昔々のお話
人里離れた山奥に
其れは大きな屋敷が在った
我儘な帝と人里離れた屋敷の姫君
「姫様、帝の使いの者が文を持って参りましたが如何されますか?」
「捨てて」
「畏まりました」
人里離れた屋敷の姫君―――――蜜柑は、若き帝―――――――棗に求婚されていた
しかし、帝の我儘の度は過ぎており、都に止まらず国を越えてまで広がるほどである
そしてこの人里離れた屋敷にまで届いたのだ
帝からの文の内容は簡単に言えば「俺の正室になれ。」と言うものである
屋敷の姫と帝なのだから身分違いにはならないが
誰が好き好んで我儘な帝と結婚したい等と思うだろうか
しかし、この帝容姿が良い為貴族の姫が「我先に」と言わんばかりに言い寄ってくるのであった
「又、捨てられたのか……」
「はい、私の目の前で……」
「良い度胸だなあの姫は……」
「お上、何度も文を捨てる姫など良いでは有りませんか…」
「そうですよ」
「お上、何故あの姫に其れほどまでにご執着なされるのですか?」
「ああ……其れはだな……」
或る日帝が「外出したい」と言い出したのが始まり
帝が行きたい所へ赴いたのは良いが帰りに酷い雨が降ったのだ
偶然通り掛かった所があの姫の屋敷―――――――――――――「佐倉家」
「一晩泊めろ」と言う前にあちらの姫様が気付かれましてな
泊めてくださったのよ。心優しいお方である事は確かなのだが……
「その様なお方が何故お上の文を?」
その後のお上の行動よ……
………………………
一晩だけとは言え相手は帝、其れなりの物が出されたよ
まぁ、其れは当然の事
食事も風呂も何もかも丁寧にしてくれた
お上は普段あちらの姫様が使われる寝所で寝る事になったんですよ
その話が出た時お上が……
「おい」
「はい」
「お前名は?」
「蜜柑」
「そうか…蜜柑俺をお前の部屋に寝かせると言ったな?」
「そうやけど」
「俺と寝ろ」
「どう言う意味や」
「変な意味はねぇ…ただ添い寝をしろと言ったんだ」
「分かった。布団を2枚用意させるわ」
「いや…1枚で良い」
「新婚ごっこでもする気?」
「俺は構わない」
「ウチも構わん。今日一日だけやし…」
「では姫様の部屋に普段通に用意いたします」
「宜しく」
其れから夜も更けた頃
「入るぞ」
「はい」
「どうぞ」
其処には三つ指突いて頭を下げる蜜柑
部屋には一枚の布団
棗は「してやったり」と思った
実は棗は蜜柑に一目惚れをしたのだ
「面を上げろ。堅苦しい」
「はい」
そう返事をして頭を上げた瞬間
バサッ
「きゃっ!!んんっ」
蜜柑が目を開けると其処には棗の顔
一瞬理解が出来なかったが
「//////////なっ何を/////////////」
「お前気に入った。俺の正室になれ」
「せっ正室……冗談」
「冗談じゃない…本気だ」
「いくらお上でも、段階と言うものを踏んで頂きたいわ」
「段階を踏めば正室になると?」
「さぁ?」
「とまぁ…こんな事が有った」
「それであの姫に……」
「おい…文を送ってもどうせ捨てられる。口で伝えようか」
「どのような内容ですか?」
「『今すぐ逢いに行く』と伝えろ」
「畏まりました」
「姫様」
「何?」
「良いのですか?」
「何が?」
「帝とのご結婚です」
「なっ何で///////」
「お顔に出ていますよ「好き」と」
「でっでも我儘やし」
「其れは姫様が何とかなさいまし」
「姫様」
「何?」
「帝の使いの者が「今すぐ逢いに来る」と口で残して帰りました」
「今すぐ……ですか……」
「今すぐ……となると後半刻ほどで来られる事になりますが……」
「姫、多分今日強引にでも娶られるに違い有りません」
「そっそれは無いやろ…」
「いいえ。絶対有ります。こういってはなんですがお上の我儘ぶりは都一です」
「そうやったね……」
蜜柑は帝である棗に大層気に入られたのか泊まりに来る度に契りを交わされそうになったのだが
蜜柑付きの女房達によって阻止されてきた
「姫様、帝がお見えになりました」
「通して」
「畏まりました」
どうやら半刻経っていたらしい
「蜜柑」
「はい」
「近くに来い」
「はい」
近くに……あまり行きたくない……
「何でそんな所に居るんだ?」
グイッ
「キャッ!!!」
「俺は近くに来いと言ったが…」
「だっだからって何でこんな近いんや/////////」
「正室になる気になったか?」
「さぁ?其れより離してや/////////」
「其れは出来ねぇな」
「なっ何で?」
「強引に娶りに来たから」
「えっ/////////」
ヒョイ
「おい、帰るぞ」
「えっえええええ!!」
棗は蜜柑をお姫様抱っこして強制的に連れ帰り強制的に正室にしたそうな
その後も都は安泰だったそうな……