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「その自信の出処が知りたい」  おおきく振りかぶって 榛名 / 女主人公


「なぁ」
「なに?」

ひょこ、と後ろに顔を向けて、元希が少女に問いかけた。
後ろの席の少女は、そんな榛名に驚きもせずに、机から教科書を出しながら聞き返す。
その様子に面白そうに榛名は笑って、なぁ、と再度問いかけた。
少女は少しだけ眉を寄せて、だから、何?と榛名に視線を送る。
やっと自分へと向いたそれに榛名は満足したように笑って、
大きくもなく、小さくもなく、けれどはっきりとした声で言い切った。

「お前さ、俺と付き合おうぜ」
「・・・・・はい?」

だーかーら、付き合おうって言ってんの。
そういう榛名を少女はまじまじと見返した。
一体この馬鹿は何を言ってるんだと、そんな顔で。
それに気づいたらしい榛名が、なんだよ、と声をかければ、
いや、元希の言ってる意味がわかんない、とはっきりと少女は答える。

「だってさ、お前、俺のこと好きだろ?」
「・・・・・・は?いやあの、いつ私がそんなことを・・・」
「好き、だろ?」
「・・・その自信の出所が知りたいんですけど。」

確かに、そんなことをにっと笑って言われれば、
それが本当である少女にしてみれば反論はできないのだけれども、
それでも精一杯の抵抗で少女が小さく呟く。
そうすれば、俺だからに決まってんじゃん、と笑顔で言い切る目の前の彼には、
そんな言葉は意味を成さないのを改めて実感した。

「お前は俺を好き。んで俺はお前が好き。ホラ、問題なしじゃね?」

それは、それだったら、確かに、そうだけど。
赤くなりながら小さくそうやって返した少女に、
目の前の自信満々で言い切った彼は、今更ながらに嬉しそうに笑った。



野球してない榛名は人一倍子供っぽいと思う。だからこそ困るんだな!






「ムカつくったらありゃしない」  おおきく振りかぶって タカヤ / 女主人公


「ムカつくったらありゃしない。」
「・・・・・すいません。」
「だいたい常日頃からその元希さんは阿部くんの体に痣つけたりとかしててさ、
 それでも阿部くんはその元希さんの球をとりたいわけだから私だって黙ってるけど」
「・・・・うん。」
「けどだからってそれをなんとも思ってないわけじゃないし、
 ただでさえ阿部くんはシニア忙しくてその元希さんと一緒にいるのが多いわけだし?」
「・・・まぁ、うん。」
「それにその元希さんは阿部くんを名前で呼んでて、阿部くんにも名前で呼ばれてて?」
 私なんて名前で呼んだこともなければ呼ばれたこともないのに」
「・・・・・・・え?」
「その上!阿部くんのためにほぼ貫徹して頑張って作ったバレンタインのチョコは、
 お前何チョコ貰ってんだよ生意気なんて言葉と一緒にその元希さんに食べられて!?」
「・・・・・・・・ホント、ごめん」
「・・・〜〜〜っ・・・」
「・・・うわ!?ちょ、ごめ、泣くなよ」
「泣いて、ない・・・っ」
「・・ごめん、ホントごめん。でも、チョコ、すげー嬉しかったし、」
「・・・・・・・・」
「名前のも、・・そう思ってくれんの、嬉しいし」
「え・・・(・・・あ!)」
「(あ、赤くなった。)」
「(うわどうしようなんてこと口走ったんだ・・・!)」
「・・・とにかく。俺は、お前が好きだから」
「・・・うん。」
「お前は?」
「・・・・好き。」
「ん。」


「私今度、その元希さんに喧嘩売りにいこうかなぁ」
「え!?(いやいやいや、マジやめろってお前元希さんのタイプっぽいもん!)」



戸田北時代。中学時代。榛名と阿部じゃなくて、元希さんとタカヤな時代。






「許して欲しい?」  ホイッスル! 藤代・笠井 / 男主人公


「いやホントごめんっていうか」
「誠二さ、許して欲しい?」
「うん!」
「そっか。うん、だったらさ、」

あはは、と顔を引き攣らせる藤代に、少年はにこりと笑う。
それは見慣れたものからすれば、げ、と思わせるのには充分なもので。

「は、はい?」
「もーーーーーーーちょい誠意ってもんを持って謝れねぇの?」
――― っすいません!!!!!」

その笑顔に体を折るくらいに深く礼をしながら謝る誠二に、
あーあ、と、クラスメイトたちは呆れたような視線を送る。
それでも、誰も藤代を助けようとはしない。
こういうときは、確実に藤代が悪いということを学習しているからだ。

