log 2006 1 - 4

世界を照らすランプ  Harry Potter ジェームズ / 女主人公


「・・・どうするの?ジェームズ」
「さぁ、どうしようかね・・・ほら、これ」

ジェームズの言葉のすぐ後に、ぽわ、っと、光が生まれた。
はい、と渡されたランプに入った光は、小さなものではあるけれど、光には違いなく。
そして、希望にも、違いなかった。

「リリーは?」
「ハリーを寝かしつけてるよ」

問いかけに答えるように、ジェームズが彼女を振り返る。
振り向いた笑顔に、彼女は眉を寄せた。
この笑顔は、見たことがなかった。
けれどどういう意味かなんて、彼の気持ちなんて、わかってしまう。
それもそうだ、ホグワーツに入学したときから、今まで、ずっと親友だったのだから。

「ジェームズ」
「なるほど、僕たちは間違っていたわけだ。でも ――― ほら、やっぱりシリウスじゃあない」
「・・・・・・少しだって疑ってなかったくせに」

彼女の言葉に、ジェームズが笑う。
もちろんさ、と。
そうして、ジェームズの腕が、彼女の背中へと伸びた。
こうして抱きしめたときの身長差は変わっていないのに、
けれど抱き心地と体温は変わってしまった気がして、ジェームズは腕の力を強めた。

「・・・ありがとう」
「・・・・・どうして?」

ジェームズの心からの感謝の言葉に、ポツリ、と、彼女が言葉をこぼした。
その声の震えに、掠れに、ジェームズは愛おしそうに微笑む。

「絶望を見ずに済んだよ」

きっと一番の絶望は、シリウスに裏切られることだった。

ぎゅ、と、彼女が、堪えるかのように手を握る。
その手に握られたランプの光が、じり、と、消えた。



迫るヴォルデモートに覚悟を決めるジェームズ。そんな中でシリウスに感謝してると、いい






どのみち空へ落ちるなら  BLEACH 更木 / 男主人公


ガキン、と、金属の割れる音が響く。
耳につく音だ、と、その少年は思った。
その音はひどく一方的だと。
響きあうこともない。響かせることもない。ただ一方的な結果だと。
そんなことを思いながら、少年を視線を折れた刃から相手へと向けた。

「あーあ、もう少しいい刀使っとけばよかった」
「全くだ。生憎俺も1本しか刀はねぇもんでな」
「まぁ、そうだろうねぇ」

動じることもなく暢気に言い放った少年に、更木の口の端が上がる。
ここに来ても、なおのこの態度。
そして、塞がることのない霊圧。
にやりと笑いながら、ここで殺すには惜しすぎるな、と思う。
その考えのままに、けれど、更木は少年の首元へと刀の切先を向けた。

「どうだ?命乞いでもしてみるか?」

そんなことをされたら、興ざめもいいところだけどな、と思いながらの更木の言葉に、
少年が笑い返して、そして、一歩足を前へと踏み出した。
そのために切先と触れた首筋に紅が走る。

「残念だけど、俺、結構満足してんのよ。死ぬなんて人生の一部だしなぁ」

好きなだけ戦って負けたんだ、悔いがないわけでもないけど、別にいい、と。
そうやって笑う少年に、更木は今度こそ、その強面でにやりと笑う。
ピッと引かれて、そのまま鞘に収まった刀に、
少年は怪訝そうな顔をしながら口を開いた。

「・・・なに?」
「どうせ死ぬなら同じだろ。そんなら ―――

ちゃりん、と、肩で、羽織の皺に乗っていた鈴が音を立てた。
目を見開いた少年の横を、『更木』の風が通っていく。



そうして彼は死神になる。






その考えがファンタスティポ  HUNTER×HUNTER ゴン・キルア / 男主人公


「いやだからさぁ、それはどうかと思うわけよ」
「だからってこれが一番安全なルートだろ?」
「そらな。けどこれじゃぁ時間がかかりすぎる」
「確かにな。でもある程度は慎重に行くべきだと思うぜ」
「・・・ゴン、お前はどう思う?」
「あー馬鹿、ゴンに聞いたって・・・・(つーか聞いてないよきっと)」
「・・・あ、え、・・・ん?」
「・・・(・・・あープスプスいってら)ゴン、俺とこいつの話、どこまで聞いてた?」
「・・・えっと・・路地を抜けてから34番ルートの地下を突っ切って・・とか」
「バーカ、そりゃ30分近く前の話だっての(ほらな)」
「(ごめんキルア、話が逆戻りだ)なぁキルア、俺はやっぱこっちがいいと思うんだけど」
「(気にすんな)そりゃ、こっちのほうが確立は高いさ、でもリスクが多すぎる」
「・・・ねぇ、俺思うんだけど」
「ん?」
「なんだよ、ゴン」

