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久しぶりの一日オフで、久しぶりのデート。明日のことを考えながら、は自分で思っていた以上に浮かれていたのかもしれない。 「せんぱーい、明日映画行きましょーよ」 「あー俺は予定あるからパス」 藤代からの提案に軽く返しながら、は携帯をいじっていた。明日の予定についてのメールに返事を返しながら、映画に行くという面々が予定を組んでいる部屋から出る。そして後に、は思う。最後まで部屋にいて、こいつらがどこに行くのかを知っておくべきだった と。 |
音を立てながら開いた自動ドアをくぐって、とは店を出た。の手には小さな包みがある。それはこの店で、がに贈ったものだった。 「ありがとね、」 「いいって。によく似合うと思うし」 嬉しそうに笑うに、も笑顔を返す。久々のデートである今日は、とりあえずぶらぶらとウィンドウショッピングでもしてみようか なんてノープランなわけだけれど、こうやって2人でいられるのなら別にどこだっていいというのが実際のところだろう。なんせ、学校が違い、さらには武蔵森のサッカー部に属しているため、会う機会なんて滅多にないのだ。だからこそお互いに一緒にいられる時間を楽しみにしていたし、それはお互いにわかっているから、こうやって思わず頬が緩んでしまうような優しい雰囲気が流れているのだ。 が、突然、その雰囲気に割り込むような大きな声が響いた。 「あれ、先輩っ!」 その声に、は瞬間動きを止めた。この声が誰のものか、すぐにわかってしまったためだ。同じくその声が聞こえたは自然とその声のしたほうに顔を向ける。その瞬間、あ!とまたしてもあがった声に、は大きなため息をついた。なんだってこんなにタイミングが悪いんだとが思っている間にも、その声の主+αはたちの元へと近づいてくる。もうしょうがないかと顔を上げたの目に映ったニヤニヤと笑うチームメイトの顔に、はなんだってこうなるんだ と内心で呟いた。 「よう、お楽しみのとこ邪魔して悪ィな」 「・・・そう思うんなら声かけてくんなよな」 明らかに楽しんでいる三上に、はため息をつきながら答える。そりゃ悪かった と言う三上の顔はそんなこと微塵も思ってなさそうで、さらににこりと笑顔を浮かべている渋沢と、明らかに聞きたがっている藤代と、苦笑をしてはいるものの止める様子のない笠井を前に、しょうがないか と、はに顔を向けた。そして、こいつら、サッカー部のチームメイト と前の4人を紹介した。うん、とが頷く。 「この前の試合に出てたよね?」 「あぁ、そいつら」 「あ、はじめまして!俺、藤代誠二っていいます!」 2人の会話に、藤代が元気よくわって入る。その言葉に、は小さく笑って はじめまして、と返した。本当に、から聞いていたとおりの子だ、と。はから、よく武蔵森の面々のことを聞いていた。そのため、初対面ではあるものの、あまりそういう気がしないのだ。そうしてなんだか和んでいるに小さく苦笑して、は一人ひとりの紹介 「それで、こっちは・・・俺の彼女」 「です」 少し照れたように言うと、同じく照れたように笑うに、三上がからかうように笑った。に彼女がいるということは少し前には知っていたが、その彼女をこうして近くでみることも初めてだったし、こうして2人が並んでいるところを見るのも初めてだった。が、こうしていかにも相思相愛なカップル図を見せられれば、微笑ましくはあれど、からかいたくもなる 「サンはどこ中?中3だろ?」 「ってオイなに名前呼んでんだよ」 「飛葉中です」 「じゃぁとは地元が同じなのか」 サン と呼んだ三上とが、いいじゃねぇか別に、よくねぇよ、なんて言っている間にも、武蔵森の面々との間で会話が進む。そして藤代までもがさん、なんて言っていることに気づいたは、とりあえず三上との会話をやめて、の腕を引いて自分の後ろに隠すようにした。その行動に武蔵森メンバーが笑ったのがわかったけれども、これ以上2人の時間を邪魔されてたまるか と、はに もう行こう、と声をかけた。 「ってことで、じゃぁな」 口を挟む間もなく、早口で言ってはの手を引いて踵を返す。そのの行動に、が小さく笑った。あーもう、笑うなよ とが言うけれど、思わずこぼれてしまうのだからしょうがない。そんな2人の背中が遠くなるのを見ながら、藤代があーあ と呟いた。 「俺も彼女欲しいなー」 「じゃぁ作れば?」 藤代の言葉に、笠井がさらりと返す。そういうんじゃなくてさー!と藤代が唇を尖らせるのを聞きながら、でもまぁわかる と笠井は思う。つまりは、あんなカップルに憧れるということなのだろう。あーあーと呟く藤代を聞き流しながら、他の三人は思う。寮に帰ってきたら、馴れ初めから何から全部聞き出してやろう と。 (で?どっちから告ったんだよ?)(………つかさ、なんでこんな大人数になってるわけ?(あぁもう最悪だ…)) |