【平成19年2月15日】鰍沢町営バス探訪記
 鰍沢町営バスは2つの山梨交通の路線を引き継いだ路線である。その1つは昭和に廃止された甲府駅〜鰍沢営業所〜十谷(じゅっこく)線であり、もう1つは平成14年に廃止されたこちらも山梨交通の小笠原車庫〜鰍沢病院〜鰍沢営業所線となっている。
 基本になっている路線は先に書いた十谷線であり平成14年1月31日までその経路での運転が行われていたが、後者の路線の廃止により中心部から移転した鰍沢病院への公共交通のアクセスを維持すべく、同年2月1日より鰍沢営業所〜鰍沢病院間のみを引き継いだ形となって今に至っている。
 以前から乗ってみようと気になってはいたものの、中々機会無く今回ようやく乗れたので次のようにまとめてみた。
【平成19年2月15日】鰍沢町営バス鰍沢病院→十谷観光駐車場→山梨交通鰍沢営業所
 増穂町内にある稲荷神社にお参りし、鰍沢新田簡易局にて100円の定額小為替を記念に集めた後、路地裏を通って猫に纏われつつ鰍沢病院へ着いたのは1435の事だった。乗ろうと計画しているバスは鰍沢病院1452発の第5便、まだ時間があるのでバス停付近を撮影しつつ病院内の売店で飲み物を買いバスを待つ。

 鰍沢町営バスのバス停は簡易式のバスポールに統一されており、その停留所名の周囲には増穂町営バスの緑とは対照的に赤が用いられている。バス時刻は直接黒い金属板に白地で書かれている昔懐かしい方式で、昨今のシールや紙を張ったタイプとは異なる。この方式はペンキ等で一つ一つ書く手間がかかるのが難点ではあるが、紙等よりも格段に強度や耐久性で勝るのである意味合理的なのかもしれない。
 病院自体は午前中の外来診療も終わって大分経つので静かなもので、喫煙室と受付付近に数名の人影があるのみ。風が強く木が大きく揺さぶられている音が時折駐車場を出入りする車の音と共に響いているだけで、大分離れた国道52号を通過するトラックの音が妙に響いて聞こえていた。対岸には身延線が走っているので風の無い日には列車の通過音が良く聞こえるだろう、特に相対する区間はちょうど長い勾配の続く地点なので115系などの唸りはそれは良く聞こえるのではないだろうか。

 しばらく待って1450頃になるとバスに乗るべく病院の中や外から人の姿、最も殆どがおばさんであり皆知り合いなのか元気に方言丸出しで喋り、バスが来るまでと言って病院の自動ドアの中に入り風を凌いでいた。自分は入ってくるバスを取るつもりでいたので相変わらず風の吹く外にいたが、どうも中々バスが来ない。正面玄関前には一台バスが止まっているが、そのバスは社会福祉団体のものでデイサービスなどに使われる送迎用のバスであるから関係なかった。

 ちなみに折り返しとなる鰍沢病院へ来るバスが渋滞で遅れているのでは・・・と思われるかもしれないが、ご丁寧にこのバス停には鰍沢病院に到着する時刻まで書かれており第5便の折り返しに当たるバスは1359と約1時間前に到着しているのである。だからもういて普通と言えるのだが・・・結局定刻になってもバスは現れぬまま時間は過ぎ、結局バスが回送幕で構内に入ってきたのは1459。そして1501に自分も含めて9人を乗せて発車した。

 動き出したバス内はおばさん達が皆知り合いであるせいか賑やかであり、そこにバスの運転士も混じって大きく会話に花が咲いていた。鰍沢病院を出て利根川沿いに鰍沢警察署の角の交差点まで進み国道52号に入る、52号に入って最初のバス停である小室山入口から鰍沢営業所までの区間は、山梨交通の2系統と山交タウンコーチ1系統と同じ区間を走るので何気に本数が末端区間ではありながら多い。
 そして小室山入口、鰍沢町教育文化会館前と鰍沢町の中心商店街の中に連続する各停留所から1名ずつ乗車があり、11名に増えたところで峡南病院前で一気に4名が下車。鰍沢営業所では乗降がなく続く二軒屋・明神下も同じで小柳川で更に5名が下車して2名になる。

 この小柳川までの区間は鵜の瀬と呼ばれる富士川の難所に沿って52号線は走っており、この区間は交通の難所であり日陰が強いと共に漏斗の様な形をした甲府盆地の、全ての河川が合流して富士川となった直後で一気に川幅が狭くなる事から大雨の際には度々つまり逆流、そして氾濫と言う長い歴史を持つ難所であった。それ故に掘削工事が10年ほどかけて大々的に行われ拡幅された結果、今ではその様になる事も無くなり、また富士川全体の流量が途中で発電用に大量に取水される事もあり減少している事も相まってかつて程の暴威を振るう事は無くなったのが現状である。

 そして今日は休業日の「鰍沢町交流センター塩の華」最寄の鬼島にてまたも1人が降り、車内には自分と運転士のみの2人となってバスは先に進む。そして十谷地区へ曲がる県道407号十谷鬼島線の交差点を曲がるかと思いきや・・・何と素通りして国道を更に南下し、わずかに過ぎた場所で回転すると再び今度は逆方向から交差点に臨みそして左折し県道に入って行った。
 県道に入って最初の停留所、中部住宅を過ぎて大柳川に沿って山間の谷の奥へとくねる道と共にバスは分け入って行く。途中で幾つも停留所はあるが降車は当然無ければ乗車も無い、一応梅久保入口・角久保入口と入口の文字が着く事から集落の入口に当たるのだろうが、とても人家の気配は無く利用されている気配も皆無であった。また折からの強風で時折カーブを曲がりきった所で大きく車体が揺さぶられつつ、白沢・かじかの湯と小さな集落を過ぎ再び上り勾配。
 そして恐らく造りからかつて山梨交通時代に作られたと思しき鳥屋停留所から3人の、最も2人はその停留所から川を越えたところにある鰍沢中部小学校の児童であるが、とにかく乗り込みまた車内は賑やかになり過疎化により休止された五開保育所の前にあるその名も五開保育所前、車内放送では保育所前と言う停留所を過ぎて更に険しい区間を登る。

