細雪  監督/市川  昆
2006. 9. 24

下に書いた金田一シリーズと同じ市川 昆監督の「細雪(ささめゆき)」は、第二次世界大戦前(昭和 13年)の大阪を舞台に、本家と分家の狭間で揺れ動く四姉妹の悲喜こもごもを情緒的に描いた素晴らしい作品です。長女に岸 恵子さん、次女に佐久間 良子さん、三女に吉永小百合さん、四女に小手川祐子さんという名女優の共演は、市川 昆監督の演出の素晴らしさもあって非常に格式の高いものとなっています。

この映画を初めて見たのはおそらく中学か高校の頃だったと思います。中学の修学旅行で九州各地を回ったものの、正直、その当時は本州の風景よりも友達との自由行動や土産探しに熱中している年代。 沖縄とは異なる風景の事はあまり記憶に残っていません。 なのでこの映画に出てくる風景は強烈に残っていて、今に思えば私が本州の「四季」を感じた初めての映画かもしれません。 これまでに4,5回は見ていますが、この映画雑談に合わせておそらく7、8年ぶりぐらいに見ました。きっかけは「藤」。 今年の春にたまたま購入した藤の木は、久しぶりに私の目を蘭以外の植物に向けるきっかけとなっています。微かな記憶の中で「この映画の冒頭に出てくるのは藤の花ではなかったか?」 そう思いながら見始めたのですが・・・。

この映画の原作でもある谷崎潤一郎の小説を読んだことのある方は既におわかりでしょうが、冒頭に出てくるのは藤ではなく「しだれ桜」でした。私は原作を読んだことがありませんのでネットで調べたのですが、映画に僅かに出てくる背景を見る限り、「平安神宮」のしだれ桜のようです。今の今までこの映画に出てくるのは藤だとばかり思っていたので少し恥ずかしい。 しかし、しだれ桜を見たことの無い私にとってはとにかく溜息が出てくるばかりの素晴らしさです。今でこそ沖縄で生活する事の幸せを感じたり、沖縄にしか無い風景や植物を愛でることができますが、初めてこの映画を見た頃は沖縄では絶対に見ることのできない風景に感激したものです。そしてタイトルにもなっている「細雪」が川面に音も無く舞い降りていくシーン。 ただ、ただ、見入ってしまいます。


犬神家の一族   監督/市川 昆
2005. 7. 21

私はリストを見てもわかるように少々「アカデミー賞フリーク」の気があって洋画を良く見るのですが、「金田一シリーズ」、また市川昆監督の作品(「細雪」、「ビルマの竪琴」他多数)が好きなので、両者が合わさったこの作品は日本映画の中でも非常に好きです。DVDは持ってなく、テレビ放送を録画しました。これまでにあまりにもテレビ放映された映画というのはあらためて録画する気にならないものですが、この作品は録画してまでも見たい映画の1つです。子供の頃に見た映画というのは何気に記憶に残っているものが多く、この映画を初めて見た時は怖くて眠れませんでした。確か、角川映画第1作という記憶がありますが定かではありません。

ストーリーはここで今さら書く必要はないですね。 本当に緻密な脚本なので、単なる恐怖映画ではなくストーリーで魅せてくれます。日本映画というよりも市川昆監督独特の演出、シリーズを通して出演する馴染みの俳優陣、そして名優と呼ばれる方々の火花散る演技は、「荘厳」ささえ感じる雰囲気がたまりません。 また、良い意味で古い時代、古い街並みが出てくるのも効果的な演出だと思います。

私は主演よりも脇役の方に目が行く場合が多々あるのですが、この作品でブルーリボン助演女優賞を受賞された故高峰秀子さんの演技は本当に絶賛に値すると思います。言葉を発さずに表現する緊張感、押し殺した感情を目で語りかける葛藤、助演どころか主役以上の秀逸な演技は見ていて感動さえ覚えます。日本を代表する女優さんだと思います。

主演の金田一はこの作品の石坂浩二さんだけでなく、鹿賀丈史さん、古尾谷雅人さん、最近では SMAP の稲垣吾郎さんなど思いつくだけでも多数の俳優が演じていますが、石坂浩二さんの主演が私は好きです。おそらく金田一シリーズでもベストと言われるこの作品の主演をしている影響が大きいと思います。


もののけ姫   監督/宮崎 駿
2008. 9月


2008年秋、屋久島の旅(詳しくは こちらをクリック)から戻ってすぐにこの映画を見ました。旅の途中、例えば高速バスやフェリーの中、もちろん白谷雲水峡の森の中を歩いている間も、ずっとこの映画のテーマ曲が頭にあったような気がします。おそらく私と同じような方も多いのでは?  特に今回の旅で「しし神様」を思わせる雄鹿、そして「木霊」を髣髴とさせるヒメシャラの根を実際に見て、さらには「もののけ姫の森」を歩いただけに映画のシーンがより強くなった感じがします。

登山の途中、川沿いで軽く食事をしながら休憩したのですが、当然この映画の話も出ました。実は私自身、この映画のインパクトが強すぎてそれ以降公開された宮崎駿監督の作品を見ていません(ハウルの動く城、崖の上のポニョ他)。  千と千尋の神隠しは DVD は持っているのですが未だに見ぬまま2,3年が経とうとしています。今回の旅でさらにこの映画の印象が強くなったので、未だに自分にとって監督の作品は「もののけ姫以前」、「もののけ姫以降」という区分けになっており、しばらくそれが続きそうです。

だいぶ前、テレビで屋久島を特集しているバラエティー番組で、何故屋久島に来たのかというアンケートを現地で観光客に聞いていたのを見た覚えがあります。「世界遺産だから」とか「心の癒しを求めて」という答えが多かったと思うのですが、その中に「縄文杉に呼ばれたから」という答えがあって、そのフレーズが何故かその時から頭に残っています。正直、今回の旅はそういう感じでは無かったですね。 実際、縄文杉のルートは悪天候のために登れなかったのですが、何故か残念とか悔しいと言う感情が起きませんでした。いつの日か、自分の心の中で縄文杉に呼ばれる日が来る事を心待ちにしています。


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