「 前進飛行の空気力学 」  General Page の参考文献のChapter にあげた物の他に 次の機関誌や雑誌の記事等から引用してまとめた。

The Journal of the American Hericopter Society.
The Journal of the Helicopter Association of Great Britain.
Vertiflite.
Helicopter World.
Design Classroom 〜 Popular Rotorcraft Flying

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前進飛行の空気力学 5  ( 5に 6と 7を追加して整理)


ローター特性の3要素


ローターの特性を決定する基本的な要素は次の3つのものである。

@ ローターブレード翼断面(翼型)の抵抗特性(別項参照)

A ロータ・ブレードのビツチ角

    コントロ一ル軸に垂直な面とブレード断面のゼロ揚力線とのなす角

    θ0 : ハブにおけるピッチ角
    θ1 : ハブと先端でのピッチ角の差

    先端のピッチが大きいとき正とする (=捻り上げ)。

 図5


B ソリディテイ(Solidity 剛比)

    ローターブレード面積の円板面積に対する比で定義する。
    ブレードが2枚のローターとそのブレードの半分の翼弦長の4枚ブレードのローターのソリディテイは同じであり
    基本的に同じ空力特性を有する。


       n×R×c     n c
   σ = ―――― = ――――
       π×R2      πR


     n : ブレード枚数
     c : ブレード翼弦長



翼型

今日ヘリコプターやオートジャイロに多<使用されているロ一ターブレード用の翼型は1931年頃の作品である。
その後の翼型研究の主な成果である層流翼型は 固定翼機(飛行機)用に開発されたものでローターブレードには
使用されない。 第1次世界大戦後の約15年間に翼型の系統的な研究が行なわれ翼型選択に便利な技術的な基礎が
作られた。 この時代に有名なクラークYやゲッチンゲン398と初期のRAF翼型が開発された。 
これらの翼型は流体力学理論に基づいて設計されたものではなく 経験を基礎として幾何形状のパラメーター(変数)を
変えた結果として得られたものである。 これら幾何形状を示すパラメーターはNACA4シリーズ及び5シリーズ翼型と
して数字で表わされ 低マッハ風洞でテストされた。 そしてこれらのテストデータが回転翼航空機を成功させた初期の
設計者らが利用出来た全てであつた。 例えばKellett KD-1型オートジャイロの口ーターブレードはゲッチンゲン 770の
翼厚比を少し小さくして使用したが コントロールリバーサルの問題から 後に少し改良された。
すなわち後縁を上方にそらす(Reflexed Traling Edge)事によって 元の翼型のキヤンバーラインに起因する空力中心回りの
大きなノーズダウンモーメント Cma.c. を打消した。
つまりこの時代に既にローターが Cma.c. に敏感であるという問題に対して技術的な対策がとられた。

 図6

 1930年代のローター・ブレード用翼型  

 

 図7



また最も一般的な翼型はNACA00シリーズとNACA230シリーズ(0012、23012等)であつて これら1930年代初期の設計が
今日の回転翼機に変りなく使用されているのである。 最近の飛行機では1部の軽飛行機を除きこれらの翼型は
低抵抗翼型(層流翼型)にとつて代られ 既に使用されなくなっている。 理論的な研究によれぱ飛行機の主翼や
プロペラ用の翼型と異なったローター用に設計した翼型を用いることによつてローター全体の揚抗比をかなり小さくできる
ことが知られている。 ローターブレードに適した選型特性として次のものがあげられる。

@ 空力中心まわりのピッチングモーメントがゼロであること。
A 揚力の小さいところから中間の値ぐらいのところで抵抗が小であること。
B 揚力が大きいところでも抵抗が急に増えないこと。

飛行機用に開発されたNACAの層流翼型は そのほとんどがピッチングモーメントが大きすぎて振動誘発の点から
ローターには適さない。 対称翼型はピツチングモーメントがゼロであり この欠点は無い代りに低抵抗部(ポーラーカ一ブの
バケット部)の半分が負揚力側に入り 特に揚力係数の高い所で運用する場合には不利である。 
バケット部を運用場力係数の範囲にもつてきて かつピッチングモーメント係数がほとんどゼロであるような翼型の研究が
NACAで行なわれた。 これが1940年代の初めに開発されたローター用層流翼型 NACA H シリーズ翼型である。

