VT-25 パラレル シングル モノラル パワーアンプ(出力4W)
出力段:VT25、初段:EF86、ドライブ段:12BH7、B電源遅延用:5AR4、チョークコイルを含めてトランスはすべてTANGO製。

オーナー:秋 一郎
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「ラジオ技術」誌1995年9月号に掲載していただいたアンプです。真空管のシーラカンスとも言うべきVT-25を並列接続したモノラルアンプです。ほとんど同じ構造の兄貴分にVT-62(801A)というタマがありますが、出物が少なくて入手が困難だったため、いつでも手に入るVT-25を採用しました。VT-25向けの電源トランスが販売されていなかったため、VT-62用の電源トランスを流用する方法を考えた結果、マイナス電源を使わないカソード・フォロワ形式とドライブ段-出力段直結方式となりました。発表時はオーバーオールNFBだけでしたが、その後カソードNFB併用に変更しました。その結果、実用部分の出力が1Wほど上がり、出力インピーダンスも意味のあるレベルで下がりました。オーバーオールNFBを切るスイッチを設けた理由は、小出力アンプではオーバーオールNFBがかえって聴感上で好結果とならない場合があるためです。オーバーオールNFBを効かせると帯域が広がりますが、パワーが分散されるのか、サウンドが平板な印象になりがちです。そこで音楽の種類やつなぐスピーカーにより使い分けられるようにしたものです。オーバーオールNFBをかけた状態では、帯域が広いのがわかるものの、オーケストラではパワーが天井に突き当たっている感じがしました。スイッチでオーバーオールNFBを切るとカソードNFだけとなり、サウンドに躍動感がよみがえりますが、演奏会場がひとまわり小さくなったような印象になります。オーバーオールNFBを切ると出力インピーダンスが大きくなるので、理屈上は低域がゆるくなっているはずですが、瞬発的パワーが出やすいのか、オーバーオールNFBをかけたときよりも自然な感じに聞こえるのが長所です。ただし低域は小型出力トランスとしての限界があり、高域よりも早く飽和してひずみが大きくなります。トリタン・フィラメントの性格でしょうか、NFBの如何にかかわらず高域が若干勝ったサウンドですが、それが楽音や音声の繊細な表現に寄与します。使用するスピーカーを選ぶアンプで、高域ホーン駆動用に適しているかもしれません。扱い方が繊細で使いこなしが難しいアンプですので、オークションには出品せずに手元に残すことにしました。
サイズ:W16cm、D40cm (1台につき)