SCO
高分子成形加工(Polymer Processing)、コーティング、繊維形成(溶融、乾式紡糸)関係のコンサルティング、ソフトウエア開発を専門とするコンサルタントです。
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コータードライヤのシミュレーション (混合溶剤を使用した塗膜の乾燥−2)

プラスチックフィルム等のシートにコータで塗工液を塗布し、引き続き溶剤を乾燥させて、ポリマー等の塗工成分をシート上に固着させるコーティングプロセスは、例えば粘着テープ、写真用フィルム、各種包装用シート、磁気テープ、プリント基板製造の際に使用される感光性樹脂シート(ドライフィルムレジスト)等の加工に用いられる、重要なフィルム加工プロセスの一つである。

このコーティングプロセスに関連した分野の研究、開発は、基礎から応用に至るまで各方面で活発に行われており、現在も発展段階にある。

工業プロセスでは、単溶剤の場合も多いが、混合溶剤が用いられる場合も少なくない。混合溶剤の場合は、乾燥時の塗膜内における溶剤各々の物質移動の挙動が、溶剤相互の影響を受けて理論的な取扱いが格段に面倒になる。

このような方面の研究は、アカデミックな世界を中心として現在も盛んに行われているが、2種類の混合溶剤の場合でも、ポリマーと合わせて成分は3種類となり、理論的な取扱いに必要な物性値を得ることも容易ではない。

筆者はすでに、このような混合溶剤を用いる場合の塗膜の乾燥プロセスを、乾燥特性曲線の考え方を利用して計算するシミュレーションの方法について述べた。この方法は、難度がそれ程高くなく、乾燥プロセスを適切に表現できるため利用度が高く優れたものと言えるが、塗膜内部の溶剤の濃度分布を無視しているので、そのような情報を必要とする場合は利用できないという問題もある。

近年、自由体積理論を用いた混合溶剤の塗膜乾燥理論が発表されているが、単溶剤の場合に比して理論的な取扱いが格段に複雑になり、必要な物性値を得ることは必ずしも容易ではなく、広く一般的に利用するにはまだ敷居が高いと言わざるを得ない。

本報では、溶剤1/溶剤2/ポリマーの3成分系塗膜の乾燥プロセスに関して、塗膜内の溶剤の濃度分布も含めて計算する実用的な方法を考案したので、その方法とそれを用いたシミュレーションについて述べる。本報で述べる方法は、自由体積理論の考え方を取り入れながら、一方でフィッティングパラメータを導入して、混合溶剤の場合での自由体積理論利用の困難性を解消したものである。

【「コータドライヤのシミュレーション−混合溶剤を使用した塗膜の乾燥(2)」, プラスチックス, Vol.57, No.6, P.160 & No.7, P.105 (2006)】