受け身
「先生が 学生に なぐられる。」のように「Bが Aに Cされる」というかたちの表現を『受け身』の表現という。
「先生が学生になぐられる。」
画:劉書賓
「Bが Aに Cされる」という文は「Aが Bを Cする」という文のかたちを変えたものである。
- Aが Bを Cする。
- Bが Aに Cされる。 ← 受け身の表現
動詞の受け身形
受け身の表現には、動詞の受け身形が使われる。
- Aが Bを [動詞]。
例:学生が先生を[なぐる]。
- Bが Aに [動詞の受け身形]。 ← 受け身の表現
例:先生が学生に[なぐられる]。
動詞の受け身形は、下の表のようになる。
動詞の受け身形
動詞 | 辞書形(終止形) | 受け身形 |
1類動詞(五段動詞) | -u 書く なぐる | -a-reru 書かれる なぐられる | -u → -a-reru kak-u → kak-a-reru nagur-u → nagur-a-reru |
2類動詞(一段動詞) | -ru 見る 食べる | -rareru 見られる 食べられる | -ru → -rareru mi-ru → mi-rareru tabe-ru → tabe-rareru |
3類動詞(変格動詞) | する 来る | される 来られる |
他動詞の受け身
他動詞を受け身形にして作る受け身には、次の3つの文型がある。
- B が/は AにCされる(直接受け身)
- B が/は AによってCされる(直接受け身)
- B が/は AにDをCされる(間接受け身)
【→ 直接受け身と間接受け身】
「B が/は AにCされる」
「学生が先生をなぐる。」
という文を受け身の表現にすると
「先生が学生になぐられる。」
となる。
- 学生が 先生を なぐる。
- 先生が 学生に なぐられる。← 受け身の表現
画:劉書賓
例文
- 犬がのび太を追いかける。
→のび太が犬に追いかけられる。
- 花子が太郎を殺す。
→太郎が花子に殺される。
- 主任は私に仕事を頼む。
→私は主任に仕事を頼まれる。
- みんなが許くんを愛す。
→許くんがみんなに愛される。
- ライオンはシマウマを食べる。
→シマウマはライオンに食べられる。
- 先生が張くんをほめる。
→張くんが先生にほめられる。
- 劉くんが張くんを蹴る。
→張くんが劉くんに蹴られる。
- 警官は犯人を連行した。
→犯人は警官に連行された。
- 先生が劉くんを指名する。
→劉くんが先生に指名される。
- 山田くんが鈴木くんをキックする。
→鈴木くんが山田くんにキックされる。
- 山田くんがシュートをブロックする。
→シュートが山田くんにブロックされる。
「B が/は AによってCされる」
「書く」、「つくる」、「発見する」、「発明する」、「設計する」、「建てる」などの動詞を含む文では「Aに」ではなく「Aによって」となる。
たとえば、
「安部公房が『砂の女』を書いた。」
[※安部公房=日本の有名な作家、砂の女=安部の代表作]
という文を受け身の表現にすると
「『砂の女』が安部公房によって書かれた。」
となる。
- 安部公房が 『砂の女』を 書いた。
- 『砂の女』が 安部公房によって 書かれた。← 受け身の表現
例文
- 紫式部が『源氏物語』を書く。
→『源氏物語』が紫式部によって書かれる。
→ × 『源氏物語』が紫式部に書かれる。
- 国民が憲法をつくる。
→憲法が国民によってつくられる。
→ × 憲法が国民につくられる。
- コロンブスがアメリカ大陸を発見する。
→アメリカ大陸がコロンブスによって発見される。
→ × アメリカ大陸がコロンブスに発見される。
- エジソンは電球を発明した。
→電球はエジソンによって発明された。
→ × 電球はエジソンに発明された。
- 山田くんがコンピュータを設計する。
→コンピュータが山田くんによって設計される。
→ × コンピュータが山田くんに設計された。
- 古代エジプトの王がピラミッドを建てた。
