「やさしいシリーズ」の設定で。
かくれんぼ
バタンとドアが開いた。
「「「うわあ〜〜。」」」
男達の焦った声が上がる。
「ねえ、大佐見なかった?」
ドアを開けたのはリアーナだった。
「こら、トウエン。ここは男子更衣室だぞ。」
ハボックが呆れたように声を上げる。
今は演習を終えたばかりのハボックの隊の隊員が、一斉に着替えの最中だった。
それどころじゃないのよ。とリアーナが溜め息を付く。
「又、大佐が逃亡したのよ。」
「え?又か?」
「ここには、いないわよね。」
「…ああ。…着替えたら、俺も探すから。」
「うん。お願いね。」
そう頷いたリアーナは、ドアを閉めた。
「ホークアイ中尉、ここにはいないみたいです。後は中庭か、第3資料室あたりですかね?」
ドアの向こうにいるらしい上司へ報告している。
ほう……。と更衣室内に溜め息が漏れた。
そして再び、ドアが開けられた。
皆が一斉にぎょっとする。
「大佐〜、中尉が中庭を見に行ってますから。今のうちに戻っておいて下さいよ〜。」
………!!!
何で分かったんだ!?
ロッカーの奥から、恐る恐るマスタングが顔を出す。
マスタングが『男子』更衣室にいるわけが無い。と言う考えの裏を掻いたつもりだったのに…。これでは、汗臭いのを我慢した意味が無い。
「ハボックも、絶対に目を離さないように。必ず執務室に連行して。」
「…わ、分かった。」
「皆もよ。中尉が戻るまでに大佐が執務室に戻ってなければ、連帯責任だからね。」
「「「う、うわ。は、はい!!」」」
女子職員の間で絶対の信頼を集めているリアーナ。
彼女や意中の女性が司令部内に居るものなどは、その影響力の大きさに慌てて敬礼を返した。
リアーナの『あの人は信頼できない。』の一言で振られてしまうかも知れないのだ。
「それから大佐。これ以上逃げ回ってると、今日は本当に中尉の銃で殺されるかも知れませんよ?本気で怒ってましたから。」
「う。」
最後に本人に釘を刺して、じゃね。といってリアーナは出て行った。
「大佐、大人しく今日は戻りましょうよ。」
「そうですよ。」
「さあ、戻りましょう。」
「今、すぐです。」
「う…分かった、分かった。…仕方ないな…。」
何が仕方ないんだ、と言う一同の内心の突っ込みをシカトして。
いかにも渋々と言う態度で、マスタングが立ち上がった。
「じゃ、行きましょうか。」
着替えを終えたハボックが、犯人を連行するときと変わらぬ緊張感を持って上司の横に控えた。
隣に立つ部下が、手錠をかけられないのを歯がゆく思っているなどとはつゆ知らず。
マスタングは大量の書類の待つ執務室へとノロノロと戻っていったのだった。
20061218UP
END
今回はリアーナ役得でした。何が?って、そりゃハボの生着替えです!!!
(06、12、19)