これは、ちょっぴり昔のことを思い出していた日のこと。


「なぁ棗!!」

「あ?」

「苺があるんたけど・・・・」

「・・・だから」

「一緒に食べへん?」
「・・・・」


蜜柑の手には輝くような赤の苺。



ふと、妹の顔が浮かぶ。



「・・・・・・」

「棗?」

「・・・あぁ」

「食べる?」

「食べる」

「やったぁぁ!!!」

「そんなに喜ぶことかよ」

そういいつつも嬉しい棗。

「嬉しいで!」

廊下を歩きながら話す2人。
向かう先はいつもの場所。


「はい、フォーク」

「・・・・」

無言で受け取る。


「じゃあ・・いただきます☆」

「食う」


――――パクパク



「おいっしいなぁぁ〜///////」

あぁ・・・そういえばアイツもおいしそうに食べてたなぁ

もうちょっと静かだったけど。


「・・・・」

「棗はおいしくないん?」

「そんなにうまいか?」

「うん!!」

「・・・・・やる」

そう言って差し出したのは一粒の苺。

「へ?」

こんな風にあげたりもしたなぁ・・

「くれるん!?」

「あぁ」

「でも棗って苺、好きなんじゃ・・?」


こんなことも言われたな


「好きなんだろ?やるよ」

「ありがとう!!!!」
おいしそうに微笑む蜜柑を横目で見ながら棗もほんの少し微笑んだ。



あのとき、苺をあげた君はいないけど・・・
苺を『嫌いだ』なんて言ったりもしたけれど・・・・

その苺を本当は『好きだ』と言ってもいい人が


あのときのように苺をあげてもいいと思える人が



俺には、ようやくできました。




END♪