ヘリコプターの運用揚力係数(ホバリング時で約0.6)の範囲で層流効果を得るために大きなキヤンバーが必要となり
空力中心まわりのピッチングモーメント係数 Cma.c. を小さくするため 後縁をリフレツクスさせた極端なS字型のキヤンバー
ラインが採用された。 その特性を普通の翼型と比較すると H シリーズ翼型は揚力係数の低いところでは抵抗が小さいが
揚力係数の大きいところでは 早くしかも急激に抵抗が増大することがわかる。 結論として円板荷重が小さく(例えば
ヘリコプターに対してのオートジャイロ) 翼端速度比 μがあまり大きくなければ(=巡航時) すなわちローターを小さな
揚力係数で運用する時 H シリーズ翼型は普通の翼型に比較して効率が艮いといえる。 しかし回転翼機用翼型としては
次の理由で十分成功したとは言えない。 

@ ローターのポンプ作用(遠心力による)や前進飛行時 相対空気流のローターブレードのスパン方向の成分によつて
   ブレード表面の境界層が不安定であり層流効果が失なわれる。 

A 前縁半径が小さく失速特性が悪い。


 図8


ゼロモーメント翼型

 
図9

ゼロモーメント翼型とは一般的には ローターブレードが空気中を高速で回転する時 ブレードが強制的に捻られる事の
ない翼型をさしていう。 図に示すように空気中を進む4つの薄翼(実線)を考えるとき 最初の@は全く平らでその前縁は
上または下へ動く傾向が無なく この翼のピツチングモーメントはゼロである。 もしこの薄翼を中心線としてその上下に
厚みをもたせると(点線) これは見慣れた NACA OO シリーズの対称翼型となる。 Aの型は 正のキヤンバー(凸)を有し
その先端は空気流によつて下方へ押し下げられる。 よつてこの翼型はノーズダウン(マイナス)のモーメントを有する。 
この型の翼断面を持ったローターは 速い速度で回転する傾向が有る。 なぜならその翼端部はピッチ(ハブに対する取付角
 または空気流に対する迎え角と考えても良い)が小さくなるからである。 この型の多種多様の翼型(クラークY NACA4412
等ほとんどの翼型)は空力的な効率が良いにもかかわらず ローターに使用されないのはこの為である。 いいかえると
この型の翼型は速度に対して不安定であつて 前進側のブレードはタックアンダーする(tuckunder 下方へ回りこむ)傾向を
示し 機体の機首を下げさせ 極限においてはひどい急行下におちいり パィロットはこれを回復させる事ができない。 
Bの型は負のキャンバー(凹)を有し ピッチアップ(プラス)のモーメントを示す。 これはAとは逆に速度に関して安定である。
すなわち速度が増えるとブレードのピッチが大となって抵抗が増し 速度を下げるように作用する。 しかしこの型の翼型は
揚力係数が小さく失速特性が悪いため一般には使用されない。 正モーメント翼型をローターに使用するときの致命的な
欠点はフラッター安定が悪いことである。 この翼型を使用したブレードは もし翼弦方向のバランスが少しでも狂つていると
フラッターを起す。 Cの型は反りかえった(reflexed)キャンバーラインを特徴とし全体のモーメントがゼロになるようにして
ある。 この型の翼型はNACAにより開発されたもので Aの型の高い効率と@の型のモーメント安定性を結合しようという
試みによるものである。 おおむねこれは成功であつたがこの研究はまだ完全には終了していない。 
NACA 230 シリーズ及び NACA ”H” シリースがこのカテゴリ一のものであり 回転翼航空機に広く用いられている。
“H”シリーズは これが特にヘリコプター用として開発されたのでその頭文字をとつてこのように呼ばれる。 
この型の翼型のもう1つの利点は後縁のリフレックスの量を必要なだけ調節して 残余モーメントを制御できることである。
以上の事から ローターブレード用の翼型は @の対称翼型か Aのフラットボトム型(Flat Bottom)のいずれかを選択する
問題となる。 どちらをとつても一長一短が有り いろいろな要素を含めて決めなければならない。 
最も決定的な選択条件は飛行形熊と速度及び荷重である。 ホバリングか前進飛行か それもオートローテーションか否か
 又 低速機か高速機か 円板荷重は ? 等である。 
ジヤイロプレン(オートジャイロ)のローターはこれが通常 中ぐらいの飛行速度で軽荷重で運用されるので 多くの設計者は
Cのフラットボトム型を選ぶ。 ことにアマチュアを対象とするとき利点が大きい。すなわち翼下面が平らであることは
製作するのに大変都合良く 後縁のリフレックスはローターの手による始動(hand start 〜 armstrong method)を容易にし 
かつ比較的高率の良いピッチで取付けることができる。 リフレックスのない翼型@の場合 その最も効率の良いピツチ
(約5度)にセツトすると これは手でクランク(スタート)することが出来ない。 また翼型の効率の目安である揚抗比は
他の条件が同じなら巡航状熊において Cのフラットボトム型が@の対称翼型よりもすぐれている。

 図10

 図11


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