6V6/6F6 Quad-II´型プッシュプル・パワーアンプ 最大出力7W (2016年)

オーナー:愛知県 山崎さん

最大出力 (クリップ前) 6V6 7W, 6F6 6W
周波数特性 (-1dB) 10Hz〜50kHz
ひずみ率 (1kHz, 1W時) 0.14%
ダンピングファクタ (1kHz時) 8.5
残留ノイズ (補正なし) 右ch 0.35mV, 左ch 0.11mV (最大出力とのSN比90dB)
入力感度 (最大出力時) 0.75V
回路図 電気的特性
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 「ラジオ技術」2014年から2016年にかけて掲載していただいたプッシュプル・パワーアンプです。2014年に製作活動を再開した第1号機です。
 位相反転回路にQuad-II型を採用していますが、本家Quad-IIのもうひとつの特徴である出力管カソードNFBを本機は持っていません。これを本家と区別するために「Quad-II´型(クオッド・ツー・ダッシュがた)」と自称しています。
 整流管6W4GTの役割は電源投入後にゆっくりとB電圧を上げることです。整流そのものはダイオードが行います。
 出力管には6V6のほかに6F6も使えます。ただし最大出力が若干下がるとともに、NFB量が少なくなることによる影響があります。
 「ダッシュ型」初号機の本機は、当初たいへん聞き苦しい音しか出ませんでした。どこをどうすればいいのか、およそ見当がつくようになるまでには気の遠くなるような試行錯誤が必要でした。
 本家と違って出力管カソードNFBを持たないということは、出力管の内部抵抗が高くなることを意味します。この結果、可聴外高域に大きなピークを発生しやすいというハンディキャップが生じます。
 このハンディキャップを克服するために本機では積分補正を採用しました。これにより可聴外高域のピークを抑えることができましたが、補正の最適値を探るのに莫大な時間を要しました。これが本機の教訓です。
 そこで本機に続くダッシュ型には積分補正を採用していません。
 実は雑誌記事の連載が終了後も、音質をさらに極めるべく微分補正を加えた改良を行いました。電気的特性よりも、あくまで聴感を改善する実験です。
 その結果、ひずみ率に面白い現象が現れました。2W以下の小出力領域でのひずみ低下が著しい一方で、2Wを超える大出力時のひずみ率にはほとんど変化がありませんでした。
 家庭で聴く音量で聴感判断していたため、その常用出力部分のひずみだけが改善されたようです。この現行版の回路図はこちらです。ひずみ率はこちらです。
 本機は小型ですが、B電源が左右チャンネルで独立しています。シャーシに内蔵するチョークコイルも2台搭載しています。音量を上げるとスケールの大きなサウンドで鳴るのはそのせいかもしれません。
 6V6で聴くと元気のよいシャープな音で、高域がきめ細かく浸透力があります。
 6F6もシャープな音ですが、6V6より低音に重みがあるのはヒーター電力の違いから生じるものと思われます。6V6の聴感で改良したものですが、6F6とも相性がよいようです。

 シャーシ前面にある4つの測定端子は出力管のプレート電流を測るためのものです。テスターを用いて自己バイアスペアを選別できます。
 シャーシ上面に四角い棒のようなものが取り付けてありますが、これは振動防止のための鉄製角棒です。
製作の詳細と実体配線図は「ラジオ技術」をご覧ください。