「・・・あれ、?」 その声にドクンと心臓を鳴らしたのは、誰だったのか。 恋路縦横宣言! 「・・・・誠二?」 振り向いたが、藤代の顔を見て驚いてから、わ、偶然だね、と笑う。 それに対して、と同じように自分に顔を向けるシゲをちらりと見てから、藤代も笑顔を浮かべた。 「ホント、偶然だなー!はなにやってんの?」 「私は買い物だよ。誠二は?」 「俺も!っていうか、正確には三上先輩の命令だけど」 ひどくねぇ?そりゃ三上先輩が買っておいたってコーヒー飲んだのは俺だけどさ、という藤代の言葉に、 があはは、とおかしそうに笑った。それは、三上先輩も怒るよ、と。 は桜上水生だが、“三上先輩”のことは、 名前とプレースタイル、その性格や血液型なんかまで知っていた。 それは全て、この幼馴染との会話からのため、顔は知らないのだけれど。 「そりゃ大変やな。んじゃ藤代、俺はその袋の中のココアで我慢したる」 「おー、っていやいやいや!」 「なんや、えぇツッコミやん」 シゲの言葉に返す藤代に、からりとシゲが笑う。 その中で2人の間に交わされた視線には気づかずに、 誠二と知り合い?と、が隣でより一回り大きい袋を持つシゲを見上げた。 そうすれば、サッカー関連でちょおな、と、シゲが笑って返した。 「っていうか、と藤村は何してんの?」 不思議そうな顔で、藤代が問いかける。 しらじらしいと思えないのは、きっとこいつが天然だからだろうとシゲは思った。 「俺とは同じクラスなんや。」 「それで、ジャンケンで負けたから、買出し係。」 シゲの言葉に続くように、苦笑しながら言ったが持ち上げた袋の中身を覗けば、 そこに入っていたスナック菓子などの山に藤代が目を輝かせる。 そうすれば、誠二が前に教えてくれたやつも買ったんだよー、と、 そのお菓子を見せようと袋の中に目をやるを、藤代は驚いた顔で見てから、ふわりと笑った。 あぁもう、可愛いよなぁ、と。 愛おしいものを見るような、としかいいようのないその顔に、シゲが藤代から視線をずらす。 ギリ、と、心臓がつかまれたような気がするのはきっと気のせいじゃない。 こんなにも苦しいのだって、気のせいなんかじゃ。 だってシゲの頭に浮かんだのは、やっぱり、という言葉。 声をかけられたときから、なんとなくは、気づいてはいた。 何かの機会に小島から聞いた、幼馴染という間柄だけではないということ。 今、藤代の顔を見てわかった。 へと向けるその気持ちが、簡単なものではないということ。 けれど、と思う。 自分の思いだって、簡単に止められるような、そんなモノじゃない。 ふと、ジリリリ、という音がその場に響く。 その音に軽く気を削がれたようなシゲに対して、が誠二じゃない?と藤代に視線をやった。 その視線に、うーん、と少し悩んでから、藤代は諦めたようにポケットへと手を伸ばした。 そんな藤代の様子にが不思議そうな顔をする。 今日はそんな顔ばっかさせてるなぁ、なんて思いながら 藤代が電話を取れば、遅い!と言う声が藤代の鼓膜へと届いた。 その声の主の三上に、すいませんって、今帰ります!と藤代が返す。 その様子にシゲがぷっと吹き出し、は微笑ましそうに藤代を見やった。 心配してたわけじゃないけど、武蔵森で楽しくやってるんだな、と。 「あーごめん、俺帰んなきゃ・・・って、2人とも何笑ってんだよ!」 「や、なんでも・・・ぷっ」 電話を切った藤代が2人へと顔を向けてから、笑う2人の拗ねた顔をする。 言いかけながらまた噴出したシゲをさらに拗ねるように見てから、 お前は笑ってないよな!?と藤代はの頭をくしゃくしゃと撫でた。 「ちょ・・わっ!もう、誠二!」 上から来る腕をよけるように動くに、へへ、と藤代が笑う。 そうしてそんな2人を見るシゲに視線を送ってから、んじゃ、と藤代がの頭から手を離した。 「俺もう帰るな。これ以上待たせたらまた三上先輩専用ハリセン飛んでくるからさ!」 藤代の言葉に、そらえぇなぁ、とからかうように笑って、けれど内心で、頼むで三上、と思うシゲと、 あ、例の強力ハリセン!?と楽しそうにするに、笑ってまたな、と言った藤代を、 けれど、あ、ちょお待ちぃ、とシゲが引き止めた。 ん?ときょとんとした顔を見せる藤代に、ニッとシゲが笑う。 「負けへんで」 シゲのその言葉に不思議そうにしながら、けれどはシゲもFWだと聞いたことを思い出して、 あ、そういうことか、ライバルなんだ、と納得した。 そうすれば、シゲの言葉に、俺も!と、藤代がいつものように快活に笑った。 その笑顔は無邪気なサッカー少年の代表ともいえそうなもので、 けれどシゲがそうじゃなくて、と内心で思うのに少し遅れて、 藤代のその瞳はを映してから、シゲへと真っ直ぐに、好戦的に向かった 「俺だって、譲れねぇもん。」 その言葉に、がえ?と思うよりも早くに、シゲが、驚いたような顔をした。 それから、なんや、とことんやりにくいやつやなぁ、と呟く。 それに対して、何が?と首を傾げる藤代に、なんでもないわ、とシゲが疲れたように返すのを見ながら、 は1人何が何だかよくわからない、という顔で思案する。 そうすれば、それに気づいた藤代がに笑った。 「ま、男にはいろいろあんだよ!」 は入れねーの、と大きいその手でピースを作る藤代に、 え、ずるいよ、とが不満そうな声を上げる。 そんな2人を見ながら、はよ帰らんでえぇんかいな、とは口にせずに、 シゲがふぅ、と1つ、決して悲観的ではない、けれど楽しいわけでもない息を漏らした。 これはまた、最強のライバルがおるもんやな、と。 初のVSものということでシゲVS藤代。 主人公、あんまり絡んでなくてごめんなさい! けどこれ、作者的にはイーブンか4:6くらいのVSのつもりなんで…! 99088番を踏んでくださった如月遥佳様へ! |