《 身長差 》
中等部へと進学し、新しい制服にも慣れて来た。
「日直、資料室に行って地図を取ってこい」
教室内に先生の声が響き渡り、蛍は蜜柑を眺め
「…日直って、アンタじゃなかった?蜜柑」
「あ、ほんまや。ちょっと行ってくるな」
ガタンっと椅子を引き、蜜柑は教室を出ていった。
―――資料室
「うーん…よっ…」
奇怪な声を出し、蜜柑は背伸びしていた。
「…っ指は届くんに……取れへんっ!!」
眉を困ったように八の字にして、蜜柑はその場にへたりこんだ。
届かないなら届かないで諦めもつくというのに、指が届くので何か悔しさがあった。
どうしようかと悩み、キョロキョロと周りを見渡すも脚立も台になる椅子すらなかった。
「むぅ〜…脚立くらい置いとけっつーんや!!」
行き場のない怒りを込め、蜜柑は地団駄を踏むしかなかった。
気を取り直して、再び背を伸ばし手を伸ばした。
「…あと…もうちょっと……」
「何してんだ、水玉」
不意に後ろから声を掛けられ、爪先立ちの蜜柑はバランスを崩した。
「えっ!?うぁっ…」
―――痛い!?
と床の痛みが来るかと思ったが、その衝撃はなくそーっと瞳を開けば自分が棗の上にいる事に驚愕した。
「な、棗っ!?」
「………てぇ…」
「あわわっ…ごめんなっ!!」
「そう思うならさっさと退けろよ…」
蜜柑が慌てて、棗から避けると制服の埃を叩き落としながら蜜柑に話し掛けた。
「で、何してんだ?」
「あ、そうや!!先生に地図頼まれたんやけど届かへんよ」
「……どれだよ」
棗が聞いてくると、蜜柑は棚の上にある地図を指し
「あそこや!!椅子とかあらへんから、困って……」
蜜柑がキョロキョロとしていると、横にいた棗は少し背伸びしただけで地図を取った。
「ほらよ…」
とんっ…と地図を渡され、蜜柑は地図と棗を交互に眺めた。
「………なんだよ」
じーっと見つめてくる蜜柑に今度は棗が尋ねると
「……棗、背ぇ伸びたん!?なんかずるいわっ!!」
「はっ?」
「この間までウチとあんま変わらへんかったのに〜悔しい〜〜!!」
ぐんっと顔を近付けて悔しがる少女を見て、棗は頭が痛くなる。
何故、自分が責められなくてはいけないのか。
自分は男なのだから、好きな女よりは背が高い方がいいではないか。
手をかざし、尚も近寄ってくる蜜柑の顔の高さに自分の顔を合わせると
―ちゅっ
と音と共に軽く口唇が触れた。
「……なっ!!!?////」
一瞬、何が起きたか分からない顔をしていた蜜柑だが、にやりと棗に笑われると真っ赤になって口を手で覆った。
「ちょうどいいだろ」
「なっ…何がっ!?////」
「キスするには」
「―――んなっ////」
フッと笑うと棗はそのまま歩いていってしまった。
真っ赤になったまま蜜柑は、そっと口唇に触れるとやや熱かった。
確かに
彼を見上げてする
キスはしやすかった
それは「男」と「女」身長差
END