「で、今度はなにやったの?」
「い、いや、タク、」
「この馬鹿、俺が貸してやったノートなくしやがったの。」

藤代の言葉を遮るように、少年が不機嫌そうな声で笠井に返した。
その言葉に笠井は、そういえば誠二、この前ノート借りてたよな、と思い返す。
それから、あれ、と思う。
その気持ちのままに少年に視線をやれば、少年は視線を受けて、そ、と返す。

「提出用のノートだぜ?マジ勘弁しろよって感じ。」

少年が思い切り藤代を見ながら言った言葉に、藤代はまた引き攣った笑いを浮かべた。
誰のせいかわかってんのか?という少年の問いに、俺のせいです、と答えて。

「お前今日部活終わったら部屋中探せよ。それから部室も。」
「うっす!」

敬礼のポーズをとる藤代に、今日は寝るのが遅くなりそうだと笠井は苦笑を浮かべた。



犬と猫と、それから飼い主?






「なーんでバレたんだと思う?」 ハリーポッター 悪戯仕掛人 / 男主人公


「さて皆の者。」

グリフィンドールの談話室。
夜も遅いこの時間に、ジェームズが神妙に語りだす。
シリウス、リーマス、そしてもう1人の少年が、ジェームズに視線を向けた。
今日は、レポートが終わらず悪戯に参加しなかったピーターはいない。

「今日のこのメンバーは、決してミスが生まれるようなメンバーじゃあないはずだ。」
「暗にひどいこと言ってない?」
「まぁ事実っちゃ事実だろ」
「全くだ」

ジェームズの言葉に、各々で返して、各々で目の前のカップに手をつけた。
今日の悪戯は、失敗した、というわけではない。
けれど終わった後で、フィルチに見つかるのは全くの予想外だった。

「・・なーんで、バレたんだと思う?」

そう、あのタイミングは、騒ぎに駆けつけたというわけではない。
明らかに、騒ぎが起こるよりも早く向かってきていたタイミングだ。

「・・・そんなの、決まってんじゃねぇか。」

シリウスが、苦々しげに呟く。
そう、そんなのは、決まっていた。判りきっていた。

「・・・次のターゲット、決まったな」

ニヤリと笑って少年が言う。
それに、ジェームズ、シリウス、リーマスは笑い返す。

「決行はいつにする?」
「早いほうがいいな。明日は?」
「あぁ、そうしよう。思い知らせてやろうぜ」
「よし、それじゃぁ、どんな屈辱的なものにしようか ―――

悪戯仕掛人たちの夜は、まだ、終わらない。



悪戯仕掛人たちの深夜会議。(「おいリーマス、砂糖は3杯までだぞ」)






「ムカつくったらありゃしない」  おおきく振りかぶって 花井 / 女主人公


「あーもーホントふざけるな!」

ぐっと手に持ったクッションを壁に投げつける少女に、その部屋の主である花井は溜め息をついた。

「わかったからさ、落ち着けって」
「落ち着け!?落ち着いてられる場面じゃないでしょ!?」

諌めるように言えば、ガーーーッと噛みつきそうな勢いで返される。
なんで彼女と部屋で2人きりのこのときに、
他人の話題でこんなに喧嘩腰になってるんだろうと花井はもう一度息をついた。

話の発端はこうだ。
花井の目の前で怒りを露にする彼女の友達には1つ上、2年生の彼氏がいた。
その彼氏は、彼女もいて、さらにバスケ部の新部長にで言うことナシ!かと思いきや、
彼女がに気持ちが向きっぱなしになったためかバスケの調子が悪くなり、
浮ついた気持ちでバスケはできないと彼女の友達を振ったらしい。

「意味がわかんない!何その理由!」
「あーまぁなぁ・・・」
「そりゃ立場もあるだろーけど、あの子の気持ち考えてんの!?」
「んー・・・でもまぁ、気持ちも半分くらいは・・・」

わからなくもない、と続くはずだった花井の言葉は、彼女の睨みの前に消えた。
いや、と花井の顔が引き攣った笑いを浮かべれば、
彼女はその睨みの顔から、泣きそうに顔をゆがめる。
花井が目を見開くのとあまり変わらないタイミングで、梓は、と、彼女が口を開いた。

