餌付け
「え?」
「夕ご飯、いらないアル。」
「どどどど、どうした?神楽?体の調子でも悪いのか?」
「か、神楽ちゃん?何かあったの?」
「もう。食べてきたアル。」
「あ、あ〜そうか〜。なんだあ。びっくりしたぜ。」
「どこで食べてきたの?足りた?」
「おう。ガッツリ食べてきたアル。」
その言葉に嘘はないようだった。
しかし、胃の中に宇宙を持っている神楽を満足させるだけ食べさせるってどれだけ豪気な奴だ?
男二人は同じ事を疑問に思った。
「で、どこで食ってきたんだ?」
「屯所アル。」
「「は?」」
「真選組の屯所アル。」
「何で、あんな所へ行ったんだよ!」
「決着をつけるためネ。あいつと戦ってたアル。」
思い浮かべたのは、女みたいな顔して性格はドSのサド王子。
「はあ、そりゃ…。」
真選組でも相当迷惑しただろう。
「暫くしたら、フクチョーが出て来たアル。」
「え?土方?」
「うん。で、『腹減ってないか?』っていうから、減ってるって言ったら食堂へ入れてくれたアル。ありったけ食べて良いって言うからきれいに平らげてきたネ。」
「………はあ。」
「太っ腹ですね。」
ありったけってどれだけだよ?
「フクチョーもオムレツつくってくれたアル。」
「はあァァァァ?」
「土方さんが…?」
「おいしかったアル。ゴリラも言ってたネ。フクチョーの料理は上手いって。」
「本当か?」
「うん。今度はチャーハン作ってくれるって言っていたアル。」
「へ、へえ〜〜。」
「ただ、フクチョーがお休みの時じゃないと駄目って言われた。だから、来週までお預けアル。」
「ち〜ょっと、待った〜〜〜ぁ。」
「は?銀さん?どうかしましたか?」
「神楽、それは大いなる問題だ。」
「?」
「問題って…? 正直、神楽ちゃんが週に1食でも外でお腹一杯食べてきてくれるんなら、それに越した事はないじゃないですか。」
「そうじゃねえよ。…おい、神楽。」
「何アル?」
「土方が、休みの時はお前にメシ作ってくれるって言ったんだな。」
「うん。」
「それが週1。」
「うん。…ただ、いつも必ず出来るとは限らないって言われたアル。急に予定が変わることもあるから…って。次の休みは来週だから一応約束はしてきたけど、仕事になるかもとは言っていたアル。」
「うんうん。つまり、アレだあ。神楽は土方の休みを把握してるってことだろ?土方の休みの予定。分かったら、必ず俺に教えろ。」
「へ?」
「いや、アル。」
「何だと。」
「銀ちゃんに教えると、フクチョーを取られるネ。フクチョーがお休みの時は私にご飯作る。コレ約束アル。銀ちゃんには邪魔させないアル。」
「神楽〜〜。俺だってなあ、まだ土方の手料理食ったことねえんだぞ!いいか!恋人の俺がだぞ!なのに、何でお前が食ってんだよ。」
「いつの間に恋人になったアル?」
「煩え。俺の心の中ではとっくに恋人同士なんだよ!しかも俺は教えてもらえねーのに、何でお前が次の休みの予定まで把握してきてんだよ!コノヤロー。」
「そんなの銀ちゃんの甲斐性が無いだけアル。」
「んだとうー。」
始まった低次元の言い争いに新八ははあと大きく溜め息をついた。
「………馬鹿ばっかり…。」
20070511UP
いい男は料理が上手いはず…と言う月子の妄想がここにも…。
(07、06、02)