ちびまる子ちゃん
「お父さん北海道へ行く」の巻
まる子:たまちゃん。あのね、いま。うちのお父さん北海道へ行ってるんだよ。町内会の旅行なんだ。
たまちゃん:へえ、いいねえ。北海道かあ。
まる子:トウモロコシ畑なんかあるだろうね。
たまちゃん:ジャガイモ畑なんかも広いだろうね。
まる子:気持ちいいだろうねえ。
たまちゃん:ねえ。
まる子・たまちゃん:広いなあ。
たまちゃん:草原の風が吹いて行くよ。
まる子:気持ちいい。
まる子・たまちゃん:ああ、いいなあ。
まる子:今頃お父さんどうしてるかなあ。
ヒロシ:せーの。「私バカよね、おバカさんよね。」
ナレーション:本当にあんたはバカだよ。
たまちゃん:ねえ、まるちゃん。スズランの花って見たことある?
まる子:あたし、写真でしか見たことないよ。
たまちゃん:北海道はちょうど今ごろスズランの花が咲くんだよ。
まる子:へえ。んじゃあ、お父さんもスズランの花見てるかな?
ヒロシ:スズランまんじゅうか。ひとつ買ってやるかな。おーい、すみません。このまんじゅう一箱下さいよ。
オヤジ:さくらさん。あんた、またまんじゅうを買うのかね。
ヒロシ:ああ。
オヤジ:さっきもトウモロコシまんじゅうとミルクまんじゅうとジャガイモまんじゅうを買ってたでしょ。
ナレーション:「他人のまんじゅう事情に詳しい人」登場である。
ヒロシ:うちはまんじゅうが好きなんだ。放っといてくれ。
オヤジ:別に買うなとは言ってませんよ。ただ、よく買うなーと思って感心してるだけですよ。これでまんじゅうの箱は4箱目ですね。
ヒロシ:まだまだ買うぞ!まんじゅう屋を開いてやる。うははは。おお、これもうまそうだな。よし、あ、これも買おうっと。
まる子:お母さん。お父さんいつ北海道から帰ってくるんだっけ?
おかあさん:ええと、たしかあと3日で帰ってくる予定だったと思うけど。
まる子:あと3日かあ、待ち遠しいな。
おかあさん:あらあら。まる子もお父さんがいないと寂しいのねえ。
まる子:おみやげが楽しみなんだよ。
おかあさん:ん、まあ。
まる子:ねえ、お姉ちゃん。お姉ちゃんはお父さんに何かおみやげ頼んであるの?
姉:ええ。もちろん頼んであるわよ。スズランのネックレス。
まる子:え、あんた意外とそつがないね。立派だよ。あたしは北海道って言ったらあの木彫りのクマしか思いつかなかったよ。
姉:それで木彫りのクマを頼んだの?
まる子:へへん。小さいの買って来てって頼んだから、机の上に置いて毎日見るんだ。
姉:あんたの机の上散らかってるから、木彫りのクマなんて置いたらますますゴチャゴチャになるんじゃないの?
まる子:だいじょうぶだもん。ところでさ、北海道って他に何が名物かなあ?
姉:そうねえ。札幌の時計台とか、雪祭りとか、ロマンチックな湖なんかねえ。
まる子:ああん。そんなんじゃなくて食べ物だよ。食べ物。
姉:ええ?札幌ラーメンなんか有名じゃない?
まる子:ラーメン、いいなあ。お父さんラーメン好きだから喜んでるだろうね。
オヤジ:あんた、いくらラーメン好きでも三杯も食べちゃ気分が悪くなるさ。
オヤジ:大丈夫かい?戻した方が楽になるんじゃないのかい?
ヒロシ:三杯食べて悔いなし。
友蔵:ああ、ひろしがいないと寂しいのう。
まる子:でもテレビが好きなの見れてうれしいよ、お父さんすぐナイター見るから。
おかあさん:町内の人に迷惑かけてなきゃいいけどね。
ヒロシ:あああ。
オヤジ:何だってさくらさんは温泉に三時間も入ってたんだか。
オヤジ:昼もラーメン三杯も食べて気分悪くなってたし。無茶な人だ。
ヒロシ:あーあ、よく寝た。いや、北海道の朝はいいな。
ナレーション:昨日あれだけ町内の人に迷惑をかけておきながら、北海道の朝がいいも何もない。
オヤジ:さくらさん。今日は無茶しないでくださいよ。昨日はみんな大変だったんですから。
ひろし;へ?オレ、昨日そんなにみんなに迷惑かけていたのか。ぜんぜん知らなかったぜ。ああ、そういやあ、温泉入った後からの記憶がまったくないぞ。オレはいったい…
まる子:へえ。としこちゃん北海道に行ったことあるのかあ。
としこ:うん。小樽の方に行ってガラス細工のお店を見たよ。すっごくきれいだったよ。
まる子:へえ、いいなあ。ガラス細工かあ。ねえ、ねえ、どんなのがあるの?