「梓には、気持ちがわかるの?」
「え?」
「部長だから?みんなをまとめなきゃだから?浮ついた気持ちで、野球、できないから?」

彼女の言葉に、花井はまじまじと目の前の少女を見る。
そうすれば、彼女は花井から視線をずらして、私には、と、続けた。

「全然、他人事じゃ、ないんだよ?」

少女の声が、肩が震える。
花井は無意識のうちに、彼女を抱きしめていた。
自分の肩に顔を埋める少女をぎゅっと抱きしめて、頭のどこかで思う。
その彼氏さんは、すげぇな、と。
俺には絶対に、このぬくもりを自分から離すことなんて、できない。



お題かぶったけどね!しかもおお振りでね!でも気にしない!(すいませ…!)






「青春って感じ」  家庭教師ヒットマンREBOEN! 山本 / 女主人公


「あれ、なにやってんだお前」
「あれ。おっす、山本」

見慣れたクラスメートの姿に山本が声をかけたのは、部活中だった。
別にいておかしいということではないけれど、いるのが珍しいとはいえる少女の姿に、うっす、と言葉を返す。
もともとサバサバしていてどちらかといえば男子のノリなこの少女は、
日頃からつまらないことで笑いあうような友達で。

「いやー、やってんね、野球部」
「そりゃーなぁ。大会近いしよ」
「へー。頑張ってくださいよ」

うんうんと頷く彼女を前に、おう、と山本は笑う。
そうすれば、少女もそれに笑い返して、それにしても、と言葉を続けた。

「なんかアレだね、いいなぁこういうの。」
「こーいうのって?」
「なんていうの?青春って感じ。」

野球部とかさー、いかにも部活!て感じじゃん?
そうやって笑う少女に、まぁ確かにな、と山本も納得する。
坊主が多いからかなんなのか、野球といえばスポコンなイメージが強いのは確かで。

「あ!じゃぁさ、アレやってあげよっか?」
「アレ?」
「そう、アレー。」

ちょうどホラ、山本って、武君だし。
笑いながら少女が言った言葉に、山本は首を捻る。
そうすれば、ふふんと少女は笑って。

「たっちゃん、私を甲子園に連れてって!」



普通に「おう!」とか言いそうな山本。






「何がしたいの?」  BLEACH 乱菊 / 男主人公


「・・・・・・何がしたいの?」
「ん?何がしたいんだろーな」
「そういうの、一番迷惑ね」
「そりゃ失礼。でもさ、ホラ。君だって、嫌がっちゃいないし?」
「・・・嫌がるとか以前の問題だからでしょ。さっさと退いて。」
「そう?君は副隊長に任命されたほどの女傑だろ?俺をどかすくらい簡単だ」
「そうね、あなたが断ったから、私に回ってきた任命でなければね」
「痛いとこをつくな」
「思ってもいないこと、言わないでくれる?」
「思ってるぜ?まさか、君が了承するなんて思わなかったよ、乱菊」
「・・・・・・・・」
「俺は、君がいるこの隊から抜けたくなくて断ったのにな」
「・・・・・・・・」
「あぁ、そうだ。さっきの質問に答えようか?」
「・・・さっきの?」
「俺は何がしたいのか ――― そんなの簡単だ。」
「・・・・・」
「今ちょうど俺の下にいる大切な人を、どうにか俺のものにしたい、って思ってるよ」


「・・・・・・(あぁなんだかどうなのかしらアレって)」
「乱菊さんってばー。話しちゃいましょうよ、彼との馴れ初め!」
「・・何か思い返してたら、頭痛くなってきたわ・・・」
「え?」
「桃、あんたもあんな男には気をつけなさい」
「えぇ!?」



似たような話書いたけど乱菊さんだとこうなってしまう不思議。






「鈍すぎ。」  ホイッスル! 郭 / 女主人公


「っていうか、鈍すぎ。」
「そんなことないし!」

英士が呟いた言葉に、隣を歩く彼女は即答する。
そうすれば、鈍いよ、という言葉が返ってきて、何となく、言葉を詰まらせた。
それはさっきの彼の言葉だろう。
好きだと、告げてくれた彼の言葉の前後に紡がれた言葉。
本当に鈍いよね、と、何度も繰り返し言われた言葉。