「やっぱり、正面突破がいいよ!」

「・・・・・・・・・・・・・オイ、ゴン」
「・・・・・・今までの俺たちの話、本当に聞いてたか?」



「と、とちゅうまではきいてたよ!」






僕の小さな魔法使い  鋼の錬金術師 エドワード / 女主人公


「なぁっ、姉ちゃん!」
「あらエド、どうしたの?」

だだだ、と、階段を下りてキッチンへと入ってきたエドに、姉である少女が笑う。
まだ10歳にも満たない少年とは大分年が離れている姉に、エドもアルもとてもよく懐いていた。

「今さ、錬金術成功したんだ!」
「すごいじゃない!何を作ったの?」
「あ、いや!アレは練習で、これからが本番!」

笑顔を浮かべて、けれど思い出したように顔を引き締めた弟に、少女はふわりと笑う。
意地っ張りなエドも、素直なアルも、可愛い弟だ。
そんなことを今更に思いながら、リビングへと入り自分を手招きするエドに、
出かけている母の代わりに作っているシチューの火を消して、リビングへと向かった。

「何を作るの?エド」
「ん、出来るまで内緒!」

言いながらエドが、普通の折り紙とは少し違う色紙の束をテーブルへと置いた。
あぁ、最近新聞が溜まってなかったのはこれの練習かな、と思いながら、
彼女は色紙とは違う白い紙へと練成を書いていくエドを見つめる。
自分は錬金術には興味もないし、やろうとは思わない。
けれどこのエドと、そしてアルは、違うようで。
可愛い弟たちには、辛い思いをさせたくないと思う。
どうかどうか、幸せになって欲しいと。

――― よし!姉ちゃん、見ててな!」

書き終わったらしいエドが、顔を上げて自信があるような笑みを浮かべた。
その笑顔に笑って返して、少女はその練成の上に置かれた色紙を見る。
そうすれば、ドン、とエドがその紙の上に手を置いた。
そして ―――

「できたッ!」
「・・・わ・・・」

そこには、色紙の束に代わって、1輪の花があった。
どうやら本物ではない、きっと、色紙から出来た花で、
けれど色紙を折ったものよりもリアルな、本物に良く似た春の花だった。

「姉ちゃん、この花好きだろ?だから、春まではこれ見ててよ」

エドがにかっと笑って言う。
そんな弟に、彼女はふわりと、心からの笑みを浮かべた。

「ありがとう、大切にするわ」



エルリックさん家はほわほわした姉がいてもよさそうな感じ






天空船の行き先  ホイッスル! 椎名翼 / 女主人公


「・・・・・そっか」
「・・・反応薄くない?」
「何となくは、思ってたから」

行くのかなぁ、って。
そう彼女が言えば、翼は、そっか、と言葉を返した。
うん、と翼に返してから、少女が空を見上げる。
冬の空はとても澄んでいて、だからこそ今は悲しくなった。
前は杞憂だと思うこともできた ――― 最近は出来なかったけれど。
途中でそう思い直して、少女は翼へと視線を向けた。
ずっと少女を見ていた翼は、もちろんそれに気づいて、なに?と声をかけた。
その声がいつもよりも優しくて、少女はふいに泣きたくなる。
だって、それはつまりそういうことだ。

「どのくらい、向こうにいるの?」
「・・・とりあえず、今は先のことは考えてない。できるだけあっちでやりたい」

少し視線を逸らしてからの、けれど真っ直ぐな翼の言葉に、そっか、と、少女がまた返した。
自分の夢へと向かって、スペインへと飛んでいく翼。
止めることなんてできないと思う。とめたくもないと思う。けれど、けれど。

