「やさしいシリーズ」の設定で。
じれったい。
「……いや、それはそうだが…。」
マスタングの執務室。
この部屋の主は先ほどから受話器を握り、ほとんど進展しない話を延々と続けている。
「…そうでは無くてな…。」
まったくもう。
仕事の話で入室したホークアイは先ほどから、待ちぼうけを喰わされている。
自分の仕事は…まあ、いい。まだ余裕があるから。
問題は彼のデスクの上に山積みとなった書類たちだ。…ご丁寧に2山もある。
ホークアイの『早く電話を終わらせろ視線』を感じているだろうに、微妙に視線をずらして誤魔化し会話を続ける。
電話の相手は西方司令部の少佐、ミリアム・ゴードン。
マスタングの士官学校時代の同級生で、親友で。(絶対に本人は認めないだろうが)長年片思いを続けてきた最愛の想い人。
普段、『女たらし』だの『男の敵』だのの呼び名をほしいままにしているくせに。
本命には弱いらしい。
「や。待て、ミリィ。そういう事ではなくてだな…。…ああ、そうだ…。」
まったくもう。
この部屋に入ってから、何度目か分からない溜め息を小さくついた。
ホークアイが入室する少し前に、リアーナがうんざりした顔をして戻ってきたから。随分長いことしつこい電話を続けていることになる。
良く相手をしてくれるものだ。とミリアムの器の大きさに感心する。
…まあ、恐らく相手は書類の決裁などをしながら…なのだろうが。
そこへ軽くノックの音がして、返事も待たずに扉が開いた。
入室してきたのはハボックで、その両手には大量の書類を抱えている。
『…まだっスか?』呆れた視線が、ホークアイに向けられる。
肩をすくめてそれに返し…。その後ろ、扉のところからそっと中を覗くリアーナに苦笑する。
こちらは、ずっと電話を替わって欲しくてタイミングを見計らっているらしい。
…そして。進展の無い話はまだ終わらない。
まったくもう。
とうとう、ホークアイは遠慮せずに大きな溜め息をついた。
ミリアムに男性の噂が立つたびに、血相変えて電話を掛けるくらいなら…。
とっととくっ付いてしまえばいいのに!!
そして、その手がゆっくりと腰のホルスターへと伸びていった。
20060419UP
END
基本的にうちの中尉は、あまり大佐を脅すのに銃は使いませんがたまにはキレる。ということで。
以前、チャット大会で「本命には弱い大佐」の話で盛り上がったのでこんなものを書いてみました。
(06、04、22)