「・・・私、そんなに鈍くないもん・・・」
「鈍いんだって。じゃなかったら、とっくに気づいてもいいはずでしょ」

呟く彼女に、追い討ちをかけるように声をかければ、
だって郭君がわかりにくいんだよ、と、言葉が返ってくる。
それを聞いて、内容よりも先に、もう少ししたら名前で呼んでもらおうということを考えた。
さすがに、30分前に付き合いだしていきなり、なんてことはできないだろう、
自分が好きだと告げたこの少女には。
そう思って、自分の横で揺れていた彼女の手を取る。

「・・え?」
「わかりにくいんでしょ?なら、もっと行動で示そうと思ってね」

にっこり笑っていってやれば、彼女は顔を真っ赤に染め上げる。
もちろん自分だって緊張していないわけがないけれど、
ここまで反応してもらえるとどこかに余裕が出てくるものだと英士は思う。

「どこか、寄り道でもしていこうか?」

鈍い君の手を、こうやって取れるようになった記念に。



初々しいはずなのに初々しくない気がするのは何故






「これで終わりとか言わないよね勿論」  BLAECH 一護 / 男主人公


――― あれ。」

後ろから聞こえた男の声に、一護はバッと振り向いた。
そこには、黒い死覆装を着た、今まで会った中では比較的穏やかそうな死神が1人。

「こんにちは。初めてみる顔だな。目立ちそうなのに。」

一歩、一護へと向かってくる青年とも、少年とも言いがたい彼は、
左腕に数字の書かれたものを巻いている以外は他の死神と変わりないのに、
それでも彼から放たれるものに、一護の頬に1つ、汗が流れた。

「何番隊所属?俺のこと知ってる?あぁそれとも、」

穏やかに笑って、投げかけていた一護にとっては確かな肯定が出来ない質問をとめて、
真っ直ぐに彼が、一護の目を見る。
その眼に飲み込まれそうになる感覚に、一護がこくりと唾を飲んだ。
その瞬間。
一護の視界から、真正面にいたはずの彼が、完全に消えた。

「え ―――
「旅禍の、黒崎一護?」

真後ろ、それも、至近距離から聞こえた声に一護が距離を置こうとするよりも早く、
彼は一護の体ごと斬月を押さえ込む。

「ッ・・・!」
「あれ、これで終わりとか言わないよね勿論。」
「てめェ・・・っ!」
「で?何しに来たんだよ。ルキアから力奪っといて。」

とてもさっきまで穏やかに笑っていたのと同一人物のものとは思えないような
ひやり、と凍えるような鋭い声音と瞳に、
そして彼から紡ぎだされた名前に、一護は驚いたような目を彼に向けた。
その視線を受けながら、けれどその冷たさは変えないままで、彼は言葉を続ける。

「ルキアは優しいから、こんなこと、思ってもねぇかもしれねぇ。けどな。
 お前のせいでルキアが処刑されんのは、事実なんだよ。」

ギリ、と、一護を押さえ込む彼の腕の力が強まる。
顔を歪める一護の姿は、彼にとって最早映っているだけだった。
彼の頭の中では、先日会いに言ったルキアの表情が、途切れることなく流れる。

あいつのせいではない。

そう言ったルキアは、確かに彼が知っているルキアそのものだったけれど、
ならばなおさら、どうしてルキアが、という気持ちが耐えることもなく。

なぁルキア、俺がこいつを殺せば、お前にあの力は戻るか?

そう考えながら、彼は空いている手を自身の斬魄刀に触れさせた。



以前書いた恋次たちと幼馴染、現副隊長な主人公。






「好きになりたいよ。」  おおきく振りかぶって 泉 / 女主人公


「おまえもさ、馬鹿だよな」

吐かれた言葉に、少女は、は?と、声の主に視線を向けた。
斜め後ろに座る声の主、泉が机につっぷして、顔だけを彼女に向けていた。

「いや、なによイキナリ」
「思ったから言っただけ。」
「・・・三橋と田島が映ってきたんじゃないの?」

お可哀想に、と少女がわざとらしく手で口を隠せば、うぜぇなお前、と、泉が言葉を返した。
馬鹿とかいったのはそっちでしょ、と言いながら、彼女は机の中の教科書を取り出した。
彼はなんというか、毒舌だと思う。
けれどそんな彼だからこそ、同じ野球部のあの三橋と田島を抑えていられるんだろうなぁとも、思う。

