|
「明日はみんな、屋敷に居てくれないかな」 報告会を兼ねているボンゴレの幹部会が終わろうとしていたとき、ボンゴレ十代目である綱吉が言った。童顔なため、実年齢である二十四歳よりも若く見える綱吉は、ボンゴレを継ぎ、イタリアに来て早数年がたっていた。にこりと笑顔を浮かべるその顔はやはりマフィアのボスなどには到底見えないが、それでもそのオーラは確実に増してきたし、いまや他のマフィアたちにも恐れられるほどになっている。そんな彼からの、珍しい言葉。その場にいた守護者たちとリボーンは抜きかけていた気を引き締めた。それを感じて、綱吉は あぁ と笑う。 「俺の私用なんだけどさ、紹介したい人がいるんだ」 「紹介・・・?」 綱吉の言葉に、わざわざそんなことをする人物がいただろうか と守護者たちは考える。最近ボンゴレの傘下になったファミリーはあるが、それはいちいちボスが紹介するほどのことでもない。闘争があったというわけでもないし、たとえば誰か客人が来たというわけでもない。ならばいったい?そう思う彼らに、綱吉はこの雰囲気に場違いだと思われるような少し照れたふうで笑った。 「実はさ、明日、籍を入れるつもりなんだ」 その言葉に、守護者とリボーンはピシリと固まった。ちょっと待て。彼は今なんといった?籍?それはあれか、戸籍か?というかなんでこんなに照れている?え、それはつまり、つまり、つまり。口を開くことなくそれぞれがそれぞれに1つの真実まで考えを募らせている間に、綱吉は照れたような、幸せそうな顔のままで、自分のファミリーに言った。 「だから、明日、俺の奥さんを紹介するよ」 彼らの思考を決定付けるその言葉に、今度こそ、全員は思考まで固まった。そうして綱吉だけがにこにこと笑うこと、十数秒。一番初めに張り付いた喉から声を出したのは、彼の先輩である雲雀だった。 「・・・、綱吉」 「なんですか?雲雀さん」 「それはつまり、結婚するってことかい?」 「はい。」 あっさりと肯定した綱吉に、だんだんと他の幹部たちも状況を理解し始めてきたのか、それぞれからいろいろな声があがる。驚きが混じっているそれは、ボンゴレの幹部会では珍しいことだった。けれど、彼らの反応がこれほどなことには理由がある。 「じゅ、十代目には、お付き合いなさってる女がいたんですか・・!?」 獄寺が、必死の形相で綱吉に問いかけた。綱吉の右腕を称している自分が知らなかったということがよほどのショックだったらしい。そんな獄寺に、綱吉が 黙っていてごめん と眉を下げた。 「彼女は一般人なんだ。危険な目にはあわせたくなかったから」 みんなにも言わなくてごめん と綱吉が幹部たちに目をやる。そのなかには不満げな顔も、祝福する顔も、なんとも言えない顔もあった。その中でも、一番不満げな顔をしていたのはリボーンだった。綱吉の妻 ということは、ボンゴレの妻ということになる。それはファミリー全体に関わることだし、将来的にはその女性が十一代目の母になるかもしれない。今まで愛人の一人もいなかったために心配していたファミリーの気持ちは杞憂だったというわけだが、しかしいきなり結婚というのはまた話が違う。そう思って、リボーンはオイ と綱吉に声をかけた。 「いきなり結婚ってのは早いんじゃねーか」 「そんなことないよ。俺、もう二十四だよ?彼女とは付き合って五年になるし」 「ほう、五年も隠していたんですか」 にこにこと返した綱吉に、感心したように骸が言う。それとは反対に、落ち着きかけていた獄寺が、ごっ!?と噴き出した。五年間もの間気づけなかったということで激しい自己嫌悪に陥る獄寺を放って、山本がめでたいじゃねーか と嬉しそうに頷いた。彼の顔に浮かぶのは、純粋に十年来の友人を祝福する笑顔だけだ。そんな山本と同様に、よかったな沢田!と了平が笑顔を浮かべる。綱吉はありがとう と嬉しそうに笑ってから、それじゃぁ と今度こそ幹部会を終わらせる言葉を口にした。そして、もう一度 事の始まりであった言葉を伝える。 「そういうことで、明日は屋敷にいてね。あ、彼女の名前はっていうんだ」 8:43 am 「あ、獄寺くん」 「!さん!おはようございます!」 「うん、おはよー。・・何してるの?」 「いや・・・リボーンさんを探してるんですが・・見かけましたか?」 