私がトライアスロンを始めた頃、この競技の歴史について調べている時に、おもしろい話を発見したので
紹介したい。それはトライアスロン発祥のエピソード。どうやってこのスポーツが生まれたかである。




  トライアスロンの歴史


★はじまりは遊びから・・・
 トライアスロンの競技の歴史はまだ新しく、世界で最初に開催された大会は1978年のハワイでのアイアン
マンレースと言われているが、この話はそれよりも6年も前にさかのぼる。
場所はアメリカ西海岸カリフォルニア州サンディエゴでのことだった・・・・



    「やあキャサリン、調子はどうだい?」

  
  「最高よ。お天気もいいし…トミーはどう?

    
「もちろん、絶好調さ。きょうは走ったあとでジャックとバイクに乗るんだ。だって…ランニングでは、
     彼に勝てないからね。ぼくの得意な自転車も一緒にやろうと約束したんだ。」


  
  「それは面白そうね。じゃあトミー、私も仲間に入れて。でも、私の好きな水泳もやるのよ。」

    「いいとも。ジャックはどう?」

    
「大歓迎さ。ではラン、バイク、スイムの順でやってみよう!


太陽の光がさんさんと降りそそぐ海岸で、スポーツ大好き人間の若者たちが砂浜に寝そべり語らっていた。
この海辺の町に集まってくる若者たちは、海で泳いだり、サーフィンを楽しんだり、砂浜を駈けっこしたり、
仲間達とスポーツに興じるのだ。

彼らの多くはスイマーやサーファー、ジョガー、サイクリストたちで、ソラーナビーチやパシフィックビーチと
呼ぶ海で泳いで、そのまま砂浜をランニングし、また泳いでといった具合に、スイムやバイクやランをそれ
ぞれ楽しんでいた。
そのうち彼らは、自然発生的に3種目のスポーツを連続して行うようになり、3つ(トライ)の競技(アスロン)
ということから"トライアスロン"と命名したのである。


そして、ついに彼らは仲間同士でトライアスロン大会を開いた。1976年、サンディエゴのフィエスタ・アイ
ランドにおいて、ラン4.5km、バイク8km、スイム0.4kmの競技が展開されたのである。
「シャナハン&ジョンストン・ミッション・ベイ・トライアスロン」と呼ぶミニ・トライアスロン大会だった。
競技というよりも気軽に、その場に集まった者同士で行うフィットネス・ゲームだったが、これが今日のトライ
アスロンの原型となったのである。



    「やっぱりジャックにはかなわなかったわね。トミー」

    
「完敗といったところかな。スイムでも差をつけられたし…」

    
「確かにランではトミーにリードしたけれど、バイクのゴールの地点では、あともう少しで追いつかれ
     そう
だったよ。それにしてもキャサリンは泳ぎがうまいね」

    
「でも、たった400mでは、差はつかなかったわ。今度は距離を変えてやりましょうよ」


仲良しの3人は息を弾ませながら、海岸の砂浜でいつまでも語り合っているのだった。

サンディエゴの海岸では、必ずしもスイム〜バイク〜ランの順番で競技を行っていたわけではない。
ランが最初の種目で、次にバイク〜スイム、さらにランという順番で競っていたという説もある。

なんともふざけた話だが、えてして物事の始まりというものは、こんな笑ってしまうような「おふざけ」が元に
なっているのかもしれない。


★そしてアイアンマンへ・・・
 サンディエゴ海岸でのフィットネス・ゲームは、海を隔てたハワイ諸島でも行われていた。もちろん今日の
ような競技としてのトライアスロンではなく、サンディエゴと同じく、フィットネス感覚でスイム、バイク、ランの
3種目を楽しむ仲間内のスポーツとしてである。

1977年秋10月、ここはオアフ島のワイキキビーチ。常夏の島に夕暮が迫り、はるか東の空の地平線の
かなたに、くっきりと満月が浮かび上がっていた。そのワイキキビーチの一角にあるビアホール「ファン・ラン」
で、ビアグラスを片手にかざし大声で喚きしゃべり合っているのは、一日の役務を終えてくつろぐハワイの
海兵隊員たちである。



    「なんていったって、バイクでこの島を一周するのは大変だぜ」

    「いやいや、フルマラソンほどきついものはないさ」

    「そういう君達は、このビーチのスイミング・レースに出たことがあるのかい?」


つまり、オアフ島一周179.2Km(122マイル)のバイクレース、42.195Km(26.2マイル)のホノルル・マラソン
大会、それとワイキキビーチで行われる3.84Km(2.4マイル)の遠泳大会(ラフウォータースイム)の3種目の
中で、どの競技が一番、大変か? 議論し合っているのである。


