cinema / 『メリーに首ったけ』

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メリーに首ったけ
原題:there's something about mary / 監督・共同脚本:ファレリー兄弟 / 音楽:ジョナサン・リッチマン / 出演:キャメロン・ディアス、マット・ディロン、ベン・スティラー / 配給:20世紀FOX / DVD:20世紀フォックスホームエンタテインメント
1998年公開、2000年DVD発売

[粗筋]
 卒業パーティに誘う相手がいないのがテッド(ベン・スティラー)の悩みだった。ドジで冴えなくて不器用で、歯列矯正器を嵌めた、見るからにダサいテッドに靡く女の子は何処にもいない――かに見えた。あるとき、友達に揶揄われていたウォーレンを助けたことをきっかけに、ウォーレンの姉・メリー(キャメロン・ディアス)に卒業パーティのパートナーに誘われた。メリーは可愛くて聡明で優しくて、兎に角テッドからしてみたら高嶺の花としか言いようのない女の子だったから、有頂天にもなろうというもの。当日、意気込んで彼女の家を訪ねたはいいけれど、色々失敗を重ねた挙句にメリーの家のトイレで“マメとソーセージ”をズボンのファスナーにきっちり挟むという大失敗を犯し、それが警察・レスキュー・更にはご近所中に知れ渡り、衆人環視の中前を押さえながら救急車で運ばれるのだった。搬送されながらテッドは泣きに泣き、以来13年間逢うことはなかった――
 大人になって、何とか作家として稼げるようになっても、テッドにとってメリーは憧れの女の子だった。あまりのご執心ぶりを憐れんだ友人のドム(クリス・エリオット)は、仕事で懇意にしているという探偵・ヒーリー(マット・ディロン)を紹介するが、実はこの男が食わせ者だった。依頼を受けて、メリーが家族と転勤した先のマイアミに発ったヒーリーは、テッドの説明にも勝るメリーの愛らしさにイカれてしまった。テッドにはメリーが巨体になって足を怪我して車椅子がないと動けないなどと偽りを教えて諦めさせ、自分は仕事の一切を辞めてマイアミへ引っ越し、メリーの趣味に合わせて建築家を詐称し接近を試みる。以前からメリーの友人であり、背骨を折ってから杖を離せない建築家・タッカー(リー・エヴァンス)に怪しまれ、何度も正体がばれそうになる危機を迎えながらも機転で乗り切り、遂に恋人寸前の地位にまで上り詰めてしまう。
 一方、あれほどあることないこと吹き込まれたにも拘わらず、テッドのメリーに対する想いは消しようがなかった。遂に意を決して車に乗り単独マイアミに向かうが、途中で拾ったヒッチハイカーのやかましさにうんざりして用足しに車を停めたサービスエリアで、不運にもゲイの乱交パーティ一斉検挙の現場に居合わせてしまい、しかも拾ったヒッチハイカーが車に置き去りにした荷物がめった刺しにされた屍体だったために殺人犯扱いされてしまう。真犯人の逮捕とたまたまテレビで事情を知ったドムが駆け付けたことで事なきを得、漸くテッドはマリーと巡り逢うことが出来た。
 久々にあった、かつてのように(メリーにとっては)キュートなテッドの登場でヒーリーの立場は俄に危うくなる。しかも、タッカーがとんでもないでっち上げを吹き込んだお陰でメリーにとってヒーリーは単なる人殺しにまで降格してしまった。憤ったヒーリーがタッカーを追い掛けると、とんでもない事実が判明する。
 のぞき盗聴変態ストーカー、「メリーに首ったけ」な連中が集って引き起こすどたばた劇の顛末や如何に。

[感想]
 別にこれ、買うつもりはありませんでした。劇場公開時に見るつもりが油断している隙に終了してしまった、ファレリー兄弟の最新作『ふたりの男とひとりの女』がDVDで発売された際、単品のものと既発のこの作品をセットにしたものの二種類が発売され、どーせなら前の作品も一緒がいいでしょ、と軽い気持ちでセット版を購入したため、順番に従いこちらから鑑賞。執筆作業でDVDもお預けにしていたが、その間にちょこっとだけ摘み食いして、今日漸く全体を鑑賞。
 ……面白いじゃん。莫迦だけど。
 所謂しょーもないコメディ映画で、いきなり下ネタ続発だわBGM歌っている奴が普通に画面に出てくるわしかも登場人物の大半ストーカーだ、ととんでもない内容なのだが、それが終始笑いのツボを突いている上に、油断すると思いもかけない展開になって最後まで目を離させないのだ。段々メリーが気の毒になってくるが、そこはそれ。彼女も色々な偽りに簡単に騙されているので割とおっちょこちょいだという気もする。ヘアジェル、って匂いと感触で気がつくだろう普通。
 こんなこと有り得ないだろうそれは幾らなんでも気がつくだろう、という描写も多いが、終始ハイテンションな筋運びと実は非常に気の利いたカメラワーク、悪党だけどどうも憎めない人々にキャメロン・ディアスとベン・スティラーのキュートぶり(いや本当に可愛く見えてくるんだよこの人)、と頭から尻尾までコメディの本質を詰め込んだ、お見事な作品。私は頗る気に入りましたが、……そもそも下ネタが嫌い、という方だけは避けて通ってください。最後までお下劣なままです。

(2001/8/22)


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