高橋が率いるグループには、真のグループにしかない、絶妙な心地良さがある。それがし
っかりとした力強いジャズ・サウンドを生み、彼らの音は聴くたびに良さを増す。驚くのは、
音の精度の高さだけではない。彼らからは「焦り」というものがちっとも感じられないとい
うことだ。成熟したグループ、そう言ってしまえばそれまでだ。だが、結成して日が浅かっ
たり、長いブランクがあったりすると、演奏が速くなってしまったり、力が入り過ぎたり、ソ
ロか乱れてしまうのが普通だ。高橋らにはそれがない。力んだ感じがなく、安定した彼ら
の演奏は聴いていて非常に心地が良い。
 イージー・ゴーイングなペースに加えて、彼らのアンサンブルにはゆとりが感じられる。津
村のギターはピアノにはない、余裕を持って佇んでいる。小松のドラムスと嶋のベースもま
た、それぞれのスペースを確保している。オープンなのにしまりのあるインテリア・スペー
スか出来上かる。多くのグループと異なるのは、高橋のグループのメンバ一達は音の中
心に固まってしまうのではなく、それぞれが自分の場所というものを確立しているとい
う点だ。活気溢れるブルースでもクールなバラードでも、メンバ一達の間には程よい緊張
感がある。
 リズムセクションは生き生きとしたストレ−トな音を出す。激しいのに、足されたテク
スチュアにもしっかりと応える。高橋は後の2人にも十分なソロの時間を与える。ギター
もサックスも創造性溢れる摩擦を起こしながら自らを表現する。このグループのバラン
ス感覚は殆ど完璧た。
 津村のギターからは飾らない、高橋と同じストし−ト・パンチのように真っ直ぐな音
が出てくる。アンプに頼り過ぎず、ただ単純な演奏をしている訳でもない彼の音はパリ
ッと澄んでいる。ソロのときも、またバックとしてもジャズらしい音だけではなく、興味を
そそられる演奏をみせる。津村のソロは、しっかりとしていて、音色の中心からぐるぐる
と円を描くようにしながら様々な方角へと向かう。
 高橋の長くて、しまりのある、押しつけがましくないラインが、グループの核を成して
 いる。彼のソロはしっかりしていて、且つとても自然な構成だ。ソロの後はもっと続きを聴
きたくなる。高橋の音には「不必要なもの」もたくさん入っているが、それ以上にニュアン
スを含む要素も多く入っている。それは彼の独特な呼吸法による部分もあれば、グループ
の作る音の中に感情を表現出来るスペースがきちんとあるからでもある。高橋の即興は
絶対に予想出来ない。時に首を傾げたくなるような変化球を投げるが、終いには、強固な
パワーヘと変化するのた。
 この日、ステージはグループの最新アルバム、『Blues to Elvin』のイメージとなった
工ルヴィン・ジョーンズを敬して行われた。アケタの店で12月の終わりに行われた今回の
ジャムはジョーンズにとっては光栄の極みだった筈だ。
                         (マイケル プロンコ)

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