登場人物設定

佐倉 蜜柑……「鍵」の唯一の残りである「人鍵(ひとかぎ)」の一人
代々鍵守として「人鍵」を守ってきた家の地下牢に保管されている

今井  蛍……「人鍵」を守ってきた「今井家」当主
「人鍵」が女なので世にも珍しい女当主


日向 棗と乃木 流架……「今井家」が収める村の住人
表向きは只の住人だが……






















遥か昔

この世には「鍵」と呼ばれるものがありました

この「鍵」は権力の象徴とされてきました

しかし長い長い歴史の中

元は1000とも2000とも言われていた「鍵」も

今は「人鍵」と呼ばれるたった一つの種類の「鍵」しか残っていないとか……

そして其の鍵自体

あるものは忘れ去られ

またあるものは破壊され

そうしてこの世に「鍵」は一つしか残っているとかいないとか……






此処はとある屋敷

其の屋敷の地下牢にございます



「蜜柑……」

「蛍様」

卵のような形の容器に入れられている少女

名を「蜜柑」と言い「人鍵」の唯一の生き残りである

見た目は16、7かの娘だが

少なくとも1000年は生きていると言われている

そして「鍵守(かぎもり)」である「今井家」が代々守ってきたのであった


「ウチの存在が「外」で噂になっております」

「!」

当主である「蛍」はひどく驚いた

其れも其の筈

先に述べたように「鍵」は権力の「象徴」

其れを守る「鍵守」の家の人間ですら

上層部にならないと知るような事ではない

しかし

上層部の人間は

町に繰り出さないのが暗黙の了解

「鍵守」の家の常識である

其れが洩れたと言う事は

「洩らした」と言う事である


(一体誰が―――――――)






此処は「今井家」が収める町の外れ

そこに居るのは2人の青年



「聞いた?「噂」」

「ああ「鍵」の噂だろ?」

「500年程前に絶滅したと聞いていたけど……まさかね……」

「まさか…だよなぁ……」

「調べてみるかい?」

「当り前だ」

「だよね……」

「「金になるからな」」


そう

昔は1銭にもならなかったが

数が減ってきた頃から値が付くようになった

唯一の生き残りである「蜜柑」は

売れば億又は兆の単位で売れるのだ


「在ると言われている場所は何処だ?」

「意外と近いよ……「今井家」だから……」

「……やるか……」

「やるんでしょ?」

「ああ……」


そうして2人の青年は作戦を考えました


まさかこんな事になっていることは知らない

「今井家」では――――――――――――





「皆に集まってもらったのは他でもない……「人鍵」についてよ……」

「何故です蛍様?」

「皆も知っての通り「人鍵」については此処に集まっている人間しか知らぬ事」

「しかも此処に集まっている者は「外」には絶対で無いであろう人間ばかり……」

「なのに何故か「人鍵」の事が町で噂になっていると「人鍵」より告げられた」

「誠ですか!!!」

「如何にも」

「「「「「!!!!!」」」」」

「お待ちください!其れが誠の事なればこの中に裏切り者が居ると言う事に……」

「そうね」

「しかも……知っての通り「鍵」には少なくなるにつれ値が付いております」

「勿論少なくなればなるほど高くに……」

「解っているわ……勿論其れが何を指してくるかもね……」

「「あの子」は渡してはならぬ」

「何が何でも守りなさい!!」

「「「「「はっ!!」」」」」






そして時は過ぎていき――――――

丑の刻――――――




「裏口から入ったは良いけど……」

「迷路かよ……」

「流石「今井家」って所かな?」

「じゃ探しますか」

「出来るだけ慎重にね……」




ピーーーーーーン

(誰か…来た?)

「鍵」では基本的に「人間」を嫌うため人の気配には敏感だ

だが「人鍵」だけは同じ「人」なので嫌う事は少ないが気配には敏感なのだ

そして蜜柑が気付いたと同じ頃



「誰か来たわね……」

「洩れていたと言う事が此れで明らかになりましたね」

「ウズメ……始末してきなさい……」

「はいっ!!!」

そしてウズメは地下牢へ……






棗と流架は二手に分かれて「蜜柑」を探していたが


(一体どうなってやがる!!!)

棗は地下牢の仕掛けに翻弄されていた

一方流架は――――――


「そっちなんだね」

動物達に聞きながら順調に進んでいるのである



(誰か来る!!確実に……しかも……)

―――――――男―――――――

「蜜柑」は人見知りはしないが

それでも「男」に対しては抵抗があるようで……

其れも其の筈

その辺を考慮して

此処「今井家・本家」には「女」しか居ないのだ

初めての存在にかなり怯えている

10分か1時間か

はたまたそんなに経っていないかは解らないが


「君が「鍵」?……しかも「人鍵」?」

蜜柑は話せなかった

目の前にいるのは此処の主である蛍と同じ「人間」なのに

「男」だから話せなかった


「怯えないで何もしないよ」

見た目は優しい感じの金髪の少年

「だから少しお話しよう」

掛けてくれる言葉も優しい

でも

何時まで経っても恐怖が抜けない

何時もとは打って変わって黙り込んでしまったのだ……

(かなり警戒されてるな……)