「だって、そうじゃん」
「だから、なにがよ」
「俺を好きになっとけば良かったのに。」

泉が、何でもないような、いつもの声と言い方で、
けれど彼女にだけ聞こえるように発した言葉に、少女の動きが一瞬揺れる。
それを見逃さずに、そして、ちょうど今9組の前を通る彼に視線をやって、泉は口を開く。

「あいつじゃなくてさ、俺を。」

そうしたら、少なくとも1つは、ベクトルが向き合うだろーに。
いつもの口調で言う泉に、彼女は泉には見えない位置にある手を痛いくらいに握る。
けれどこんなの、痛いのうちには入らない。
自分の傷に、泉の傷に、比べれば。

「・・・・・・好きになりたいよ。」

あぁ、彼の心に、耐え難い傷がまた1つ、



泉はきっと頭がよくて意地悪いけど、すごく優しい子






「あっち向いて、」  BLEACH 海燕 / 女主人公


「・・・海燕さん。」
「・・・・・・・なんでしょうか。」

2人きりの部屋で、ポツリ、と、彼女が海燕の名前を呼ぶ。
そうすれば、少し離れたところで、彼が恐る恐る、と言ったように声を返した。

「私、言いましたよね?」
「・・・・悪い。」
「これで何度目ですか?」
「・・・・・・・悪い。」

つい2ヶ月前に婚姻した新妻の言葉に、夫である海燕は謝罪の言葉を紡ぐ。
それは、結婚前にした、約束を破ってしまったことへの謝罪だった。
しかしそれは、副隊長を務める死神である海燕には容易に守れるものでもなければ、
彼の性格からして、きっと無理だろうことも充分に予測される約束で、
妻の彼女自身、そのくらいのことはわかっていた。
けれど、言わずにはいられなかったのだ。

「・・・・あっち向いて、」
「え?」
「向いて、ください。あっち。」

彼女の言葉に聞き返す海燕に、珍しく海燕を睨むようにして言われたその言葉に、
お、おう、と答えながら、海燕は言われたように、指差された場所を向く。
そうすれば、彼女に向けた背中に、温かい体温が触れた。

「どうし・・」
「・・約束を守れないことは、わかっていたんです」

どうした、と、かけようとした声に被さるように言われた言葉に、海燕が口を閉じる。
言葉を返す代わりに、自分の前で重なっている妻の小さな手に、自分の手を重ねて。

「・・でも・・・知っていてほしかったんです。心配、していること」

した約束は、結婚して半年は、怪我をしないで欲しい、というものだった。
率先して先頭にでる海燕のいつもの怪我状況から言えばそれは到底無理だろうことで、
けれど、知っていて欲しかった。心配で心配で、しょうがない、こと。
それをおもって、ぎゅ、と、彼女の手に力がこもる。
と言っても、死神ではない彼女の力ではあるが、それでも海燕には効果は抜群で。

「・・・・・おう。ありがとな。」

ぎゅ、と、彼女の手を包んだ彼の手には傷があって、けれど、温かく。
くるりと回って彼女を閉じ込めたその腕に、彼女はそっと目を閉じた。



原作無視!海燕さんはよいおとこだ






「だからいい加減その口を閉じろ」  ホイッスル! 設楽 / 女主人公


「ほ、ほんと、に!?」
「ホント。」
「ホントにホント!?」
「だから、ホントだって。」
「・・・・・兵助が許してくれるの、初めてだね」
「そーだっけ?(そうだけど)」
「やったー・・・!」
「・・すっごいニヤけてるぜ?そんな嬉しいか?」
「もちろん!だって、兵助はいつもかっこいいからさ」
「・・・・は?(え、なに)」
「だから、サッカーしてる兵助は、もっとかっこいいでしょ?」
「・・・いや、あのさ、(っていうか何こいつ可愛いんだけど)」
「そっかぁ、やっと見れるんだ。ずっとね、見にいきたかったんだ」
「・・・もういいから(そういわれるとなんていうかもうさ、)」
「どうしよ、すごい楽しみ!」
「ホント、やめろって(つかもうホント無理だから)」
「やーだー。」
「・・・のやろ。(だから、可愛いっつーの!)(ちゅ)」

「・・・・うえ・・・?(い、今、ちゅって!)」
「・・・だから、いい加減その口閉じろ。(あー、真っ赤だよこいつ。しかも多分俺もだ。)」



設楽くんはかわいいな!にしたってバカップルだな!






