SCO
高分子成形加工(Polymer Processing)、コーティング、繊維形成(溶融、乾式紡糸)関係のコンサルティング、ソフトウエア開発を専門とするコンサルタントです。
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コータードライヤのシミュレーション (混合溶剤を使用した塗膜の乾燥−3)

プラスチックフィルム等のシートにコータで塗工液を塗布し、引き続き溶剤を乾燥させて、ポリマー等の塗工成分をシート上に固着させるコーティングプロセスは、例えば粘着テープ、写真用フィルム、各種包装用シート、磁気テープ、プリント基板製造の際に使用される感光性樹脂シート(ドライフィルムレジスト)等の加工に用いられる、重要なフィルム加工プロセスの一つである。

工業プロセスでは、単溶剤の場合も多いが、混合溶剤が用いられる場合も少なくない。混合溶剤の場合は、乾燥時の塗膜内における溶剤各々の物質移動の挙動が、溶剤相互の影響を受けて理論的な取扱いが格段に面倒になる。

このような方面の研究は、アカデミックな世界を中心として現在も盛んに行われているが、2種類の混合溶剤の場合でも、ポリマーと合わせて成分は3種類となり、理論的な取扱いに必要な物性値を得ることも容易ではない。

自由体積理論に基づく塗膜の乾燥理論は、混合溶剤を用いる場合にも適用可能となり、塗膜内の溶剤濃度分布を含めて詳細な解析を可能にした高度で有用な理論であるが、ポリマーと溶剤の組み合わせが現実には数多くあるため、自由体積理論のパラメータ値を入手することは必ずしも容易ではなく、実用上のバリアとなっていた。

筆者は先に、自由体積理論をベースとした実用的な混合溶剤塗膜の乾燥シミュレーションについて報告した、乾燥過程の変化の状況は的確に表現できるものの、塗膜乾燥の実験データとの一致性は必ずしも十分とは言えなかった。

この度、上記のシミュレーションモデルを改良して、実験データとの一致性のより良いシミュレーションプログラムを作成したので、それについて述べるとともに、このプログラムを用いて行った塗膜乾燥の最適化検討についても報告する。

【「混合溶剤塗膜乾燥シミュレーションの改良と最適化の検討」, プラスチックス, Vol.58, No.6〜No.8 (2007)】