嫌い 嫌いや人間なんて
見るだけでもゾッとする
でも―――――――――――――
こんな所にも居たくない
時は江戸時代
とあるお屋敷の話をしよう
運命(さだめ)と言う名の悪戯〜〜序章〜〜
ウチの名前は蜜柑。此処「花姫殿」ではその名の通り「蜜柑の君」と呼ばれている
ウチは元々此処には居なかったけど或る日強制的に「姫宮」と名乗る女に連れてこられた
誰にも知られないようにする為に闇の中連れてこられた
ウチの存在を知る花姫は極僅かとも……
「姫宮」と言う女は「花姫殿」の主人である
聞くところによると大の男嫌いだそうでお手伝いさんも皆女
「花姫殿」を男子禁制の場とするほどである
「うわあああああああ!たっ頼む!!いっ命だけは!!!!!」
「問答無用」
ガブッ
「ぎゃああああああ!!!!!」
華やかに見える表とは裏腹に闇の面も在る
ウチはその事についての始末役として呼ばれたのだ
ああ……又今日も邪魔者始末
ウチは幸福をもたらすと言われている「天狐」の血を唯一引いている
言わば物の怪なんや
だから人間の食べ物は食べれない
だから仕方なく人間をこの中で襲い殺して食べて生きている
「幸福をもたらす」――――――聞いて呆れるわ……
「不味い」
「人間は嫌いや……己の欲望の為に平気で人を殺す事が出来る」
「物の怪にとって人間ほど恐ろしいものは無い」
「人間なんて信用出来ん」
そう…あのままひっそりと
物心付く前から漆黒の眼帯で左眼を覆われたこの姿で
山奥で……静かに…
ひっそりと生きていたあの頃の方が幸せだった
「うっく……」
人間と言えど殺したくないのが本音
基から人間は嫌いだが今ほどではなかった
ウチがこの座敷牢の中に居るのは
全く別の目的で
此処に連れてこられた
一人の…しかも人間の少女存在を
隠す為に在る
見た事も無いし観たくも無いが――――――――――
ウチは一生をこの大きな屋敷の為に生きなければならない
秘密を護るために人を殺し続けなければならない
もうそう言う風にしか生きることを許されない
華やかな面しか知らぬ「花姫」達はこの事を知らない
明日は大事な日だそうだ……