『で、だ。、明日は休め』 「・・・・え?」 電話口で突然切り出された言葉に、はただ思ったとおりの疑問の声を返した。聞こえなかったのか?と問う声には聞こえたけど、と返して、けれど理解できたわけではない。それもそうだ。明日は土曜なわけでも日曜なわけでも休日なわけでもない。だた特別なことがあるとしたら、それが、私の誕生日だということだけだ。けれどそこでどうして休めという話になるんだろう。どうして?と率直に尋ねたに、跡部が笑う。 『決まってるだろ。おまえの誕生日を祝うためだ』 「や・・・祝うって、それでどうして休むの?」 『一日かけてこの俺が祝ってやるって言ってんだよ』 文句でもあんのか、アァン?と続く言葉に、そんなことないよ!と慌てて返す。そう、文句なんてあるはずもないけれど、そのために学校を休むなんて、そういうのってアリなんだろうか。そんなことを考えて、でも景吾だし・・と浮かんだ思いに苦笑する。なんというか、この彼氏さんはやるといったらやってしまう人だから。しかし問題はいろいろある。たとえば、先日の彼の誕生日の際に、お金をほぼ使い切ってしまったこと、とか。そんなことを考えていたは、跡部の聞いてんのか?という呼びかけに考えを中断する。 「でも、一日ってどうするの?私今そんなにお金ないし・・」 『そんなことかよ。そんなの俺が全部払うに決まってんだろ』 「それはダメだよ、悪いもん」 あくまで当然だという口調の跡部にが拒否の言葉を口にする。なんだかんだと押し切られ、結局いつもデートのときなどには奢られてしまうのだ。相手が相手だというのもあるかもしれないけれど、同い年で同じ学生でそれでは、跡部本人がなんと言っても気になってしまうというのに、キス一回でチャラだ なんて笑ってすませる跡部になんだかんだでときめいてしまったりする自分はもう重症だろう。悪くなんかねぇよ と返す跡部に、でも とが言葉を挟むより先に、かぶせるように跡部が言う。 『好きなやつの誕生日くらい、好きなだけ祝わせろ』 何か言おうと開いていた口は、言葉を発することができなかった。なんでこの人はこんなことを普通に言うんだろう。そんな、そんなこと言われたら、もう何も言うことなんてできないし、あぁもう、なんだかそれだけで十分だよ。熱くなっていることを自覚できる顔を、跡部からみえるわけではないけれどなんとなく俯かせながら、は小さな声で うん と呟いた。というか、それしか言えなかったのだ。その反応に、跡部が電話の向こうで笑ったのがにはわかった。見えないけれど、たまに見せるあの優しい笑顔で笑っている気がした。どうしよう、この歳の一番最後がこんなに幸せなんて、いいのだろうか。思わず手で顔をおさえたに、電話の向こうで、跡部があぁ、もうだな と気づいたように声を漏らした。 『』 「・・、なに?」 『誕生日おめでとう』 |
最高のバースデーにしてやる と優しい声で言ったあなたを、私はずっと想い続けるのだろう。 誕生日おめでとう、郁琉ちゃん! 今年も郁琉ちゃんの誕生日を祝えてうれしいです! 今回は10月繋がりの跡部さんにしました。 この1年も、郁琉ちゃんにとって素敵なものになりますように祈ってます!これからもよろしくです★ |