「・・・・・・・・・・がんばって、ね。つばさ」

ふわ、と、彼女が笑みを浮かべた。
笑えているのだろうかと思う彼女の内心とは裏腹に、綺麗な笑みを。
その笑顔を見て、翼は言葉を止める。
着いて来てくれなんて、待っていてくれなんて、自分が言えることなのだろうかと。
けれど、簡単に諦めることなんて出来ない。夢も、この目の前の少女も。

「・・・ねぇ、話は、もう1つあるんだ」

同じところを見ていたいと、行き先は同じがいいと。
そう願ってしまう自分は愚かかもしれないけれど。



もう僕たちは、いろんなことを考えられるようになったから(なってしまったから?)






それは君との約束でした  BLEACH 一護 / 男主人公


そいつは、元から変わったやつだったんだと、思う。

「なー、一護、食べる?」「おー」
「ぷっ・・・」「・・・・・・・なんだよ」
「苺を食べる一護!の写真ゲット!」「ッんのヤロ・・・!」「うっわ、暴力反対!」

けれどそいつといるのが楽しかったのは事実だし、
なんだかんだ言っても俺はそいつが好きだったわけで

「なー、一護」「んだよ。言っとくけどその苺は食わねぇぞ」
「あら残念」「てめぇまたそのつもりか!」「ぎゃー!待て待て絞まってるからこれ!」

そいつがいることは、まぁなんというか、俺にとっての当たり前で。

「なー、一護」「・・・・・」
「うわ無視?ひっでーなァ、俺ヤンキーになっちゃうぞ」「なんでヤンキーだ!!!」
「あはは、いや、なんないけど」「・・・・・・・・・・・・・・」
「はいはいはいはい、眉間に皺がよってますよー。」

そうやって笑ったアイツが、お前が笑ってないと俺も心配なんだよ、なんて、
そんなぱずかしいことを、いたって真面目に言うもんだから。
どうした、と聞けば、いや、なんにも、と返ってきたって信じられるはずもなくて。

だから、かもしれなかった。
次の日、そいつは俺の世界から消えた。
笑ってろよ、なんて言葉と、気に障るくらいの穏やかな笑顔を残して。

「・・・・・・・・・・一護」

アイツが死んだとき、そしてソウル・ソサエティに向かったとき、俺は決めていた。
アイツに会ったら、とりあえず殴って、怒鳴って、謝らせて。
それから嫌になるくらいの笑顔で笑い飛ばしてやる、と。
なのに、畜生、この胸の痛みはなんだ。震える手はなんだ。ぼやける視界は、なんだ。

お前にそんな満面の笑みをされちゃ、意味がねぇんだよ。(あぁそれなのに嬉しい俺は)



願いに願った君との再会(たとえそれが、死神としてでも)(俺は君の味方だ)






それは残酷なやさしさ、そして世界の真実  最遊記 三蔵 / 女主人公


「人を殺したことは、ないのかしら」

つい今し方、三蔵の目の前で1つの命を消した女が、そう呟いた。
その言葉に、半ば呆然としていた三蔵は、キッとその女を睨む。
三蔵になったばかりの、まだ少年といっていい年齢の彼に、その女はあら、と笑った。
その笑顔は少しだけ困ったような、けれど、その女と同年代の女が浮かべるような笑みと目に違いはなく。
そのことに、僅かに眉を寄せた三蔵に、ごめんね、嫌味じゃないのよ、と彼女が言葉を紡いだ。

「ただ、その銃、護身用にしてはしっかりしてると思ったから」

その言葉に、三蔵は言葉を詰まらせる。
それは確かにその通りで、そう、これは、人の命なんて簡単に奪えるもので、
そして三蔵自身も、そのために持っていたもので。
銃へと視線をやった三蔵を、彼女はかがみこむようにして正面から見つめた。

「人が死ぬのを見るのは、初めて?」

その言葉に、ビクリと体が震えたのを、三蔵は感じた。
彼女に言われたその瞬間が、つい先日の出来事だったからか、
いや、きっと、何年経ってもあの光景は忘れないのだろうと三蔵は思う。

――― 、いや・・」

その言葉に、女は、そう、と、また困ったような笑みを浮かべた。
その笑顔に、この女は、本当に今さっき、人を殺したのだろうかと思った。
あんなにも、あっさりと。こんなにも、あっさりと。

