ものを与える/受けとる表現
授受表現とは、ものを与えたり、ものを受けとったりすることを表わす表現のことである。
授受表現に使われる「やる」「もらう」などの動詞を授受動詞という。
日本語の授受動詞
だれが | ものの移動 | だれに | 〜する |
私が/Aが | →→→→ | 上位者・親しくない人に | さしあげる |
→→→→ | 同位者に | あげる |
→→→→ | 下位者・親しい友だちに | やる |
- AがBに……をさしあげる[「あげる」の謙譲語]
- (私が)先生にケーキをさしあげる。
- 学生が先生にコーヒーをさしあげる。
※「Aが私にさしあげる」ということはできない。 ×学生が私にコーヒーをさしあげる。
- AがBに……をあげる
- 私が張さんに弁当をあげる。
- 学生がクラスメートに誕生日プレゼントをあげる。
※「Aが私にあげる」ということはできない。 ×学生が私に誕生日プレゼントをあげる。
- AがBに……をやる
- 私が親戚のこどもにお年玉をやる。
- 親がこどもにこづかいをやる。
※「Aが私にやる」ということはできない。 ×親が私にこづかいをやる。
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だれが | ものの移動 | だれに | 〜する |
私が/Bが | ←←←← | 上位者・親しくない人に | いただく |
←←←← | 同位者に | もらう |
←←←← | 下位者・親しい友だちに | もらう |
- BがAに……をいただく[「もらう」の謙譲語]
- 私が先生に本をいただく。
- 張さんが校長先生に賞状をいただく。
※「Aが私にいただく」ということはできない。 ×張さんが私に賞状をいただく。
- BがAに……をもらう
- 私が劉くんにコーラをもらう。
- 林くんが李さんにビールをもらう。
※「Aが私にもらう」ということはできない。 ×林くんが私にビールをもらう。
- BがAに……をもらう
- 私が部下にみやげをもらう。
- 父親が娘に手紙をもらう。
※「Aが私にもらう」ということはできない。 ×父親が私に手紙をもらう。
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だれが | ものの移動 | だれに | 〜する |
上位者・親しくない人が | →→→→ | 私に | くださる |
同位者が | →→→→ | くれる |
下位者・親しい友だちが | →→→→ | くれる |
- Aがわたしに……をくださる[「くれる」の尊敬語]
- 社長が私にゴルフクラブをくださる。
※『だれに』の『だれ』は「わたし=話者」になる
×社長が課長にゴルフクラブをくださる
- Aがわたしに……をくれる
- 許くんが私にネックレスをくれる。
※『だれに』の『だれ』は「わたし=話者」になる ×許くんが王さんにネックレスをくれる
- Aがわたしに……をくれる
- 後輩が私にボールペンをくれる。
※『だれに』の『だれ』は「わたし=話者」になる ×後輩が先輩にボールペンをくれる
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与え手と受け手
あげる
「さしあげる」「あげる」「やる」では、「わたし=話者」や「わたし=話者」の家族(ウチの関係にある人)が《受け手》になることはできない。
- ×Aさんがわたしにコーラをあげる。
→ ◎Aさんがわたしにコーラをくれる。
- ×Aさんがわたしの弟にコーラをあげる。
→ ◎Aさんがわたしの弟にコーラをくれる。
もらう
「いただく」「もらう」では、「わたし=話者」や「わたし=話者」の家族(ウチの関係にある人)が《与え手》になることはできない。
- ×Aさんがわたしにコーラをもらう。
→ ◎わたしはAさんにコーラをあげる。
- ×Aさんがわたしの弟にコーラをもらう。
→ ◎わたしの弟がAさんにコーラをあげる。
くれる
「くださる」「くれる」では、「わたし=話者」や「わたし=話者」の家族(ウチの関係にある人)以外が《受け手》になることはできない。
- ×AさんがBさんにコーラをくれる。
→ ◎AさんがBさんにコーラをあげる。
主語による動詞の違い
同じ事柄を表わす場合でも、主語によって動詞が違う。たとえば、
上位者:《先生》→[本]→《私》:下位者
という事柄を表わすときには、次のようになる。
- 私が[=主語]先生に本をいただく。
- 先生が[=主語]私に本をくださる。