呪われた運命3


江戸を出た蜜柑たち一向はどこかへ向かうように歩いていた

江戸を出るのは良いが何も知らない蜜柑は

「なぁ……何処行くん?」

「山代藩の飛鳥流の忍びの里です」
とほのかが答える

因みにこの頃「花姫殿」では




「世継ぎ」が決まったとの噂を聞きつけた者の中に不穏な動き有り

「皆さん大事な話があります」

「何でしょう」

「正式な世継ぎの発表です」

「誰ですか?」




「『若紫』です」

「蜜柑の君」について、慕っていた者についての記憶を失っている為
この事について「花姫」達はなんも疑問に思わなかった

だが…

不穏な動きをしている者の中では


「正式な「世継ぎ」が「蜜柑の君」から「若紫」に変わったようです」
と1人が言う

それを受けてその動きをしている首領と思われる者が

「『蜜柑の君』の筈だが」

と言って騒ぎ出す

同じように「花姫殿」でも騒いでいるようだ……

「『若紫』さん」

「『若紫』さん何処ですか?」

「世継ぎ」となった「若紫」が居ないと大騒ぎである

江戸内でも同じように大騒ぎ

そして話は冒頭に戻り


「何で其処にウチが行かなかんの?」

「話せば長いので今日の旅籠でお話します」

と言って歩き続ける



暫くすると小田原の城下町にたどり着きはたごで宿を取った

周囲に誰も居ないのを確認したほのか達が

「こちらにお立ちください」
と言って蜜柑を上座に立たせ、深々と頭を下げる

しかし理由の分からぬ蜜柑は

「ウチは本物の姫ではない」
と言う

今までの事を振り返り自分を必要としてくれた人など誰も居らず
姫宮は「雪葵」を真に愛し自分はその代りである……
そして表向きの「世継ぎ」は「若紫」が為るべきものだった……

しかし……

「貴女様は2歳の頃、幸福をもたらすと言われる「天狐」の末裔
姫見や貴女様のその能力を利用し、花姫殿に永久の繁栄を手に入れるが為に
手下を連れ、我が主であるとの富代様を亡き者にし、貴女様を花姫殿に連れ去ったのです」

そう、蜜柑の父と母は変化狐の一族の血を引いていた
そして、山城藩・飛鳥流の忍びの里長でもあった

「そして私たちは或る御方の命により貴女様を保護し、生まれ故郷である
山城藩・飛鳥流の忍びの里にある本家屋敷へ連れ帰る為の護衛を任されました」


ほのか達は山城藩・飛鳥流の忍びだったのだ

蜜柑は山城へ行けば自分を必要とする人に出逢えるのではないかとの思いが募り

「ウチを山城の忍びの里に連れてってください」

と改めて頼んだ


「へぇ……あの子そう言う子だったの…」

蜜柑を追ってきた「若紫」が自慢の発明品で話の内容を盗聴していた

そうとは知らず温泉でゆっくり旅の疲れを癒していた蜜柑

ガラガラガラ

戸が開いたのでそちらに目を向けると

「!!!!!!!」

其処には「世継ぎ」となり今頃は「花姫殿」に居る筈の

「若紫」の姿が在った―――――――――――――