「やさしいシリーズ」の設定で。

 

 

 

観賞用!?

 

 

 

 マスタングの執務室に、リアーナが紅茶を入れたカップを持って入ってきた。

「大佐〜。15分休憩していいそうですよ〜。」

 恐らくは、ホークアイ中尉に言い付かってきたのだろう。

 カップが2つあるということは、本人もここで休憩をするつもりであるらしい。

 絶対に逃げるスキを与えないという、ホークアイの執念を感じマスタングは小さく首を竦めた。

 マスタングにカップを差し出し、デスクの上の書類を『処理済』と『未処理』に改めて確認しつつ分類し終えると。リアーナも来客用のソファに座って自分の分の紅茶に口をつけた。

「…ねえ、大佐。」

「何だね?」

「胸って揉むと、大きくなるって本当ですか?」

「ぶっ。」

「やだ、大佐。書類汚さないでくださいよ?」

「…君が変なこと聞くからだろう。………君にそんなこと吹き込んだのはハボックか?」

「違いますよ。女友達の間での話です。」

「けど、ハボック関連なんだろう?」

「はあ、まあ。」

「あいつの巨乳好きは司令部内では有名だからな。」

「…そうなんですよねえ…。」

 とリアーナは溜め息を付く。

「君だって別にコンプレックスを抱くほどではないと思うが。…セクハラとか言うなよ。」

「言いませんけど…。」

 少し言いよどんで、リアーナは話し始めた。

「あいつ、街中歩いていて胸の大きな女の人を見かけるとじーっと見るんですよね。そりゃもう、嬉しそうに。」

「で、君と比べたりするのかい?」

「あからさまにそこまではしませんけど、…心の中ではしてるんじゃないかなあ〜と。」

 そういうことか…とやっと納得が行ってマスタングは苦笑した。

「君だって、街中でいい男がいればじっと見たりするんじゃないのか?」

「う〜ん。今はありませんねえ。」

「今は…ということは以前はあったのかね?」

「…ていうか…、あいつと付き合うようになる前は…。」

 と苦く笑う。

「金髪とかノッポとか煙草の匂いとかに…反応してたかも…。」

 ああ、この子のハボックへの気持ちは本当に深いのだ。もう、他の男が入る余地などないくらいに。

「じゃあ、例えば花屋で咲いている花を見れば君だって綺麗だと思うだろう。」

「そりゃあ。」

「ハボックだって同じだ。」

「え〜〜〜?花と巨乳じゃ全然違うじゃないですか。」

「観賞用という意味では一緒だ。」

「観賞用?」

「そんなもんだろう。目が楽しいから見ているだけだ。その持ち主とどうこうなろうというのではない。」

 ソウカシラ。と呟きつつも多少機嫌は直った様子だ。

「で、大佐。最初の質問ですけど。胸は揉むと大きくなるんですか?」

「さあな。実験し検証したことがないのでなんとも言えん。…何だ、巨乳になりたいのか?」

「そういうわけじゃないんですけど…。」

「そんなに言うんなら、私が揉んでやろうか?」

「あ〜、それはセクハラですね。でも、巨乳になりたいと思ったらお願いしようかしら?」

 マスタングの言が冗談と分かっているから、リアーナも軽く返す。

「今はなりたくないのか?」

「なんか、色々と邪魔そうじゃないですか?」

 走る時とか、匍匐前進するときとか…。

 ケロリとそういうリアーナは、意識が完全に軍人のそれになっている。

 それでも、彼氏の視線を気にしてしまうのは女性ならではと言うところだろうか?

 内心ほほえましく思っていたマスタングにリアーナは悪びれずに言った。

「あ、大佐。15分過ぎちゃいました。もう、休憩終わりですね。」

「………。君の胸の話で私の休憩時間は終りか。」

「やー、すみません。次の休憩の時はクッキーも付けるので許してください。」

 ちっとも悪いと思ってない口調で笑うリアーナに、ある意味ホークアイに似てきたかも知れないと内心溜め息を付いたマスタングだった。

 

 

 その後、東方司令部内に『マスタング大佐がトウエン少尉の胸を揉んだ』と言う噂が流れ、ハボックがマスタングの執務室に怒鳴り込んだのは。又、別の話。

 

 

 

 

 

 

20061103UP
END

 

 

ハボと言えば巨乳。
一度は巨乳を扱うべきだろうと思っていました。
なのに、ハボ出てないし…。なので「大佐と〜」のグループに入れました。
(06、11、03)