ここに座れば、隣には君がいたはずなのに  Harry Potter シリウス / 女主人公


「・・・・なんで、いねぇんだろうな。」

ポツリ、と、長い黒髪の男が呟いた。
今は名乗れるわけではないけれど、あぁ、だからここにはいないのだろうか。
そう思って、けれどそんなもの現実逃避でしかないことなどわかっていて。
そっと屈みこんで、その石に刻まれた名前に触れた。

「・・・リーマス、か」

そもそもここを知っている数少ないメンバーの中で、残っているのは自分を外して2人。
1人は、こんなこと、するはずもないだろう。
今だってきっと、あの薄汚い鼠の姿で隠れているに違いない。
もしこれをしたのがあいつだとしたら、俺はここを掘り起こして、こいつをもっと、綺麗なところへ連れて行く。
けれど、それはないのだろうと、彼は本能的に思う。
だってここは、今でも、こんなに綺麗だ。
彼女の、彼にとって唯一の彼女の名前も、薄れることもせず、欠けることもなく。

「お前は昔から、待つの、嫌いだったもんな」

俺だってそれは言えることだけど、俺は、ちゃんと来たんだぜ?
そうやって笑ってやったところで、浮かぶ笑みなんて多寡が知れていて。

「・・・ごめんな。長い間、待たせて。」

それでもきっと、お前もここで待ってたんだろ?
そんな確認、今更過ぎて笑えないけれど。

「・・・・・・・・・おまえは、いないんだよな。」

もう戻れない。
きみがいた、場所。



ヒロインいなくてごめんなさい。でも愛はありますよ!






素晴らしき学園生活  おおきく振りかぶって 阿部 / 女主人公


「・・・あれ。」

今日、私服だ。
そう思った私はどうも素直だったらしく、思ったままの言葉が口から飛び出した。
それからその声に反応して、彼が、くるりと振り返った。(・・・!!!)

「あー、昨日、ズボン水谷に汚されてさ」
「え、それは災難」
「だろ?あのクソレフト」
「(でた、クソレフト・・)でもいいね、そのジャケット」

阿部くんて黒、似合うよね。そういったら、さんきゅ、と阿部くんが笑った。
うわぁ、ちょ、っとまった(だって今話してるのだったいっぱいいっぱいで)

「おまえも黒ジャケット持ってるよな」
「うん、やっぱ便利だもんね。うちのクラス、黒率高いし」

言えば、だよな、と言ってから彼を呼ぶ水谷くんに、なんだよクソレフト、と返す阿部くん。

(・・・後ろ姿も、かっこいいな)(あぁもうやばいなぁ)(だって、だって)

うっわヒド、謝ったじゃん!と嘆く水谷くんがちょっと羨ましいなぁとは思うけど。


(・・・話せちゃった)(今日、学校に来た意味があったよ!)



あんまり女の子と話さなそうな阿部。






暑い午後の揺れる心情  おおきく振りかぶって 花井 / 女主人公


ポン、と、後ろから音が鳴った。
あれ、なんだろ、と思えば、そこには白いボール。
あぁ、ここ、野球部の裏だもんなぁと思うのと同時に、おーい、という声が響いた。

って、え?今の声、は。

「悪い、そこのボールとってくれるか?」
「あ、は、はい!」

思わず固まった体を動かして、ボールへと足を動かした。
あぁどうしよう、せっかく初めて会話もどきが出来たのに。
いつもはクラスで田島くんや泉くんや三橋くんと話してるのを見るだけなのに。
そう思いながらボールを取って、な、投げればいいー?と聞いた。

「投げれる?」
「大丈夫!」

だって私、スポーツテストのボール投げ、満点だからね!なんて思いながら、
フェンスを越えるようにボールを投げた。
そうすればそのボールはしっかりと、待っていた花井くんのグラブへと収まって。
(・・・うわぁ。今、とってくれた)

「ナイスボール!ありがとな」
「ううん!・・が、がんばって、ね、花井くん!」
「おー、さんきゅ・・って、俺の名前?」
「(!やば!)あ、えっと、・・ち、違った?」

