やさしい笑顔を 〜冬の日の一考察〜

 

 

 

 最近めっきり寒くなった。

 決して寒いのが得意では無いリアーナ。

 日々下がっていく最低気温に、文句を言うのが日課となりつつある今日この頃。

『けど、悪いことばっかりじゃないわ』と実は思っていたりする。

 

 

 今日はマスタング大佐の市内巡回の日。

 巡回コース付近に配置された隊員たちに指示を出したり。

 マスタングに群がろうとする女性達を整理したりと、結構大変なのだ。

 イーストシティの街中を、黒い集団がうろうろと移動するさまは。ある意味怪しい。

 そう、寒くなってきたのでみな青い軍服の上に軍支給の黒いコートを着込んでいるのだ。

 黒のロングコートは着る人を選ぶ、とリアーナは思う。

 小柄なフュリー曹長は、ちょっと制服みたい…。

 ブレダはぜったい太りすぎ。鍛えていて、触れば結構筋肉が付いているのは分かっているけど。コートを着るとそんなのはすっかり隠れてしまう。もうちょっとスリムにならないと。

 マスタングは、基本的に何を着てもそれなりに着こなしてしまう。

 軍支給の安物のコートも、高級品に見えるのはさすがで、目の保養であることは間違いない。

 で。

 少し離れたところから、足早にこちらへと歩いてくる大男。

 黒一色の中で、金髪が映えることは間違いないけれど。

 上背があるからロングコートを着るとなにやら迫力が増すのだ。

 大股で歩く姿を、すれ違う女性のうちの何人かが振り返って見惚れるのは苦く笑って流しておく。

「トウエン、移動するってよ。」

「………。…うん。」

「?どうかしたか?」

「なんでもない。」

 目の前に立たれて、見とれてしまって一瞬言葉が出なかったことは内緒だ。

 

 こんなかっこいい姿が間近で見られるんだもの。

 寒い冬も、悪いことばっかりじゃない。

 

 

 

 

 

 

20061929UP
END

 

 

 

お店で黒のロングコートを売っているのを見て。
背の高い男の人がこれを着たら、ばっちり決まるだろうなあ…。との妄想から出来たお話。
(06、12、15)