この世にカミサマはいるか…

注:『紅桜編』を踏まえて、尚且つ『芙蓉編』の後。

 




「いや、いると思うね。カミサマ。」

「へえ?鬼の副長ともあろう者が、カミサマなんて信じてんの?」

「少し前まで信じちゃいなかったさ。」

土方はふうと煙草の煙を吐いた。

「けど、最近はいるんじゃないかと思う。」

「へ〜え?」

そんな土方を揶揄するように笑う。

「そんなん、見たことねえぜ。」

「俺も見たことは、無い。けど、いるとしか思えねえ現象が次々と起こる。」

「…え、マジ?」

「おうよ。怖ええな、俺はそうならないようにしねえと。」

「…え、祟り?祟り的な感じ?」

「そうだと思う、そうとしか思えねえ。普通じゃありえねえし…。」

「………。マジでか…。」

低くなった銀時の声に、土方は大真面目な顔で頷いた。

「俺の知ってる奴なんだがな。」

「うん、うん?」

「少し前に大怪我をしたんだ。そりゃあ凄かったぜ、体中包帯を巻いてな。」

「…うん、…?」

「なんだか、身体を刺し抜かれたらしいんだ。串刺しだぜ。」

「………う、ん…。」

「それだけでも怖ええだろ。なのに、その怪我が治ったと思ったら、又同じようにどてっ腹に穴を開けやがった。」

「………。」

「同じような怪我を2度もだぜ。ありえだろ。祟りだよ、祟り。」

「………何の、祟りだよ…。」

「決まってる。そいつは普段から悪行の限りを尽くしてるからな。」

「あ、…悪行?どんな?」

「聞いて驚け、団子屋に足繁く通っては、そこで料金を踏み倒しまくってるんだ。」

「………あの〜、もしもし?」

「そんな奴が、2度も身体を刺し抜かれて大怪我してんだぞ。これは団子の祟りに違いねえ。団子の串のカミサマが怒ってるんだ。」

「や、あのね。」

「怖ええなあ、万事屋。手前も気を付けろよ。」

「………。」

「………。で?その傷の具合はどうだ?」

「…や、その。」

「まさか腹に穴なんか開いてねえよな。」

「あの…。」

「2度目だなんて言わねえよな。」

「……え…と…。」

これは、怒ってるな。相当、怒っている。

「ごめんなさい。」

「俺に謝るな、団子の串のカミサマに謝れ。」

「〜〜〜〜。そのネタまだ引っ張る気?」

「それ位で、大怪我がなくなるならカミサマにでも何でもすがるわ。」

「ごめん。」

前のときもそうだった、そして今回も。

『どうしてそんな怪我をしたんだ』…そう聞いてこない君は、きっとそれぞれの怪我の理由に薄々気付いてる。

いつも、言えなくてごめん。

もう、こんな怪我しないと約束できなくてごめん。

本気で心配してくれる君に、『ごめん』としか言えなくてごめん。

「………。3度目は無えかも知れねえんだからな…。」

ポツリと言った言葉。

2回、命を取り留められたからといって次があるとは限らない。

「うん。分かってる。団子の串のカミサマにちゃんと謝っとく。」

ツケもなるべくしないようにする。

「…そうか、なら、良い。」

本当は全然良くないのに、そういって許してくれる君。

腕の中に閉じ込めて、抱きしめる。

 

団子のカミサマでも何でもいい。

 

まだ、この愛しい身体を抱きしめられることに感謝します。

彼が、俺を見捨てず傍にいてくれることを感謝します。




 

だから、もう少し。

俺の両腕を、俺の命を。

そして、彼の命も。




 

奪わないでください。




 

 

 

 

20071213UP

END

 


35000HITお礼フリー小説第2弾…ということで…。
猫の話がどうにも心残りで…。もう1本書いてしまったわけなのです。
入れ替えようかとも思いましたがこちらは何せ、短すぎる…。
というわけで、猫の話と団子の話の2本でお礼完了とさせていただきます。
これもフリーなので、気に入ってくださった方はどうぞお持ち帰りください。
背景のお持ち帰りはNG。
文自体を変えなければ、そのほかはいい感じでお楽しみください。
なお、どこかに掲載してくださるという方は、最後の方にでもサイト名と月子の名前をくっつけといてください。
では、皆様。35000HITありがとうございました。
(07、12、14)