違うわけがないよ苦し紛れにも程がある、と内心で1人ツッコミを入れる。
けれど、や、合ってるよ、と笑う花井くんに、そんな思考はすぐに途切れた。

「そっちは、9組の・・・」

紡がれた言葉に、眩暈がした気がした。


(こんなにフラフラしてるのは、日差しのせい?)(ううん、こんなにふわふわしてるのは、)



花井は無難にモテるやつ。






図式にすれば、それはひどく簡単なこと  おおきく振りかぶって 田島 / 女主人公

「なー!」

田島くんが私の名前を呼んだ。

「なにー?」
「あのさ、現文のノート貸してくんねぇ?」
「いーよ。はい。」
「さんきゅ!」
「ううん。(落書きしてない・・はず)」

田島くんが、私の名前を呼んだ。

「はい!コレ書けたー!」
「あ、はいはい。おつかれー」
「うん、つっかれた!俺勉強はムリー!」
「あはは。あ、ノート見難かったでしょ?ごめんね」
「え、そんなことなかったぜ?」
「・・そ?ならよかったー。でも、泉くんのとかのほうが見易かったと思うよ?」
「だって、泉のは三橋が借りてんだもん。それに俺、お前の借りたかったし」
「え?」
「俺、お前がスキだからさ!」

「・・・・・・・・・ん?」
「ん?聞こえなかった?」
「や、聞こえ、た、けど・・・」
「そっか、良かった!なぁ、お前は?」

田島くんが、私の名前を、呼ぶ。
少しだけみんなとは違う声で。


(彼のベクトルの向きは→で)(私のベクトルは←で、)(それってつまり、×ってことで)



田島はすてき。なにがってすべてが








愛さえあれば。  D.Gray-man ラビ / 女主人公


なぁなぁ、と、ラビが少女に話しかけた。
今日で何度目かもわからないその行為に、少女は半分呆れながら、なに?と聞き返す。
そうすれば、ラビはいや別に、と返した。
これも、今日だけでも何度目かのこと。

「ねぇラビ、それって喧嘩売ってるの?」
「え?いやいや、何で?」
「だから、こっちが聞きたいの。」

なんで何回も何回も邪魔するの、と、手にあった本を閉じた少女に、
ラビは至極満足気に笑う。
そのラビを見て、少女は理由を理解してもう一度溜め息をついた。

「読んで欲しくないなら、そういえばいいのに」
「通じるといいと思ったんさ」
「すぐにはわからないよ」
「でも、わかった」

それは今のラビがわかりやすかったからで、と言おうとした少女の唇は、
けれど開いてから少し止まって閉じられる。
その理由は、綺麗すぎるくらいに綺麗に笑った目の前の男のためで。

「だって、俺とお前の間には、ちゃんとあるだろ」

その男は、トン、と、自分の左胸の指で叩いた。


(うるさいな、そんなのわかってるよ)(だからそうやって笑わないで、心臓が破裂しそう)



クロちゃんのあたりのラビがすごく好きだったんですよ・・!








嘘が下手な君の言い訳  ホイッスル! みゆき / 男主人公

「えっと、だから」

そう言って、俯きながら、それでも、だから、と、みゆきが言葉を紡いだ。
その言葉をみゆきの真正面で受け止めながら、
けれど助け舟を出そうとはしない彼氏を前に、みゆきの言葉がだんだんと小さくなる。

「だか、ら、あの、風祭先輩とは、たまたま会って」
「俺はたまたま会った先輩と一緒に買い物、なんて話にはなんないけど」
「っだから・・それは」

言いよどむみゆきに、少年はふぅ、と1つ息をつく。
そうすれば、ビクリと肩を震わせたみゆきに、このへんが潮時かな、と少年は思った。
もう、全部わかっているのだ。
このみゆきの部屋の隅においてある紙袋の中身が誰のためのものなのかも、
それが綺麗にラッピングされて、Happy Birthdayというカードが添えられている理由も。
明日誕生日を向かえるこの少年には、全て。

「俺ってさ、愛されちゃってるよなぁ」
「・・・・え?」

少年の突然の言葉に、みゆきが泣きそうだった顔を不思議そうに変えてあげた。
そうすれば、少年はにっこりと微笑んで。


(だってさ、可愛いじゃん)(嘘もつけてなければ、言い訳なんて出来てもないけど)(でもそれだって俺のため)



年上、かなぁ?シゲと仲良さそうな主人公だとおもわれます。



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