「ねぇ、 ――― やらなければやられるって言葉、知ってる?」
「ッ!!」

彼女の言葉に、三蔵は反射的に顔を上げた。
そうすれば、近距離にある真っ直ぐな瞳とぶつかって、三蔵は思わず体を引く。
その年相応らしい様子に、クスリと笑ってから、彼女は大丈夫よ、と、立ち上がった。

「この人たちの命は、私が背負う。」

そのときの三蔵には、まだ解らない言葉を言って。
けれど、ギリギリまで、三蔵を耐えさせた言葉を言って。

その人を殺した女は、柔らかく笑った。



三蔵が悶々としてた頃。年上の、つよいひと。






「いまさらでしたか」  ホイッスル! 三上 / 女主人公


「・・・・なにしに、来たの?」
「お言葉だな」

ニッと笑う三上に、ウエディングドレスをきた彼女は、呆然としていた顔を歪めた。
それは三上を睨むためではない。ただ、耐えるためだけの仕草。

「・・どう、して、いるの」
「見たんだよ、招待状」
「だ、って、亮には、送ってない」
「そりゃ、つい1ヶ月前まで付き合ってたやつに結婚式の招待状なんて送れねぇよな」

三上の皮肉気な言葉に、彼女は三上には見えないように、ぎゅっと手を握る。
そうでもしないと、私だって結婚なんてしたくないと、叫んでしまいそうだった。
だって、私の好きな人は、あの人じゃない。あなたなのに、と。

「大層なもんだな。まぁ、良家のお坊ちゃまとお嬢様の縁談だし、当然か」

三上のやけにあっさりとした口調に、彼女は溢れてしまいそうな言葉を押しとどめる。
こんなこと言ったって、彼にとって自分は、ただの“元カノ”なのだ、と。

自分の家がどういうものかは、知っていたつもりだった。
けれど1月前に突然言われた婚約に、抵抗しなかったわけではない。
その抵抗が実らず、こうしてドレスで結婚式場にいるわけだけれど。

「・・似合わねぇな、そのドレス」
「・・・・・・失礼、ね」

三上の溜め息をつけた言葉に、彼女は小さな、小さな声で返す。
似合うと言われたかったわけではない。そんなこと言われたら、泣いてしまうと思った。
けれど、似合わないも嬉しい言葉じゃない。これが、彼に会う、最後かもしれないのに。

「お前には、こっちのが似合うだろ」

そう言って、三上が何かを彼女に投げた。
ばさりと彼女に被さったそれは、今彼女が着ているものと同じ分類のもの。
けれど、彼女が着ているドレスとは大分違う雰囲気のウエディングドレスに、彼女はただただ三上を見る。
そうやって見た三上が浮かべた笑みは、だんだんとぼやけていった。

「俺がお前を連れて行く。 ――― この1ヶ月で、準備は出来た」

遅い、なんて言わせねぇよ、と三上が笑う。
突然の出来事に、けれど、彼女の頭には、はい、以外の返事なんて、浮かばない。
結婚式の控え室で交わされたキスは、けれど無二の誓いのキスに違いなかった。



花嫁をさらえ!協力者は武蔵森メンバー。






忘れ得ぬ日々  ホイッスル! 椎名 / 男主人公


「うっわ、すげぇカッコ」
「うるさいよ。・・お前もだろ」

はは、と、少年が軽く笑えば、翼が溜め息をついた。
確かに翼の言うとおり、2人はボタンがなくなった学ランという、同じような格好で。
それは今日、中学校最後の行事である、卒業式が行われたからなのだけれど。

「お前、歌ってるとき泣いてたろ」
「いーだろ、俺は充実した学校生活を過ごしたってことです。」

翼の言葉に、少年がぶっきらぼうに、けれど否定はしないで返す。
それは否定できないことであるからと、否定しようとも思わないことだからで。
あそこで泣いてしまったのは不覚だったけれど、でも、いいかと思った。
だって確かに、悲しいとも嬉しいとも表現できない気持ちがあって、
とりあえずわかるのはこいつらと毎日会うのもこれで終わりか、なんてことで。