「うーん、今日はみてないなぁ」 「そうですか・・」 「見かけたら言っておくね」 「ありがとうございます!・・あ、それじゃぁ俺はこれから仕事なんで、失礼します!」 「うん、がんばってー」 8:57 am 「よ、じゃねーか」 「あ、山本くん。おはよー」 「おう。ツナは今日帰ってくるんだよな」 「うん。みんなにもお土産買ったって言ってたよー」 「ははっそれは楽しみだな」 「あ、そういえば、山本くんリボーンみた?」 「ん?いや、見てないな」 「そっかー、ありがとー」 「どーいたしまして。・・っと、やべ、こんな時間か」 「あ、お仕事?」 「おう。獄寺と一緒なんだ。じゃ、いってくるな」 「気をつけてねー」 11:28 am 「おっか!」 「こんにちは、了平さん」 「あぁ、今日も極限にいい天気だな!」 「明日から下り坂らしいんで、今日のうちに洗濯物を干さなきゃですね」 「そうなのか?うーむ・・では俺も今日のうちに鍛錬をしておくか!」 「なんだかんだで毎日やってるじゃないですか」 「うむ、極限だ!ますますやる気が出てきたぞ!」 「・・・そう、ですか?・・・あ、そうだ、リボーンみましたか?」 「いや、見てないぞ」 「そうですか・・ありがとうございます、がんばってくださいね」 「あぁ!ではまたな!」 3:05 pm 「じゃないですか。・・・おや、その服は初めてみますね」 「あ、これねー、この前買ったやつなんだ」 「似合っていますよ、今日帰ってくるボンゴレのためでしょう?」 「え・・あ、まぁ、うん」 「クフフ。ボンゴレは幸せ者ですねぇ」 「いやいやそんな・・」 「ボンゴレの相手でなければ奪ってしまいたいほどですよ」 「やだなぁ骸ってば」 「クフフフフ」 「あ、ねぇ、骸は今日リボーンみかけた?」 「アルコバレーノを?いえ、見てませんよ」 「そっかー、ならいいや、ありがとう」 「なんなら連れてきましょうか」 「・・・いや、それはいいよ、うん」 4:21 pm 「なにやってるの?」 「わわわ!・・あ、ヒバリさん」 「なにやってるのって聞いてるんだけど」 「えーっと、リボーンを探してるんですけど」 「?なに言ってるの?彼なら・・・」 「え、ヒバリさんリボーンを見かけました?」 「・・・・・・言わない。がんばって探しなよ」 「えぇー!?ちょ、教えてくださいよ!朝から探してるんですよー!」 「やだ」 「・・・・・けち・・」 「なにか言った?」 「え、や、なんでも!」 「ふうん」 「あ、それじゃぁ私はこれで!」 「・・・灯台下暗しって言葉、知ってるかい?」 「え?」 「じゃぁね」 5:19 pm 「(パタン)うーん、どこにいるんだろ、リボーン」 「遅いぞ」 「うわわわわ!?」 「どこに行ってたんだ、」 「え、り、リボーン?なんで私の部屋に・・」 「朝からいたぞ」 「・・え、じゃぁなに、行き違い的な・・?」 「なんだ?」 「あ、うん、獄寺くんが探してたよ」 「そうか」 「うん。・・そういえば、私になにか用だった?」 「そうだぞ。とりあえずこっちに来い」 「んー?」 「おまえのエスプレッソが飲みたい」 「いいけど・・・私が淹れてもそこまでおいしくはないでしょ?」 「おまえのがいいんだ」 「・・・・・はいはい」 「笑うな」 6:52 pm 「ただいま、」 「おかえり、綱吉」 「・・・あー・・会いたかったー・・(ぎゅー)」 「もう、一泊だけじゃない」 「それはそうだけど・・・・あれ、この服・・」 「あ、昨日買ったんだ」 「そっか・・うん、よく似合うよ」 「・・ありがとう」 「十代目・・よかったッス!」 「仲いいなーあいつら」 「うむ!沢田はいい嫁をもらったな!」 「見せ付けるのはやめてほしいですよねぇこんなところで」 「なんだ、きみ、ずっとの部屋にいたの?」 「うるせーぞヒバリ」 というかさ、みんなが馴染んでくれたのは嬉しいんだけどね、実際こんなでかい屋敷なんだし、 みんな忙しいわけなんだからさ、毎日みんなと会ったりするのはかなり珍しいと思うんだ。 ・・っていうかみんなに構いすぎだろ!?あーもう、だから屋敷に残しとくのは心配なんだ。 ・・いや、連れていったらもっと危ないから、したくないんだけど・・だけどさぁ、 「おいツナ、はどこ行った?」あーもうだからリボーン!おまえに懐きすぎなんだよ! |