いつだって歳の差だとかそういうことばっか言ってくるけど
そんなの俺には関係ないから。
・・・・・アンタの作ったハードルぐらい、3日で越えてやる





CANDY








文化祭が無事に終わって学校が静けさを取り戻した頃、俺は先輩との約束通り
先輩を待つ為、部室へ向かって校内を歩いていた。
誰もいないテニスコートを横目にドアを開けると、窓際のベンチにどかっと腰を下ろす。
薄暗くなりかけた室内はしんと静まり返っていて、昼間の喧騒が嘘の様だった。
程なく俺は足元に転がっていたボールを掴むと、何度かそれをバウンドさせつつ想いを
巡らせ始めた。







先輩は副会長だし生徒会の仕事があるのは仕方ないけど、やたら部長と喋ってんのとか
目にするし、クラスに戻れば不二先輩や菊丸先輩がいるし・・・・・・。
なんか障害が多いんだよね。
今日だって生徒会同士の交流か何か知らないけど、どっかの部長サンまで来てくれて。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・名前で呼んでるし!



思わず力が入ったのか、手元へ来る筈のボールが予想外に跳ねて飛んでいってしまった。
俺はポーン、ポーン・・・・と弾みつつ隅へ跳ねていく様子に小さく舌打ちすると、今度は片足を
ベンチに乗せ窓の外へと顔を向けた。





―――ったく。・・・・・・・・何かって言うと年上を強調するし、人の頭とかすぐ撫でるし。
いつも自分の方がよっぽど可愛いの棚に上げて、俺の事可愛がろうとしてくるし。
何だかんだ心配したり、すぐに送って行きたがったり、挙句の果てには王子扱いって・・・・・
//・・・・・・・・・・・なんだよ、それ。
そんなことしてくるの、先輩だけなんだからね。わかってる?

・・・・・・まぁ、他のやつが同じことしてきても関わる気ないけど。




















「リョーマ?ごめんね、遅くなっちゃって。帰ろー。」

「・・・・あらら、寝ちゃってるな。・・・・・・・そんな待たせちゃったかなー・・・ごめんねー?」
不意に聞こえた声に瞼を上げると、ひとりだった筈の部室に先輩の声が響いていた。
「・・・・・・・・・・・・ぇ・・・・・・あれ、先輩・・・?」



・・・・・・・・・・夢・・・じゃないよね?



腕を引っ張ったら、いつもと同じいい匂いがした。
そのまま隣に座らせてもう一度目を閉じる。
・・・・・・・この匂い好きなんだよね・・・俺。
アンタって柔らかいし凭れたら寝るのにちょうどいいっていうか、何か凄く・・・安心する・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・///

「・・・・・まだ眠い。・・・・・肩貸して?」
「・・・え?・・・・・・・・・・・・・・・・・うーん・・そんな待たせちゃってました?」



さっきは先輩のこと考えてるうちに眠っちゃったみたいだけど、夢の続きみたいに現れて
くれたからさ・・・・・・・・//・・・・って、待ち合わせてたから現れるのは当然なんだけど。
そのまままどろんだ俺は、再び心地よい眠りに落ちていった。










「・・・・・・・・・・・リョーマ・・・・・・りょーぉーまー。・・・・・起きて起きて。そろそろ帰ろ。
さすがに、ご家族とか心配するよ。」
再度聞こえてきた声と頬を軽く叩いている手に、ここが部室だったことを思い出す。

「あ、起きた?おはよ。ごめんね、遅くなっちゃって。随分待たせちゃったよね。」
目を擦りつつ辺りを見ると、外は既に夕闇が支配し始めていた。
「ぇ?・・・・・・・・あ、先輩?やっと来たんだ?・・・・遅かったね。ていうか・・・・・・・・・・あれ?
遅くなったのってさ・・・・もしかして、俺のせい?ゴメン、何か気持ちよく寝てた・・・・・・。」
「んーん、私来たの遅かったから肩貸してたのも少しだけだし。ちゃんと寝れたんならそれでよし!」