 この区間はこの鰍沢町営バスで最長の停留所区間であり。崖に文字通りへばり付く様にして道はある。標高も大分上がり、天子山地のお陰で増穂町や鰍沢町の平地からは見えない富士山が、振り返ればその姿を覗かせて車窓を飾っていた。全く白くその山頂では雪煙が発生していた、矢張り強風が吹き荒れているのだろう・・・とても登るべき山では無いと感じられた瞬間であった。

 そしてようやく急勾配を一昇りした所が十谷入口停留所、ここまでの道は改良されて2車線なのであるがここからは十谷集落の中を走る一車線の細い道になる。それもあってか後続の詰まっていた数台の車を脇によけて先行させるがすぐに対向車が現れ、対向車がバックしていく後を数珠繋ぎになって進み集落内の崖に沿ってのヘアピンカーブを登り切った所が終点の十谷観光駐車場であった。


 観光駐車場と言っても車が数台止められる程度であるが、立派なトイレつき待合所が設けられており辺りにある遊歩道や温泉への案内板が幾つも掲げられていた。1635発と運転士から聞けたので5分余りの間に駆け足であたりを撮影していると、近所の通りかかった人に話しかけられて少し話をしバスに戻る。
 なお下にある写真のこちらから見て左側にある青い看板は、国道52号から分岐してきた県道407号線十谷鬼島線の終点を示すものでありここから先は林道五開〜茂倉線となる。なお右手奥に写っているのが乗ってきたバスであり、その手前側に写っている物がバスの待合所兼トイレとなっており吊り下げられている看板が大きく風に揺られていた。

 すると今度は短時間で戻ってきた事に驚いたのか、運転士に話しかけられたのでこの路線に乗り来たのだと告げて会話しつつ一番前の席に陣取ったところで発車。十谷観光駐車場からの鰍沢病院行第5便に乗るのはここに来た時と全く変わらずの自分と運転士の2人だけだった。
 しかし今度は自分の目的が分かった事で運転士と会話しつつ下っていく、この辺りの公営バスの運転士は皆元山梨交通の運転士なのだとか。また過疎化が進んでいるので十谷観光駐車場から下ってすぐに山の方へと分岐して登って行く道の先には3つの集落があり、ちょうど10軒ずつで30軒あったのだが今では誰も住んでおらず廃墟と化しているのでこの十谷集落が一番高い現役の集落、またその道を進めば増穂町内までつながっているがとても厳しい道だと笑いながら教えてくれた。

 最近ではそれでも富士山が良く見えることから東京などから観光客がバスに乗ってくる事もよくあり、大型バスは集落手前にある専用の観光駐車場までしか道の規格の都合上登れないが、それでも多い時には7台も連なっている事もあるそうだ。
 また富士山の撮影ポイントまたこの辺りで猿が良く出没しさながら野猿園の様だとか、美しいニホンジカがこの辺りに住んでいるなどに話が行きつつ再び下って保育所前、今日は木曜日で鰍沢町では主要な観光向けの公共施設は木曜定休であるのでかじかの湯には停車せず通過。

 強風でバスポールが倒れているのが何とも人のいない光景にマッチしているのだが、営業日には大抵の便にかじかの湯停留所にて乗降があると言う。その数は少ない時でも5人はおり大抵10人から15人、多い時には20人くらいが乗り降りすると言うのは温泉の効果と言うのは大きいのだなとまざまざと見せ付けられた様な心地がした。
 なおそれを差し引いても大体1便最低5人の利用があるので健闘していると言えるべきか、通学時間帯はそれこそ中学生で一杯になりちょうどこの次の第6・7便がその混雑する便となるとの事だ。また沿線の小中学生には町から補助が出ており原則無料、これは義務教育だからだそうで高校生になると正規運賃を支払う様になる仕組だと言う。

 そして軽快に下りカーブを曲がったところで葉の落ちた木々の向こうの下に赤い橋、国道52号の 大柳川橋を見ればもう里。ただ6キロ奥に入っただけとは思えなかった県道からまたも素直に鰍沢方面へ左折せず、静岡方面へ右折しあの狭い場所で回転・・・本来はこの先の箱原・鹿島・箱原天神の3つの停留所まで行ってから戻ってくるのだと言うが、現在52号線で工事が行われている関係であと一ヶ月はこの場所を箱原天神の停留所として鹿島・箱原の両停留所は休止になっているとの事だった。
 その後は再び来た道を、52号線を北上し鰍沢営業所の手前にある二軒屋の名前の由来、今も家が二軒あるがかつては木賃宿的な古い家でそこで街道を行く人にうどんを売っていたのがその地名の起源と言うのが興味深いものであった。

 そして3月全通となる甲西バイパスの接続工事で煩雑になっている地点を通過し鰍沢営業所にて下車、バスは入れ替わりに1名を乗せて相変わらずの陣容で鰍沢病院へと去っていった。
 なお簡単な概要を書くと運賃は鰍沢病院・鰍沢営業所何れからも400円、初乗りが100円の対距離区間運賃制を採用しており、前述した小室山入口〜鰍沢営業所と同様に鰍沢営業所〜箱原間では身延町営バスと同一経路を走っている。


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