窓の外に見つけた姿に、ロンとハーマイオニーと一緒に宿題をしていたハリーはガタンと立ち上がった。その振動に、彼の隣で宿題をやっていたハーマイオニーが眉をゆがめてハリーを見る。けれど、立ち上がったハリーは窓の外を確認すると、ちょっと休憩 とだけ言って図書室を走って出て行った。マダム・ピンスの注意の声を遠くに聞きながら、残されたロンとハーマイオニーは窓の外を見る。そして、ハリーが駆けていったことに納得した。まだ雪が残るその場所にいたのが、スリザリンの同級生のだった。




!」

呼ばれた自分の名前に、は杖を振っていた手を止めて声の主を振り返った。走ってやってくるハリーを目に留めて、笑ってハリーを手招きする。スリザリンとグリフィンドールは仲が悪いというのが一般的だが、必ずしもそうだというわけではない。はグリフィンドールの面々とも普通の同級生程度には仲がいいし、特にハリーとの親交は深いものだった。がハリーのことを気にしている     この理由を、シリウスのことを知らないハリーはもちろんまだ知らないが      ことと、ハリーがに懐いているためだ。このことに対してドラコたちは当然のように文句を言うのだけれど、はすらりと交わしているために、半ば諦めも見えだしたな と言ったのは たまに遭遇して言い合いになるドラコとハリーを面白がっているだった。

「こんなところで何やってるの?」
「んー、雪だるまでも作ろうかなと思って」

防寒対策をばっちりしているは、杖を片手に笑う。その言葉にハリーがの後ろへと目をやれば、そこには1つの大きい雪の玉があった。あれは雪だるまの下になる分なのだろう。ひょいとが杖を振ると、周囲の雪が浮き上がり べち と雪玉にぶつかって、雪玉がまた少し大きくなる。あくまでも自分の手で雪を掴むつもりはないらしい。そのやり方に、ハリーが苦笑を浮かべた。

「なんていうか・・・反則技だね」
「魔法使いなんてそんなもんよ。私はそこに雪だるまが出来ればいいんだし」

あっけらかんというに、ハリーはまたも苦笑を浮かべる。なんというか、はいつも子どもらしくないと思う。そのために浮いているかといえばそうではないし、むしろ姉のようにして慕われているのは知っているし、たぶん自分だってその一人なんだろうとは思うけれど、と同じトーンでいるのは、いたとしたってスリザリンの・ブラックバーンくらいではないかとハリーは思う。     なんだか、悔しいことだけれど。

「ここじゃなきゃだめなの?」
「だめじゃないんだけどねー・・・あ、出来たらハリーを呼びに行くつもりだったんだよ」

言いながら、は下になる雪玉づくりを終えて、上の部分の雪玉をつくり始めた。そうしながら思い出すのは、前の夏休みに見つけたシリウスのアルバム。そのなかにあったのが、この場所で、雪だるまを後ろに写っているシリウスとジェームズの姿だった。まだ幼い外見の彼らは、1年生か2年生だろう。まだリリーやサツキは一緒にはいなくて、リーマスとピーターもいなくて、2人は手や顔を真っ赤にして、けれどその大きな雪だるまの前で楽しそうに笑っていた。だから、というわけではないけれど、自分もここで雪だるまを後ろにハリーと写真でも撮ってみようかと思ったわけだった。そうして、出来たらその写真をシリウスに見せたい。それで、こんなことがポッター家とブラック家で代々続いたりしたら面白いかも なんてことを考えて、は少し笑った。そんなに、ハリーは不思議そうに声をかける。

「どうかした?」
「ううん、なんでも。ハリーも一緒に作らない?」
「え・・」
「杖、持ってるでしょ?」

そういってが自分の杖をくるくると回すと、ハリーは頷いて杖を取り出て、いいの?と問いかけた。もちろん とが笑えば、ハリーも嬉しそうに笑って、杖を振るう。そうすれば先ほどと同じように、周囲の雪が浮いて べち と音を立てて雪玉へとぶつかった。それが思っていたよりも楽しかったのか、ハリーは次々に杖を振るう。その様子に、は頬を緩めた。きっと、ダーズリーの家では誰かと雪だるまを作るなんてことはなかったのだろう。一緒に作る相手が自分で、さらに杖での雪だるま作りだけれど、少しでもハリーがいろいろなことを経験していってくれたらいい。そう思った自分に年寄りくさいなぁと苦笑しながら、も止めていた手を動かした。






続く雪だるまの場所








外が暗くなって、グリフィンドール寮に戻るハリーの手には一枚の写真があった。どこからかはわからないけれど、とにかくが呼んできたコリンに騒がれながらも撮ってもらったそれのなかでは、張り切りすぎたために上と下との雪玉の大きさがあまり変わらない雪だるまを後ろに、とハリーとが笑っている。その写真を片手に、部屋に戻ったら明日までにあの宿題をやらなきゃ と思いながらも、それにしては明るい顔で、ハリーはグリフィンドールの合言葉を口にした。




(あーあーハリーは楽しそうなことで)(ちょっとロン、あなたこのペースじゃ本当に宿題終わらないわよ)(・・・・)