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あー、重い。俺こんなに荷物持ってきたっけ?いや、持ってきたっけ。すっげー詰め込んできたな、そういえば。そんな回想をしながら、俺はバタン とドアを開けた。誰もいないはずのそこには、黒髪のやつが立っていた。・・え、なんで? 「・・・誰、お前」 「いや、そっちこそ誰だよ?」 First Meeting
ver. A.MIKAMI
「俺は三上亮。で、おまえは?渋沢じゃないだろ」 「違うけど。え、どーゆーこと?」 とりあえず俺は渋沢じゃないから、そこを否定した。つーか、渋沢ってアレだろ、あのGK。ここあいつの部屋?いや、っていうか三上って、こいつも試験のときに見たけど、なんでここにいんの?そう思って、俺は思わず眉を寄せた。でもって、手の中のプリントを見る。・・・・やっぱり、俺が入るの、ここって書いてあるんだけど。どういうことだ?これ。 いや、待った。ここは武蔵森のサッカー部の松葉寮だ。とりあえずこれは確定。でもって、俺は今日からここでお世話になることになってる。これだって、確定事項だ。さらに俺は1人部屋らしくで、つまんないけど楽そうでいいな なんて思いながらこの紙に書いてあるこの部屋のドアを開けた。そう、そうだった。・・・・じゃぁ、何でここに人がいんだ? 「・・・・なに、ここおまえの部屋?」 「あぁ。ほら」 そう言って三上がバッグの中から紙を取り出した。 俺が持ってる、部屋番号が記されたものと同じ種類のその紙を渡される。そこには、三上亮という名前と、俺の紙には書かれていない2人部屋の文字と同室者の名前がたしかにあった。けどその番号は俺のものと同じ。・・・・え、なにこれ、手違いっつーことか?そんなことを思いながら、俺は自分のプリントを三上に渡した。 「これ、俺のなんだけど」 俺のと、返された自分のプリントを見ながら三上が眉を寄せた。にしても、こいつ、美形だ。タレ目だけど顔綺麗だし、髪もさらさらじゃん。その三上が寄せた眉をそのままに、口を開く。 「・・・・同じ、だな」 「だろうな」 ため息と一緒に返されたプリントを見たって、記された番号は変わっているわけもない。あーあ、全くついてない。初日っからこれってどうなんだよ。思わず溜め息が出るけれど、このままで何が変わるわけでもないから、俺はプリントをポケットにしまっておいていた鞄を持った。あぁ、やっぱり重い。 「その紙、ミスプリなんじゃないのか?」 「まぁ、どう見ても1人部屋じゃぁなさそうだしな」 ベッドだって、机だって、ちゃんと2人分用意されている。ここが2人部屋だってことは間違いがなさそうだ。つーことは俺のプリントが間違ってるってことで、そうだとしたら部屋は直に寮母さんにでも聞くしかない。なんというか、幸先が悪いな。 「どうすんだ?」 「寮母さんのとこにでも行って聞いてくる」 それならちゃんとした部屋教えてもらえるだろうし。言ってから、微妙に不安になってきた。まさか俺の部屋確保されてないとかっていう展開はないよな?うわ、そうだったらどうすんだ。 「じゃ、お邪魔しました」 もう1つ、まだ床に置いたままだった鞄も持ち上げて、再度玄関まで戻る。面倒だけど、しょうがない。それに、重いけど、それもまたしょうがない。と思ったところで、ふと左手が軽くなった。(・・・は?)左手を見れば、鞄の取ってを持つ手があって、そうして、三上がいた。目が合った三上は、俺の手から完全に鞄を奪い去る。(あ、マジ軽くなった気がする) 「ついでに行ってやるよ。渋沢もまだ来てねぇし」 三上がふい と目をそらせながら言った。だけどしっかり見えてんぞ、微妙に照れてるのが。なんだかそれが面白くて、俺は思わず喉を鳴らして笑った。即座に、三上が反応する。 「何笑ってんだてめぇ」 「いや・・・ありがたいなぁと思って」 治まらない笑いのままで俺が言う。くそ、と小さく三上が言ったのが聞こえた。お人よしだなぁ。なんだか、妙に面白い。くつくつ笑う俺に諦めたらしい三上はしばらくそのままで歩いて、途中で思い出したように口を開いた。 「そういや、お前名前なんていうんだよ?」 「あれ、言ってなかったっけ?俺は」 「、ね。1人部屋なんだろ?押しかけに行ってやるよ」 「菓子持参でならいーけど」 「・・・俺、甘ェのは無理。」 苦い顔をして、三上が顔を歪める。見た感じ、本当に嫌いなんだろう。そんなことまで面白く思えて、俺は今度は声を大きくして笑った。笑うとこかよ!?と三上の突っ込みが入る。あぁ、なんか俺、意外と楽しく寮生活を送っていけそうかもしれない。 |