「ラジオ技術」誌1998年3月号に掲載していただいたものです。EL38はEL37の兄弟管ですが、gmが高いことと、管頂部にプレート端子が出ているところが違います。感度の高い出力管で、6BQ5並みの入力で30W以上を出すことができます。感度が高いと安定動作をさせるのが難しくなりがちですが、カソードNFのかかり方が大きくなるのが利点です。カソードNFをかけたEL38は安定動作とひずみ率軽減の効果で、5極管接続でありながら3極管並みの特性が得られます。古き良き時代の純粋英国製の品質とあいまって、非常にきめ細かでよい音が出ます。シングルアンプを1995年3月号に発表していますが、そのプッシュプル豪華ステレオ版がこのアンプです。製作時はオーバーオールNFBを9dBとしていましたが、現在は12dBになっています。底力のある馬力とクリアなサウンドが特徴です。弦楽器のハーモニーから打楽器の皮の震えまでよく再現します。実体配線は電圧増幅部が込み入っているため、信号の干渉にかなり気を使いました。実はEL38を選んだ理由のひとつは値段が安かったことです。EL37が高価なため、最初はその代役のつもりでしたが、カソードNFという秘術(?)によりひょうたんからコマという結果になりました。
サイズ:W40cm、D25.5cm |