「・・・・なー、翼」
「なに」

少年がかけた声に、翼が言葉を返す。
こんな当たり前のことだって、今日を過ぎれば当たり前じゃなくなって。
そう考えて、はぁ、と少年が息を吐いた。
その様子に、翼も同じように、けれどもっと長い溜め息をついた。

「ったく、妙に色気づいてんなっての!」
「ぐぇっ!」

大きくなった声音とともに、翼の腕が少年の首に回る。
咄嗟のことに声を上げた少年に、翼が意地悪く笑った。
相変わらず馬鹿デカいリアクションだね、と。

「そのリアクションが毎日見られなくなるのはつまんないけど、」
「・・・俺も翼の毒舌が聞けなくなるのは、妙に名残惜しいな」

少年が小さく笑うのは、その言葉が翼なりの、
自分と同じ気持ちだということの表現だろうと知っているからで。
要は、離れたくない、んだ。
自分たちの過ごしていた場所から、人から、気持ちから。
けれど今日はここを旅立たなければならない日で、それは誰もに与えられた日。

「ホラ、さっさと行くよ。打ち上げあんだから。」
「あー、そーいや、早く来いってメールきてたなぁ。」

言いながら、2人で足を進ませる。
最後に残したありがとうが、届いてくれればいいと思った。



卒業シーズン。変わらないでは、いられない。






外界に繋がる扉  Harry Potter リーマス / 女主人公


「リーマス、こっちだよ」

一番最初に、真っ暗な闇に光を見せてくれたのは、貴女だった。



「・・・お久しぶりです、先輩」

小さく呟いた声は、当然のごとく、あの頃呼んでいた声とは違った。
返ってくる声と、笑顔がない。これもあの頃とは違う。
けれど、それに不満など持つはずもない。
きっと貴女は僕には見えないだけで、今もそこで笑っているのだろうと思える。

そんな人だった。

人狼になった僕を怖がらずに受け入れてくれた、謂う所の、よく遊んだ近所のお姉さん。
ホグワーツに入って呼び方が変わったけれど、それでも貴女は、貴女が見せてくれる光は変わらなかった。
それどころか、貴女はますます多くの光までも見せてくれた。
無二の友人と初めて話したきっかけも貴女だったことを、貴女は知っていた?
そう思って、思わず笑みがこぼれた。

「・・・・・・先輩、僕は」

貴女が例のあの人 ――― ヴォルデモートに殺されたと聞いたのは、まだホグワーツの学生だったころだ。
あのころのこの世界はヴォルデモートを恐れて真っ暗で、けれど、
貴女がいなくなったと知った僕の世界も、等しいくらいに闇に包まれたこと。
貴女は、きっと、知らないんだろうね。
僕がどんな気持ちに駆られて、どんなに情けない泣き言を、友人たちに漏らしたのかも。

「貴女が、大切でした。 ――― 今も、ずっと」

これが恋だとか愛だとか友情だとか憧れだとか、そんなもの、どうでもいいほどに。
今だって僕は、貴女に焦がれています。



あなたはここにはいないけれど、最上級の、これ以上ない愛を。






逃亡犯の幇助  テニスの王子様 向日 / 男主人公


「ッ・・・て、め・・・ふざ、けんなよッ・・・!」
「や、しょーがね、じゃん・・・っ」

ゼェゼェと肩で息をしながら、少年が思い切り悪態をつく。
そうすれば隣の向日が、まだ少年よりはマシだが、それでも息を切らせて言葉を返す。
本来だったらそんな向日の頭を引っぱたいてやりたいところだが、
テニス部の向日がこれだけ息を切らせるものと同様の運動を不本意にさせられた、
帰宅部であるこの少年にとっては、息を落ち着かせることのほうが先決だった。

「あー、でも、さすがに・・跡部、も、追ってきてねーじゃん?」

いくらか落ち着いたらしい向日を、少年はギロっと睨む。
原因は向日が部活の休憩時間を越えてまで偶然会った少年と話し込んだことで、
言ってしまえば少年はクラスメートに捕まっただけだというのに、
何故か跡部に見つかった向日は少年まで巻き込んで逃げ出したというわけで。
つまり、少年はこれだけの運動をする必要など微塵もなかったのだ。

