同級生のアイツ

 

 

十四郎はシャワーを浴びていた。

身体を洗い、あとは全身を流して出るだけだ。

その時、シャワールームのドアが静かに開いた。

「今、出るから。」

服を脱いで入ってきたルームメイトである銀時に一声かけて、身体についている泡を流す。

十四郎の注意がそれた時。

銀時は十四郎のすぐ後ろにいた。

「え?」

銀時の手が十四郎の股間に伸びてきて、そこをギュッとつかまれる。

「ちょ、坂田!?」

慌てて後ろを振り返ろうとするが、銀時の体が背中に密着してるので出来ない。

さらに力を込めて扱かれる。

「あ、さ、坂田っ。何、やって……っ!」

「いいから、大人しくしてろよ。」

実は内心気に入っている気だるい声が低く耳元に吹き込まれる。

「坂田っ。」

身動きしようとするたびに、強く股間を扱きあげられる。

銀時の反対の手は、十四郎の胸に移動しそこにある突起を刺激し始めた。

「や、やめ、…っ……あ……。」

上がった声の甘さに自分が驚く。

「土方。」

銀時の唇は十四郎の首筋から背中へと這って行く。

やがて銀時は器用に片手でボディソープのポンプを押し、その液を十四郎の後ろへと塗りこんでいく。

「あ、……ああ……っ。」

はじめての感覚に十四郎はどうしていいか分からない。

せめてみっともなく崩れ落ちるまいと、必死で手がかりのないタイルにしがみついていた。

「あっ!」

前後の刺激に耐えられず、恍惚とした十四郎の意識が飛びかけた時後ろに激痛が走る。

「やめ!坂田!」

悲鳴を上げる十四郎に銀時は一瞬動きをとめた。

「まだ、辛いか?」

耳元に吹き込まれる声に、力が抜ける。

そのタイミングを外さず、銀時は十四郎の中に入ってきた。

「やだ、やめろ!」

「もう、無理。」

いくら喚こうと、銀時は出ては行かなかった。逆にゆっくりと突き上げられ中をかき回される。

十四郎のモノに伸びていた手が再び刺激を与えてくる。

「あ……。」

すっかり敏感になった体がビクンとはねた。

「感じてるんだ。」

「あん……ああ……っ、……さ、坂田……。」

「一緒に、イこう。な。」

抑えようにも抑えられない声に、十四郎の絶頂が近いことを感じたのだろう。銀時の動きが激しくなる。

「あ、  あ、……ああ。」

「土方…。土方…。」

耳元で呼ばれる名前。与えられる快感。

それらをうまく消化しきれずに、十四郎は翻弄され続けた。

 

 

はあ、はあ、はあ。

解放の後の脱力感で十四郎はタイルの上に座り込んでしまっていた。

銀時は、十四郎に温いシャワーの湯をかけてその身体を清めていった。

十四郎が銀時と出会ってもう丸2年。今年で3年目となる。

全寮制であるこの高校に入学して、最初のルームメイトが銀時だった。

はじめは毎日喧嘩ばかりだったが、実は気が合うのだと分かってからは、自他ともに認める『親友』ともいえる相手だ。

2年の時には、別の部屋になってしまったが。3年に進級して再び同室になれて嬉しかった。

それは銀時だって同じはずで。

密かに流れてきた噂では、十四郎と同室になるために裏で銀時が何か画策したとか、しないとか。

そんな銀時が十四郎を苦しめようなどとは決して思うはずがない。

その確信は今も変わらない。…こんなことをされても…。

だから、本気で逃げなかった。

銀時を叩きのめして、その腕から逃れようと思えば出来たかも知れないけれど、我が身の危険を感じなかったのだ。

銀時から十四郎を害しようという気配が発せられていないから…。

丁寧に十四郎の身体を流した後、銀時はしばらくギュッと十四郎の体を抱きしめていた。

普段饒舌な銀時が先ほどからずっと黙ったままだ。

十四郎ももう口をきくのもおっくうで、されるがままになっている。

沈黙が流れる中、ピチャンと落ちる水音と幾分乱れた二人の呼吸の音だけがその場を占める。

何か言え。

十四郎はそう思ったが。

銀時の方も同じように思っていたのかも知れない。土方、何か言ってくれ…と。

銀時は十四郎を抱えてシャワールームを出ると、脱衣所のタオルで身体を包みそっと水気を取りそのまま抱き上げてベッドへと運んだ。

素肌にシーツの感触が心地よい。

疲れ切っていた十四郎はそのまますうっと眠りについた。

眠りに落ちる直前、隣に熱い身体が入ってきて、その腕の中へと取り込まれるのを感じたが。

それはそれで気持ちが良かったので、体を預けたまま眠りについた。

 

