君は本当に居たのだろうか

そう思ってしまう瞬間(とき)がある

あんなに側に居たのに

君は居なくなった

僕達の前から―――――――――――――――――――







君は何処(いずこ)へ行けば







過去から帰ってきたあの日

君は僕等の前でこう言った



「ウチは此処に残ります」

そう言った

真剣な眼差しで



「そうか…」

と伯父に当たる人は言った



「自分で決めなさい」

そう言った手前それ以外言えなかったのかと思う



「蜜柑…お前…」



「棗…ウチは……この学園でまだやる事がある」

棗を救ってくれた彼女

一度決めたら聞かない頑固者

だから救われたのだけど…

如何しても納得したくなかった



「佐倉何言ってるのか分かってる!!!」



つい怒鳴ってしまった……



「流架ピョン……心配してくれてるのは判る」



「でも……もう一人救わないといけない人が居る」



「ウチは其の人を救いに行く」



其の人=誰なのか

其れは判る



だって



「佐倉蜜柑」という人物はそういう人物だから……



どんな扱いを受けるか判らない

けど進んでいく



棗の時と同じように

寄れば髪を燃やされていたのに

懲りずに彼女は寄ってきた

棗を「人間」として見てくれる

そして其れはこれからも変わらない筈



何があっても――――――





「じゃっウチは行くね…………」



「蜜柑!!」



「何?」



「必ず戻ってくるのよ私の側に…………」



「というか戻すわ…どんな手を使っても…」



「其れが出来るだけの技術(ちから)をつけて私は帰ってくるから」



「…」



彼女は黙って頷いた





そして向かうべき場所へ向かったのが5年前







「棗」



「何だ?」



「佐倉を本当に見ないね……」



「ああ…………」

そう…

この5年間見ていない



『危険能力系』に移ったのなら

俺の友人が見ている



なのにそれも無い

其れは何故か



理由と思われるものは2つほど挙げられる



1つは「佐倉蜜柑はアリスを失い内密に外に出された」

もう1つは



この学園の何処かに「居る」けど「居ない」

と言う存在となっているか



棗の妹「葵」がそうであった様に―――――



多分後者だろう

あの久遠時校長の性格からして―――


















「ペルソナ」



「何でしょうか」



「雪姫の様子は?」



「変わりなく」



「そうか…………」



「あの娘が私の僕(しもべ)になってから5年か……」



「はい」



「お陰で私も本来の姿に戻り」



「お前もアリスに蝕まれる事も無く」


「……」



「取敢えず良かったと言う事だが」



「そうですね」



「雪姫を此処へ久々に姿が見たい」



「分かりました」



そう言ってペルソナは何処かへと行くのでした



それにしても「雪姫」とは一体……








「雪姫」

其処は校長室のような煌びやかな一室です



「ペルソナ」



「雪姫」と呼ばれた娘


煌びやかな着物を身に纏い

其の髪は茶髪

虚ろな茶の瞳

白い肌…………



そう

「雪姫」と呼ばれたこの娘こそ



「佐倉蜜柑」なのでした



しかし……

其処にはもう

あの太陽のような笑顔はありませんでした…………



一体如何した事か



「校長がお呼びだ」



「分かった」

そして蜜柑はペルソナと共に校長の元へ









「失礼します」



「入れ」



「校長何か?」



「此れと言った用はない……しかしな……」



「しかし……」



「顔が見たくなってな」



「まぁ」



「おいで『雪姫』」



そうして蜜柑は校長の膝元に顔を寄せるように寄っていきました



「そう言えば『雪姫』」



「はい」



「もう直ぐ文化祭の季節だが……」



「そうですね」

「文化祭」



本来蜜柑は生徒なので参加が出来る



しかし「居ない」存在なので其れももう出来ない



「私と一緒に式に出ないか」



「え?でも其れは……」



「大丈夫だろう……ペルソナ雪姫に似合うウィッグを用意しろ」



「はい」



「それだけで誤魔化せるもの?」



「特に後2人の校長」



「何とかするとも『雪姫』の情報は生徒の方にも軽く流しておく」



「分かった……出る」







そして「雪姫」の噂は瞬く間に広まった

勿論「高等部」にも回った





「校長」



「ああ…………」



「もしかしてこれは……」



「おそらく…………」



「幸い日向棗乃木流架共にプリンシバルです」



「そうだな……」



自分では分からないかも知れぬが

あの2人なら大丈夫だろう

あの娘(こ)といつも一緒に居たあの二人なら







「高等部B組」



「棗聞いた?」



「ああ…………」



「何時から居るかは曖昧だけど……」



「賭けてみるしかねぇな」











文化祭当日


「ではこれより開会式を行います」



「3校長と「雪姫」様の入場です」



生徒全員がざわめいた



「雪姫」を見るために



其処に現れた「雪姫」は



銀髪

清楚なドレスを身に纏い

やはり虚ろではあるが

銀の瞳を持った

横にくる姫宮に劣らぬ美女



「これはこれは……」



「棗……」



「ああ……髪と目の色が違うが」



「十中八九佐倉だね……」



「後で念の為行平校長に……」



「そうだね……」



まさかこんな所で出会うとは

しかし

やはり「居た」か



(今が開会式もしくは閉会式で無ければ声をかけたのに……)



そう



祭りの最中



後夜祭の中ならどれほど良かったか



そして



「やはり君は居た」

そう実感したいのだ



なのに



ひどく遠い気が



しないでもなかった――――――――



そして式は順調に進んでいく――――――









「待ちな」



「何の用だい?」



「俺等が用が有るのは其の銀髪の女だ」



「雪姫に何の用かな?」



「そいつの正体」



「5年前に行方知れずになった蜜柑だろう?」



「何のことかな?只大事なことを忘れてないかい」



「彼女は茶髪じゃなかったかな?」



そう



蜜柑は茶髪



そして棗達の目の前に居るのは銀髪

明らかに違うが



「確かに……だが確認する方法は幾等でもある」



「一番手っ取り早いのはアリスを使わせる事です」



「佐倉じゃないと言うのなら」




「アリスをつ「誰?」」



「「えっ!?」」

「誰?」

そう聞いたのは雪姫



つまり蜜柑だ



「おい。何の冗談だ?」



「本当に知らない。貴方達誰?」



「まさか…………」



そう蜜柑はすでに記憶を失っていました



虚ろな目が其の証拠?



だが



だとすれば



どうやって記憶障害に出来た?



「行きましょう久遠時校長」



「そうだな……雪姫」


2人は呆然と立ち尽くした……



まさか記憶喪失になっているとは



しかも彼女独特の話し方もしていない

でも



「佐倉だね」



「ああ……記憶が無いのが何よりの証拠だ」



「必ず取り戻す」



「そうだね」



取り戻そう



あの幸せな日々(とき)を