志動詞である。
- 意志動詞(いしどうし)
- 意志的な動作・行為を表わす動詞
主語が意志的に制御できる
- 無意志動詞(むいしどうし)
- 意志的な動作・行為を表わさない動詞
主語が意志的に制御できない
あらわす意味の違い
意志動詞は、自分の意志でそれを実行するという意味を持つ。一方、無意志動詞は、結果としてそのことが生じるという意味を持つ。
- 意志動詞(いしどうし)
- 彼とケンカをする。
- 親に借金をする。
- 子供をつくる。
- 冷蔵庫のコーラをぬすむ。
- 無意志動詞(むいしどうし)
- 彼女とケンカになる。
- 親に借金がある。
- 子供ができる。
- バイクのエンジンがこわれる。
文法上の違い
意志動詞と無意志動詞には、文法上の用法の違いがある。
無意志動詞は、命令・禁止・願望・意志・依頼・可能・使役・受け身をあらわす形にすることができない。
意志動詞と無意志動詞の文法上の違い
| 命令 | 禁止 | 願望 | 意志 | 依頼 | 可能 | 使役 | 受け身 |
意志動詞 | 書く | 書け | 書くな | 書きたい | 書こう | 書いて | 書ける | 書かす | 書かれる |
食べる | 食べろ | 食べるな | 食べたい | 食べよう | 食べて | 食べられる | 食べさせる | 食べられる |
する | しろ | するな | したい | しよう | して | できる | させる | される |
無意志動詞 | ある | × | × | × | × | × | × | × | × |
できる | × | × | × | × | × | × | × | × |
- ×無意志動詞は《命令》をあらわす形にできない
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- ×戸が閉まれ。:「閉まる」=無意志動詞
- ×代表者が決まれ。:「決まる」=無意志動詞
- ×無意志動詞は《禁止》をあらわす形にできない
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- ×子供ができるな。:「できる」=無意志動詞
- ×部屋にゴミがあるな。:「ある」=無意志動詞
- ×無意志動詞は《願望》をあらわす形にできない
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- ×もっと日本語ができたい。:「できる」=無意志動詞
- ×強い風が吹きたい。:「吹く」=無意志動詞
- ×無意志動詞は《意志》をあらわす形にできない
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- ×みんなでできよう。:「できる」=無意志動詞
- ×部屋の窓が開こうとしている。:「開く」=無意志動詞
- ×無意志動詞は《依頼》をあらわす形にできない
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- ×もっとお金がいってください。:「要る」=無意志動詞
- ×もっと日本語ができてくれ。:「できる」=無意志動詞
- ×無意志動詞は《可能》をあらわす形にできない
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- ×台湾の原住民は、授業料が半額になれる。:「なる」=無意志動詞
⇒ ◎台湾の原住民は、授業料が半額になる。
- ×このタンスは大きすぎて部屋に入れません。:「入る」=無意志動詞
⇒ ◎このタンスは大きすぎて部屋に入りません。
- ×無意志動詞は《使役》をあらわす形にできない
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- ×学生に日本語ができさせる。:「できる」=無意志動詞
- ×部屋にあらせる。:「できる」=無意志動詞
- ×無意志動詞は《受け身》をあらわす形にできない
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- ×代表者に決まられる。:「決まる」=無意志動詞
- ×学生にテストができられる。:「できる」=無意志動詞
意志動詞と無意志動詞の両方で使われる動詞
動詞には、意志動詞と無意志動詞の両方で使われるものもある。
- なる
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- 親戚が医者になった。→意志動詞
- 時刻が正午になった。→無意志動詞
- 倒れる
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- 酒を飲んでベッドに倒れる。[=「寝る」意味]→意志動詞
- 地震でたんすが倒れた。→無意志動詞
- 落とす
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- アメリカに爆弾を落とす。→意志動詞
- バスで財布を落としてしまった。→無意志動詞
「なる」
動詞「なる」は、意志動詞と無意志動詞の両方で使われる。
「なる」は、人間の役割や性質をあらわすときには意志動詞であり、それ以外の「なる」は無意志動詞である。
- 意志動詞「なる」→人間の役割や性質
- 父親になる。/○父親になれる。
- 先生になる。/○先生になれる。
- 立派な人になる。/○立派な人になれる。
- 健康になる。/○健康になれる。
- 足が速くなる。/○足が速くなれる。
- 無意志動詞「なる」→それ以外の場合
- この骨は薬になる。/×この骨は薬になれる。
- もう9時になる。/×もう9時になれる。
- 急に雨になる。/×急に雨になれる。
- 季節が春になる。/×季節が春になれる。
- 時の流れが速くなる。/×時の流れが速くなれる。
目的をあらわす表現:〜ために/〜ように
意志動詞と無意志動詞とは、目的をあらわす表現でも違いがある。
「ために」の前には意志動詞が用いられる。また、意志動詞の場合、「ように」の前には可能形が用いられることが多い。
- 意志動詞の「なる」
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- ◎偉い人になれるように勉強しています。
- ◎偉い人になるために勉強しています。
- ?偉い人になるように勉強しています。(やや不自然な表現)
- 無意志動詞の「なる」
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- ×野菜が大きくなれるように水をたくさんやります。
- ×野菜が大きくなるために水をたくさんやります。
- ◎野菜が大きくなるように水をたくさんやります。
→ 練習問題