誰も自分がこなした競技には自信を持っているから、話し振りにも自信がみなぎっている。しかし、経験が
ない他の競技の話となると、いまひとつトーンがあがらないのも無理はなかった。まあ、議論をするという
よりも、スポーツを話題に酒を飲み自慢話をしていたという事である。

    「では、どうだい。3種目を続けてやってみよう。そうすれば、何が大変か? わかるというものさ。
     この3種目をすべてこなした者こそ英雄だ」


海兵隊員の一人、ジョン・F・コリンズは冗談口調で切り出した。

    「ブラボー! それは面白いアイディアだ。もちろん、ジョンもやるんだろうな」

    「じゃあ、まずビーチから泳ぎ出して、次にバイク、最後にマラソンという順でやろう」

    
「よおし、そうなれば、こっちのものだ。バイクで差をつけてやる。どうだ! みんな。ジョンの提案に
     異論はないな?」



海兵隊員らはビールの酔いが回るにつれ言いたい放題、なかには「俺こそ一番になってやる」などと
大ボラを吹いたり、仲間をはやし立て盛んに出場参加を促していた。こうなったら、言い出しっぺの
コリンズも引くに引けない。周囲の人々から催促され、挑戦することになったのだ。


こうして翌年の1978年2月18日、オアフ島のワイキキビーチを本拠地に、3種目を連続して行う
トライアスロン大会が開催されたのである。


この時の参加選手は男性ばかり15名、完走した者は12名におよんだ。優勝はホノルル駐在の海兵隊員
ゴードン・ハラーで、トータルタイムは11時間46分58秒だった。ちなみに参加費は3ドル、あとはコリンズが
ポケットマネーをはたいたそうである。


以来、この大会を通称アイアンマン(鉄人)レースと呼び、のちにスポンサーがついて「ノーチラス・国際
トライアスロン大会」、あるいは「バッドライト・アイアンマン・トライアスロン・ワールドチャンピョンシップ」など
と名乗った。今では世界でもっとも歴史が長い、世界でもっとも競技レベルが高いトライアスロン大会として
君臨している。




トライアスロンは人類の進化を表す?

 今日のスイム〜バイク〜ランというトライアスロンの順番が確立されたのは、ハワイ・アイアンマン大会で
のことだ。とはいうもの、ではなぜスイム〜バイク〜ランなのか? 残念ながら、この三種目の順番を定めた
理由は定かではない。競技の安全性を確保するためとか、運動生理学的にスイム〜バイク〜ランが最善
など、説はいくらでもあるが、今になっては定かではない。 しかし、こういった説もある・・・


 三十数億年前の地球は、海が三分の一の面積を占めていたという。その海から生命体(バクテリア)が
誕生し、やがて大陸へと上がっていった。そして、生命体のうちのひとつから人類が発生し、やがて原野を
四つ足で走り抜け、森林の高い樹木の上を住家とした。そして今から約四百万年前、人類は安全な大陸の
上で直立二足歩行を始めた。


この海から陸へ上がり、四つ足(バイク)で走り、二本の脚で歩むというトライアスロンの姿こそ、まさしく人類の
進化の過程そのものであるという説。 うーん、まさにドラマチックだと思いませんか?



トライアスロンの距離について

 トライアスロンの行われる距離のカテゴリーは大きく分けて、ショートミドルロングと三つに分けられる。
下の図は分かりやすいように「
スプリント」を別にしてあるが、スプリントショートの一部とされる場合が多い。
日本で行われる年間100レース以上の大会で一番多いのが「
ショート」の距離で、オリンピックもこのカテゴリー
で行われる。 大会の中にはこれらのカテゴリー以外の独自の距離で行っている場合もあり、あくまで目安だ。

厳密に言えば、レースを完走した人に与えられる「鉄人」という称号は、ロングを完走した人のみらしい。
じゃ、それ以外の人は「なんちゃって鉄人」とでも呼ぶのかな?

距離のカテゴリー  スプリント ショート又は
オリンピック
ミドル ロング又はフル
各種目の距離 スイム 750m 1.5km 2km 3.8km
バイク 20km 40km 100km 180km
ラン 5km 10km 21km 42km
主な大会名 千本浜大会
昭和記念公園
大会 他
伊良湖大会
石垣島大会
天草大会
他多数
佐渡大会Bタイプ
五島列島大会
徳之島大会など
佐渡大会Aタイプ
宮古島大会
皆生大会
ハワイアイアンマンなど


参考文献:MSPO日本トライアスロン物語 風神の巻