ねえ・・・・・・・ずっとこうしてくれてたの?
・・・・・・・・・・改めてそう思うと、ちょっと火照りそうだった。







先輩に急かされて外へ出た俺達は、人気のなくなった校内を下校し始めた。
「・・・・・今日ね、簡単な売上集計もしてたから遅くなっちゃったんだけど、男テニは確実に
売り上げ上位だったよー。」
「へえ・・・・売り上げって、全校で集計取るんだ?・・・・・・・それって特典とかないの?」
俺がちょっと笑うと、先輩は笑顔でそれを嗜めた。
そんな仕草も可愛いから全然怖くないけどね。
「いいじゃん、盛況ならそれだけ来年の予算にもなるんだから。上位3団体は表彰するよ。
あと、購買の割引券が配られるかな。」
「ああ、そういうのに反映されるんだ?・・・表彰はどうでもいいけど、割引券は欲しがる先輩
いそうだね。」
「そ、割引券欲しがる男子とかって多いからね。そのために結構結束よく張り切ってくれるし。」





再びクスッと笑った先輩は、横から俺を覗き込む様に見つめてきた。
「なにか特典、欲しい?でも今日特に何ももってないんだよねー。・・・・・・・・・あ、でも確か・・。」
そう言ってポケットを探るとそこから飴玉を取り出した。
「はい。とりあえず今はこれで我慢してね。今日は一日、よく頑張りました!」

笑顔でそれを渡されて。・・・・・・その辺から俺はもう我慢が出来なくなっていた。







またそうやって年下扱いする・・・・・・・・・・










「今日のご褒美はこんなもんかもしれないけど・・・俺の欲しいのは、こんなものじゃないよ?
・・・・・・・・くれる?」

只ならぬ表情をしていたのか、先輩の動きが止まった。
少し傾げられた首に小さく笑った俺は、正面に立つと先輩を真っ直ぐ見つめ返した。
「・・・・・何のこと?って顔だよね。先輩のことが、好きって言ってるんだけど。」



もらっていい?



「・・・・・・・・・・え、っと・・ありがとう。・・・でも、その、今更だけど・・・私、年上だよ?そのくせ
きっと普通に嫉妬とかするし、わがままとかも言っちゃうと思うから、年上の利点もないし。
///・・・・・・・私でいいの?」
「だから。・・・私でいいの?じゃなくて。じゃないとダメなんだよね。」

俺は一歩前に出ると、そのまま腕に閉じ込めた。
「いつも歳のことばっか言って、そっちから壁作ってきたよね?歳の差を縮める事は出来ないけど
を想う気持ちは誰にも負けないよ?・・・・・・・力だって、俺の方が強いし・・・・・・・///
・・・・・もう、先輩って言ってあげないから。」








のこと・・・凄く好きだよ・・・・・///
アンタは?
俺のこと・・・・・//・・・・好き・・・?








ますます腕に力を篭めると、控えめな手がそっと背中を抱きしめてきた。
「・・・・好き・・・私も、リョーマのことが・・好き。だから・・よかったら私のこと、もらってやって下さい。」
「もらっていいんだ?・・・・・・・・・後から返せって言っても、返さないからね?」















だけどさ その赤い顔、まるでキャンディみたいだね
もしかして・・・・・
アンタの方が甘いんじゃない?



















9月5日にお誕生日を迎えられた、上坂美咲様に捧げます。
甘いもの大好きな王子から愛を篭めて・・・・・v(゚▽^*)
このドリは、キャラレスで上坂様が演じられているヒロインとのやり取りを元に書き起こしました。
キャラレスではキャラの心中を明かすことはないので、キャラ視点はある意味新鮮ですよねっ?(笑)
告白の場面は私も印象深かったので、時々思い出して頂けたら・・・なんて勝手な希望ですけれど
そんな想いを篭めつつ書かせて頂きました。^^
それでは、美咲ちゃんにとって素敵な1年がまた訪れます様に・・・・・・
(ヒロインの会話部分は、上坂様の了承を得てキャラレスでの会話を引用致しました。)














『La vie en rose』の八神郁琉様が私の誕生日に書いてくださいましたー!
はわわわわ、どうしましょう、すっごい嬉しいです。
私が参加してるキャラレスでの場面を小説にしてくださったのですが、
いやもうなんて言ったらいいのかなってくらいドキドキですよコレ…!
素敵なプレゼントをありがとう、郁琉ちゃん!あいしてます!!