「ね「おい」」

流架の話を遮ったのは

「棗!!!!!!!!!!」

一足遅くに其処に着いた棗だった

「てめぇ何で何も話さねぇ」

「待ちなよ……かなり警戒されてる証拠じゃん……」

「…チッ…」

「ごめんね荒くて……」

棗の迫力に更に恐怖が増した「蜜柑」

「でももうそろそろ話しよう……」

と言って「蜜柑」が保管されている硝子に手を伸ばした其の瞬間

パシュッ

何かが飛んでくる音がしました

「「「!」」」

「その者に触れるな!!!」

「ウズメ……」

「其のまま……その2人に心を開いてはなりません」

「誰だテメェ……」

「私は「人鍵様」の守りの一人「ウズメ」お前達こそ何者か!!!」

「俺等は只噂に惹かれてやって来ただけの町人」

「嘘……」

「「人鍵様」!!」

「初めて口を利いてくれたね……何で嘘?」

「だって此処はからくり屋敷やから……普通の人間は…入ってくることすら不可能」

「「人鍵様」なりませんその様な者達と口を利くなど!!!!!!」

「ええんよ……」

「答えてくれたお礼に教えてあげる」

パチン

そう流架が指を鳴らすと

ドドドドドッ

「「!!」」

地響きのようなものが聞こえます

「え?」

「「人鍵様」」

「蜜柑」が持ち上げられてるではありませんか(正確には「蜜柑」を入れているものが)

「頂いてくよ♪」

「まっ待ちなさい!!!!!!!!」

「嫌」

止めようとウズメは武器を投げつけますが

2人と其の部下は簡単に避けて行き

あろう事か見失ってしまったのです……

(しまった!!!)

取敢えず報告をとウズメは上に戻りました





一方この2人は

「ねぇ…確かに行きは迷路だったよね……」

そう流架の言う通り「行き」は「迷路」でした

が「帰り」はただの「大広間」といって良いほど何もなかったのです


「何でか知ってる?「人鍵」さん」

「迷路は「幻覚」やから」

「え?」

「ウチはあそこから動く筈のない存在」

「でも万が一を考えて「幻覚」で迷路を作ったんよ」

「つまり君が動くと幻覚は消える」

「そう」

「成る程な……」

「後1つ聞いていい?」

「何?」

「何で裸?」

「分からない……もしかしたら「鍵」だからかもやけど……」

そう「人鍵」は「人間」の形をした「鍵」

「裸」だとしても何ら不思議ではないが

「コレ」といった資料はない


「何や?さっきから……」

「な……棗?」

「…エロい」
「「はっ?」」

「エロい止め方してる……」

「……分からない」

「成る程……」

「そうか「鍵」だから恥ずかしいとかないんだ……」

「?」

「あまり感情がないのか……」

「「感情」?」

「「!!!!」」

そう「蜜柑」は「鍵」

「人鍵」だから話すことは出来るが

「感情」は無いと言っていい






一方「今井家」では

「申し訳有りません」

「奪われたと言うわけね……」

「本当に…も「良いわ」…えっ!!」

「終わりにしましょう」

「しかし「蜜柑様」は」

「そう…蜜柑は―――――――――」

あの「人鍵」…「蜜柑」は元々蛍の幼馴染

「今井家」は一度没落しかけた

しかし其れが今日まで続いたのは単(ひとえ)に蜜柑のお陰である

あらゆる「鍵」は最初からそうした形で生まれるが

「人鍵」だけは生贄が必要なのだ

生贄になるのは

人鍵を造らねばならなくなったときの当主の

最も大切な存在(ひと)

今回は其れが「蜜柑」だったのだ―――――――――





「離して」

「嫌だ」

「でも…」

「「?」」

「本当に存在してたんだ「鍵」が」

「其れは俺も驚いた」

「でも何であらゆる「鍵」が消滅したと言われてる今でも「人鍵」は存在をしてるんだろう?」

「何か知らねぇのか?」

「…「人鍵」は元々普通の人間なんよ」

「「!!」」

「でも鍵守の家が没落しそうな時に」

「しそうな時に」

「時の当主の大切な人間を生贄にして造るんよ」

「なっ!!!!」

「皆が見るのはホログラムのようなもの」

「そして術を施して話をしたり外の様子を動かなくても探れるようにする」

「其れが「人鍵」」

「だから裸なわけか」

「エッ!!見る所其処!!」

「だから取引には莫大な金額がつく」

「そう言う事やね……」

「そう言えば……」

「「?」」

「あんたら何者?只者では無いわな……あそこまで来れたんやから……」

「うーーーん何て言ったら良いんだろう?」

「義賊」

「……」

「まぁええわ……で……ウチをどうする気?」

「最初は売る予定だったんだが……」

「そんな話聞いちゃうとね……」




「ねぇ……」

「?」

「「鍵守」の家じゃないと生きられないというか…そう言う事ってある?」

「無い」

「じゃぁさ」

「「?」」

「俺等と一緒に暮らそうよ」

「!流架正気か!!」

「如何言う意味さ?棗」

「コレだぞ!!!」

「其れが?」

「理性を保てる自身が?」


しつこいですが「鍵」なので裸です

「あはは……」

(無いな…)

「でもホログラムだから……」

もう「今井家」には帰れないだろうと悟った蜜柑は

「別にええよ……」

覚悟を決めてそう言った

「そう。じゃあコレからよろしく。ええと……」

「蜜柑」

「じゃあ「蜜柑」コレから宜しく」

「しゃぁねぇな…」


これからこの2人と1つの「人鍵」の
へんてこな生活は続いていくのでした


不思議な事に「今井家」も安泰のまま――――――――