 

朝。

十四郎が目を覚ますと、部屋に一人残されていた。

銀時の気配は、ない。

ベッドの上にそっと起き上ると、体がだるく、鈍い痛みがある。

しかし、思ったよりは苦痛が残っていない。銀時が無理をさせないよう気を使ってくれたらしいのがわかる。

ふと見ると、窓の外が異様に白い。

「…雪……か?」

シーツを体に巻いて窓辺へ寄る。

「……ああ、やっぱり。」

多分このシーズン最後の雪となるだろう。

季節はずれの雪はまだ降り続き、世界を白く変えていた。

ガチャ。とドアが開き、銀時がコンビニの袋を持って入ってきた。

心の準備なんてできてない。

十四郎は昨夜のことを怒るべきか、笑い飛ばすべきか、なかったことにすべきか、決めかねてしまった。

ただ、銀時をじっと見つめる。

シーツ1枚身体に巻いただけの十四郎を見てごくんと唾を飲み込むと、銀時は大股で部屋へと入ってきた。

ぽいっとコンビニ袋を自分のベッドの上へ投げ、十四郎の前までやってくる。

そのままの勢いで十四郎を抱きしめると、唇を重ねる。

「んん。」

夢中で十四郎の唇をむさぼる銀時。

しばらくして、そっと唇を放すとギュッと十四郎を抱きしめる。

何となく十四郎には分かってしまった。

昨夜のことと、今のキス。

男同士なんて普通じゃないけれど、銀時の気持ちはまぎれもなく本気だ。

静かな時間が流れ、漸く銀時が腕の力を緩めた。

まだ、抱きしめられている腕の中で、銀時の顔を見つめる。

「ずっと、好きだった。」

「…ずっと?」

「うん、始めて会った時から。ずっとだ。」

「初めて……って、最初の頃は喧嘩ばっかりだったじゃねえか。」

「そりゃ、アレだ。好きな奴の気を引きたくて、ついちょっかいを出しちまう…っていう…。」

「どこの小学生だよ。」

「恋する男心はいつだって少年なんだよ。」

訳分かんねえよ。そうっ込みたかったが、銀時の表情が恐ろしく真剣なので、すぐに言葉が出ない。

自分の心に問いかける。銀時を好きか?

友人としては、勿論。自信を持って言える。

けれど、銀時が求めるのはそんな感情ではないのだろう。

突然投げかけられた強い気持ちに、答えられるだけのものをまだ自分は持っていない。

「………腹減った。」

「へ?」

「腹、減った。」

むくれた子供のような表情の十四郎。

その顔をまじまじと見ると、銀時はぷっと噴き出した。

「今、コンビニに行って買ってきた。雪が積もる前の方がいいと思ってさ。」

春休みの今は、寮の食堂が開かない。

そのため銀時は雪の中少し離れたコンビニまで買い出しに行ってきたのだ。

十四郎の体を放して、ベッドの方へと戻る。

その背中を十四郎の声が追いかけた。

「春休みの間…って言ってももう後数日だけど、その間のメシ代は全部坂田の奢りな。」

「はああ?」

怪訝そうに振り返った銀時に十四郎はニヤリと笑い返す。

「お・ご・り・だ。」

得意そうな笑み。

苦学生の銀時の事情を知っている十四郎は、今まで銀時に金銭的な話を振ったことがない。

その十四郎が銀時に奢れという。しかも休みの間ずっと。

それで昨夜のことは水に流そうというのだ。

そんなもんでいいのか?

思わず聞き返してしまいそうになる。

男が男に抱かれるなどというのは、どんな気分だろう。

食事代などで償えるものなのか?

休み中の食費のことを考えて少し多めに預金をおろしてきたのだが。二人分に足りるだろうか?

もう一度銀行に行かなきゃなんねえかも…。

財布の中身を思い浮かべ、苦笑しながら銀時は『分かった』と頷いたのだった。

 

 

 

 

 

 

20090619UP

END

 


はい、始まりました。新シリーズです。
そしていきなり、いきなりな展開です。
これを許せるあたり、土方は銀時を好きだと思うんだけどね。
『おいおい、お前らそれで付き合ってないって言い張るつもりか!』な二人を目指したいと思います。
感想など頂けると嬉しいです。
(20090623)







 

 

しょっぱなから、ちょっとアレな展開です。
私は子供。と思われる方や、エッチなものは読みたくないと思われる方は、Uターンでお願いします。