→ピラミッドが古代エジプトの王によって建てられた。
→ × ピラミッドが古代の王に建てられた。
「B が/は AにDをCされる」
他動詞の受け身の表現には「BがAにDをCされる」という文型もある。
- 劉くんが 張くんの 足を 踏む。
- 張くんが 劉くんに 足を 踏まれる。← 受け身の表現
「Bが Aに Dを Cされる」は、「Aが Bの Dを Cする」のかたちを変えたものである。
- Aが BのDを Cする。
例:劉くんが張くんの足を踏む。
- Bが AにDを Cされる。← 受け身の表現
例:張くんが劉くんに足を踏まれる。
Dには、Bの体の一部やBの所有物をあらわす語が入る。
- ぼくは母に顔[=「ぼく」の体の一部]を叩かれた。
- 私は姉におこづかい[=「私」の所有物]を盗まれた。
「BがAにDをCされる」の受け身は、『間接受け身』と呼ばれる。この文型の受け身は、被害や迷惑の意味をあらわす(良い意味はあらわさない)ことが多い。【→ 直接受け身と間接受け身】
例文
- 花子が太郎のおなかをなぐる。
→太郎が花子におなかをなぐられる。
- 先生は張さんの弁当を食べました。
→張さんは先生に弁当を食べられました。
- 母は娘の手紙を読んだ。
→娘は母に手紙を読まれた。
- スリが私の財布を盗む。
→(私が)スリに財布を盗まれる。
※「私が/は」や「ぼくが/は」は省略されることが多い。
- 山田くんはぼくのパソコンを壊した。
→(ぼくは)パソコンを山田くんに壊された。
※「「私が/は」や「ぼくが/は」は省略されることが多い。
自動詞の受け身
「Aが Bを Cする。」という文を変えてできる「Bが Aに Cされる。」の受け身では、動詞は他動詞である。
しかし、日本語では自動詞の受け身表現もある。自動詞の受け身は「(私が)AにCされる」という文になる。
- Aが Cする。
- (私が)Aに Cされる。← 受け身の表現(自動詞)
自動詞の受け身表現は、被害・迷惑の意味をあらわす(良い意味はあらわさない)。
「AにCされる」
「雨が降る。」という文を受け身の表現にすると「雨に降られる。」となる。
- 雨が 降る。
- (私が)雨に 降られる。← 受け身の表現(自動詞)
自動詞の受け身の例文
- 雨が降る。
→雨に降られる。
- 学校から帰るとき、雨が降って困った。
→学校から帰るとき、雨に降られて困った。
- 子供が泣く。
→子供に泣かれる。
- 電車の中で子供が泣いてうるさかった。
→電車の中で子供に泣かれてうるさかった。
- 客が来る。
→客に来られる。
- 出かけるときに客が来てデパートに行けなかった。
→出かけるときに客に来られてデパートに行けなかった。
- 先生がいる。
→先生にいられる。
- テストのとき先生が近くにいてイヤでした。
→テストのとき先生に近くにいられてイヤでした。
- 直接受け身
-
- B が/は AにCされる
- B が/は AによってCされる
- 間接受け身(迷惑の受け身)
-
- B が/は AにDをCされる
- AにCされる(自動詞の受け身)
直接受け身
「先生が 学生に なぐられる。」のように「Aが Bを Cする」を「Bが Aに Cされる」という形に変えたものを『直接受け身』という。
間接受け身
「BがAにDをCされる。」の文型であらわされる受け身と自動詞の受け身(「AにCされる。」)をあわせて『間接受け身』という。
- 妹が(私の)ノートを破る。
-
- (私の)ノートが妹に破られる。→ 直接受け身
- 私は妹にノートを破られる。→ 間接受け身
『間接受け身』は、被害や迷惑の意味をあらわすので『迷惑の受け身』ともいう。
間接受け身の表現
間接受け身の表現は、「〜(ら)れて、……。」という形になることが多い。「……。」のところには、主に被害や迷惑の気持ちをあらわす表現が続く。「……。」には他動詞の受け身が使われることもある。
- 雨に降られて困った。
- 人に来られて眠れなかった。
- 人に来られて起こされた。