よしこ:水差しとか花瓶とかランプとか、色とりどりできれいなんだよ。
ヒロシ:わあ、きれいなもんだなあ。おやおや。ありゃ、おー、わー、おーおーおー。しまった。
オヤジ:あーあー、大変だ。こりゃ高そうだぞ。
オヤジ:ああ、またさくらさんかあ。
オヤジ:触んない方がいいよ。ケガするよ。
ヒロシ:あーあ。いやあひでえ目にあっちまったなあ。こりゃ。
オヤジ:さくらさん、気分直しに寿司でも食べに行きませんか?
ヒロシ:おお。いいね。いいね。行こう、行こう。いきますよ。
画家:旅の記念に一枚どうですか?お時間かかりませんよ。
ヒロシ:お、オレ描いてもらおうかな。
画家:じゃあ、ここへ座ってください。
オヤジ:はあ。
ヒロシ:美男子に描いてくださいよ。
画家:わかりました。
どうでしょう。
ヒロシ:もうちょっと眉を太く、男らしくしてほしいなあ。
オヤジ:いやあ、これでちょうどそっくりですよ。
ヒロシ:本物よりかっこ良くしてください。どうせなら。
画家:はい。わかりました。
はい、できました。今度はいいでしょ?
ヒロシ:おお、いいね。バックまで入ってるとこがいいよ。
オヤジ:さくらさん、せっかくだから「札幌ラーメン」って書いてもらったらどうです?北海道って感じがしますよ。
ヒロシ:そうだな。すみませんが、上の方に「札幌ラーメン」って書いてくれませんか。
画家:え?ここは北海道は北海道でも小樽ですし、そもそも似顔絵に字なんて書かないもんですよ。
ヒロシ:いやあ、いいんですよ。北海道で描いてもらった記念なんですから。「札幌ラーメン」って書いてください。
オヤジ:たのみますよ。
ひろし;いやあ、すばらしい。いい記念ができた。
オヤジ:良かったですねえ。
まる子:お父さん明日帰ってくるね。
姉:もう一週間もいなかったから、ちょっと寂しくなってきたね。
まる子:うん。どうかお父さんが元気で帰ってきますように。
ヒロシ:ただいま。
まる子:お帰り。
ヒロシ:お、ははは。おみやげ待ってたか?
まる子;お父さんを待ってたんだよ。無事で帰ってきてくれてよかった。
ヒロシ:え、おみやげ好きのまる子が。オ、オレが無事で帰ってきたことの方を喜ぶなんて。うれしいじゃないか。
おかあさん:お疲れさま。楽しかった?
ヒロシ:おお、まあな。はい。お姉ちゃんネックレスだ。
姉:うわあ。ありがとう。
まる子:まる子のは?
ヒロシ:待て、待て。ほれ、あるぞ。
まる子:わー。ありがとう。
ヒロシ:あとは、ラーメンとまんじゅうとバター飴だ。
まる子:わあ、スズランのネックレスだ。
ヒロシ:まんじゅうだ。次もまんじゅうだ。
おかあさん:おまんじゅう、こんなにいっぱい買ってきてどうするのよ。
おばあちゃん:ひとつかふたつでいいものを。
姉:8種類もあるわよ。
友蔵:わしゃ、食うぞ。なんでもちょうだい。
ヒロシ:そうそう。この上着じいさんに似合うと思って買ってきたんだ。
友蔵:おお。ええ、これをわしにか。
ヒロシ:この鉢巻きだかなんだか、これもセットで着てくれよ。
まる子:おじいちゃん。踊りでも踊るとき着るといいよ。
友蔵:ああ、そう、そうじゃのう。
ナレーション:あまり着る機会がないかもしれない。
ヒロシ:お、そうだ。オレ似顔絵描いてもらったんだ。
まる子:本当?見せて。見せて。
ヒロシ:どうだあ?
おかあさん:「札幌ラーメン」って書いてある。
おばあちゃん:いくら北海道で描いてもらったからって。
姉:それに、あんまりお父さんらしくないわ。
まる子:すごーい。いいじゃん。
ヒロシ:なあ。いいだろ。
まる子:まる子、こんなかっこいいお父さん初めて見たよ。
ヒロシ:あはははは。まる子はこの良さがわかって偉いぞ。お前にやる。机の前にでも貼ってくれ。
まる子:うん。そうするよ。
ヒロシ:あ、それからまる子に、ほれ、これだ。
まる子:こ、これ、こんな立派なのまる子のために?
ヒロシ:そうだぞ。これが一番高かったんだ。
まる子;うれしいよ。お父さん。まる子、大切にするよ。
まる子:うわあ、北海道って感じがするよ。
ナレーション:どういう北海道を感じているのか知らないが、本人が良ければいいと思う家族たちであった。
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