「おめぇ、明日昼飯奢れよ」
「はぁッ!?なんで」
「誰のせいでこんな走らされたと思ってんだ!」

がぁっと少年が怒鳴れば、向日はう、と言葉に詰まった。
しかしいつもなら冗談だって、と笑う少年も、ここではそうはしない。
あの有名な跡部景吾に追いかけられるなんてレアな、
むしろ御免被りたいくらいのイベントに強制的に参加させられた少年としては、
このまま何もなし、なんていくらなんでも許されない事態で ―――

――― 向日!それからその隣のやつ!」
「はぁッ!?なんで俺まで!」
「ゲっ!くそくそ、跡部のやつ諦めわりーな!」

1つ毒づいて、それでも2人はまた走り出した。
逃げ切るためと、巻き込まれないため。
最終的には両方の目的とも、跡部によって阻まれるわけだけれど。



巻き込まれ主人公。でもこういう意味ないのって好き






黙して語らず  おおきく振りかぶって 阿部 / 女主人公


「ねー、阿部」
「あ?」
「・・・・・」
「・・・・・なんだよ」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・オイ?」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・、よっし!」
「・・・・いやなにが」
「オッケーオッケー!阿部、今の伝わったー?」
「・・・・・は?」
「いやだから、今あたしが何を思ってたのかなーとか、以心伝心?」
「・・・・・・・・・・・・・『今日の昼奢れ』?」
「!え、嘘、すご!」
「ってお前ホントにそんなこと思ってたのかよ!!」



ぼくらはいつも以心伝心?(してても困るけど、でもしてたい)






憎し、我が友よ  家庭教師ヒットマンREBORN! ディーノ / 男主人公


昔なじみの友達に突然呼ばれて向かい合ってみれば、
そいつ、ディーノは唐突に予想もしていなかったことを切り出した。

「お前に、俺のファミリーに入ってほしい」

真顔でこんなことを言い出したディーノは、ホントにどっか頭が壊れたのか?
いきなりファミリーって、しかも、『俺の』?
一体何を言ってるんだ、だいたいお前、そういうのとは無関係だろ。
そう言葉を返せば、いや、それが、と、ディーノがあの糸目で笑う。
そうして一通り事情を説明したディーノが視線をずらした先には、
ちっこい、スーツに帽子のマセた赤ん坊がいた。名前をリボーンと言うらしい。

「ちゃおっス」
「・・・どーも。この赤ん坊が?」
「ディーノの家庭教師だ」

その赤ん坊、リボーンにマジでか?と素の反応を返せば、瞬間、ズガン、という音。
わかったのは何かが顔の横を通ったということで。
目の前のリボーンの手元を見れば、なんだったかなんて一目瞭然で。

「わかったか。お前はキャバッローネに入るんだ」
「オイ、リボーン!無理強いはしねぇって言ったろ!」

チャキ、と銃を構えなおすリボーンにディーノが慌てたように言う。
そんなところは、図体がでかくなった今でも変わんねぇなぁ、と思って、
今に限って妙に柔軟なこの頭に、はぁ、と思わず1つ溜め息をつく。
そうすれば、何を思ったかディーノが俺に向き直った。

「・・で、入ってくれるか?」
「・・・俺、今まで銃とか使ったことねぇよ?」
「知ってる。お前は基本素手だもんな」
「それでやってけるほど甘くねぇんだろ、マフィアってのは。なのに俺でいーわけ?」

言った俺の言葉は、確かに好意的な姿勢を示していて、
ディーノがバッと身を乗り出して、お前がいいんだって、と声を大きくする。
そんなディーノに、そういえば何で俺なんだよ、と口を開けば、
ディーノは虚をつかれたようにきょとんとした顔をした。

「一番信頼できる奴はお前だからだろ?」

何を今更、と、ディーノが糸目で笑う。
逆に不意をつかれたのはこっちのほうで、思わずディーノから目を逸らせば、
銃をしまっているリボーンが見えた。(心なしかさっきより笑ってねぇか)
あぁ畜生。
なんだってこんな友人を持ってしまったんだろう。
何年友人をやってきたと思ってるんだ。
お前にそんなこと言われて、断れるわけがねぇだろ。



ディーノさんも和む人だと


お題提供 1〜5 : SOMEONE , 11〜15 : as far as I know




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