扉の向こうの青い空 〜第1章:おまけ〜
セントラル。
翌朝。二日酔い気味の大佐と、3人で朝食を摂る。
「珍しいっスね。大佐が、二日酔いなんて。」
「…ああ。…あいつらと飲むと、何時もこうだ。」
「『あいつら』?ヒューズ中佐だけじゃなかったんスか?」
「ああ、もう一人同期が居てね。…すまないが、チヒロ。」
「はい?」
「会ってやってくれないか?会わせろとうるさいんだ。」
「あの…はい。かまいませんけど…。」
「大佐の今日の予定は?大丈夫なんですか?」
「ああ、将軍に頼まれている雑用を幾つか済ませれば終わりだ。元々、今日はセントラルの街をチヒロに案内するつもりだったしな。」
相手の人が午後には西方司令部へ戻ると言うので、午前中のうちに会うことになった。
「…あなたが、ロイの娘のチヒロちゃん?」
「あ…あの。」
「きゃあ。かわいいわぁ。」
そう言って、ガシッと私を抱きしめたのは。太陽の光が当たると金髪にも見間違いそうなくらいに明るい茶色の髪の綺麗な人だった。
少し癖のあるショートの髪にシャープな顔立ちは、きっと頭のいい人なのだろうと思わせる。
「こら、ミリィ。」
「あら、ゴメン。あなた、写真よりずっとかわいいんだもの。
私、ミリアム・ゴードン少佐。今、西方司令部に居るの。ロイとは士官学校で同期だったのよ。」
「あっ、はい。え…と、チヒロ・ナカハラです。よろしくお願いします。」
「で、そっちが…?」
「ジャン・ハボック少尉です。」
「よろしく。ロイが迷惑掛け捲ってるんでしょうね。」
「は……。」
「ハボック。そこは否定しておくところだ!」
「や、すんません。見え見えの嘘は付けなくて…。」
「こら!」
そんな二人の様子をニコニコと見ているゴードン少佐。
あ、…そうか。きっと、大佐と少佐って…。
普段大して鋭くない私が、珍しくピンと来た。
「あ、あの。ゴードン少佐。」
「ああ、止めて。『ゴードン』ってあんまり好きじゃないの。」
「何を言う。西部きっての資産家じゃないか。」
「そうよ。弱い者から毟り取って…ね。」
そういうご実家を嫌悪しているようだった。
「じゃあ、あの。ミリアムさん。」
「何?」
「さっき、写真がどうとかって…。」
「ああ、こいつ。あなたの写真持って来てさ、ヒューズ顔負けの娘自慢してたわよ。」
「……!?」
「ミリィ!」
「…ああ、この間撮った奴っスね。」
やだ、大佐。恥ずかしくて、顔が赤くなっていくのが分かる。
「立ち話もなんだから、買い物にでも行こっか。」
「はい?」
「ロイとヒューズの娘なら、私の娘! 色々買ってあげるわ!セントラルは凄いわよ〜。東部の田舎とは違うから。」
「あ……あの。…ちょ……、待……。…ミリアムさん!?」
大佐とジャンさんを荷物持ちにして、服やらバックやら靴やら…何かブランド品らしいものを沢山買ってもらって。
ミリアムさんは満足して、帰っていった。
そして、大量の荷物と一緒に残された私たち。
「………。」
「………。」
「………。とりあえず、一旦ホテルに戻ろう。」
「はい。」
で、私はホテルに残って荷物の整理。
中央司令部へは大佐とジャンさんが行くことになって…。
何だか少しだけ、のんびりとしたイーストシティが懐かしく感じられた。
明日には、帰ります。
20051129UP
突然思いついてUPしてしまいました。
本当は第1章のラストの話の中に入るはずだったのですが、中途半端な長さと、
メインがどうもミリアムになってしまったのとで、ボツにするつもりだったものです。
けど、アンケートのコメントで「ミリアムを」との要望もあったことですし、
(けど、きっと書いてくださった方は大佐との話が読みたかったんですよね。へへ)
このままお蔵入りも、もったいない気がして…(貧乏性ですみません)。
まあ、『模様替え』ア〜ンド『第1章終了』記念と言うことで…。
(05、11、30)