檜枝岐〜奥只見ラン                       2005年9月17日〜18日

 檜枝岐〜奥只見というのは、自転車ツーリングを始めてからいつか行ってみたいコースのひとつでした。

 秋の清々しい季節に、と思っていましたが、9月12日を過ぎて東京地方は急に涼しくなってきて時機到来と思って出発。

9月17日(晴れ)

 7時30分浅草発日光行き東武特急・スペーシアはもう既に大勢の行楽客を乗せていた。特にハイカーが多い。よく見るとサイクリストも8人ほどいるようだ。ひとつの列車にこんなに沢山のサイクリストを見るのは初めてのことだ。みなどこへ行くのだろうか。

 7時30分丁度に列車は走り出した。車内は冷房が効き過ぎ少々肌寒い。今回の出で立ちはドライメッシュTシャツに短パン。そう夏そのものの格好だが、ここ数日東京の気温は低くなったが走り出せば暑くなるだろう、そう思ってこの服装にしたのだが、ちょっと失敗したかな、と思った。南会津は東京よりも確実に気温は低いのだから。そんな思いから長袖のポロを一枚持ってきた。それにゴアのカッパもあるし、防寒的にはそれで充分な筈だが、でも短パンは失敗だったかなぁ、と思った。

 特急スペーシアは下今市駅で降り、そこから東武鬼怒川線に乗り換えだ。ここでわたしを含め9名のサイクリストが鬼怒川線へ乗り込んだ。鬼怒川線は新藤原から会津田島行き野岩鉄道となる。ここでひとりのサイクリストが自転車を抱えて降りていった。奥鬼怒林道にでも行くのだろうか。

 10時20分会津高原着。ここから今回のツーリングは始まる。ハイカーがどっと降り、なんとサイクリスト8名全員がここで降りた。ハイカーは尾瀬、会津駒だろう。サイクリストはというと、えっ、みんな檜枝岐に行くの?会津高原というと檜枝岐しか思いつかない。改札を出て、それじゃ自転車を組もうか、と周りを見るとハイカーたちは既に檜枝岐経由御池、沼山峠行きのバスに乗り込んでいる。サイクリストはここで自転車を組むはずだ、と思って見渡すと誰もいない。駅を降りて5分足らずで組んで出発出来る訳はない。しかしわたし以外7名はどこにもいない。御池、沼山峠行きバスにでも乗り込んだのだろうか。まあ他人のことはどうでもいい。駅で水筒に水を入れ出発準備が整った。サドルをポンと叩き出発だ。

 本日は走行距離46.5Km。total655m upだ。まずは中山峠である。400mupだ。檜枝岐には会津高原からだと二通りの道がある。ひとつは国道352号中山トンネルを経由するのものと、旧道で中山峠を経由するものがある。国道は道幅が広い分、クルマ、二輪等の通行量は多いはずで、旧道の交通量は国道に比べて遙かに少ないであろうと予測した。しかし標高差は40mほど高い。自転車で40mの標高差は大きいが、それよりも交通量の少なさを選んだ。

 いきなり400mupで息が切れるが不思議と汗はかかない。気温は高いが湿度が低いからだろう。それにしても今日は暑い。列車内で今回の夏の服装では失敗したかな、と思ったのだが、いやこれで正解だった。それにしてもさすがにクルマは少ない。駅前を走る国道はそれなりにクルマの数は多かったがこちらの旧道は交通量がまるでない。たま〜に思い出したように農家の軽トラが行くくらいで気分がいい。とくに爆音を轟かすバイクがいないのがよろしい。やがて1,140mの中山峠へ到着。大した展望も利かぬ峠は暑いだけで長居は無用。ここから舘岩村R401分岐まで490m downだ。まずは舘岩川まで一気に410m down。気分が良い。自転車は山スキーと同じで登ったらその分下りが楽しめるので実にいい。

 時計は12時を回りそろそろお昼にしたいのだが、木陰がまったくなく休める場所がない。昨日の東京は涼しかった。それに比べ今日はまったくなんて暑さだろう。R401分岐を経て檜枝岐への登りが始まった。腹が減ったが休める場所はなし。時折現れるスノーシェッドは確かに涼しいが、そんな中で昼メシなんか食べたくない。空腹でヘロヘロになったころ「高畑スキー場」に着いた。夏期休業中のレストハウスの軒下が広く日陰をつくっており、絶好の食事処である(^^;  風が涼しく抜けて気分良く昼食を採れた。ソロツーリングではおしゃべりする相手がいないため、休憩はついつい短めになるのが常だが、今回は後半の檜枝岐への登りに備え、たっぷり休憩した。といっても20分であるが。

 檜枝岐までは先ほどのR401分岐から255mupだが、だらだらと登っていてラクはさせて貰えない。やがて見覚えのある小豆温泉を通過。ここに「窓明の湯」というとても気分の良い日帰り温泉があるのだが、本日はパス。やがて幾度か入ったことがある「アルザ尾瀬の郷」(日帰り温泉とプールがある施設)を見送れば今宵の宿、檜枝岐はもう目と鼻の先である。檜枝岐に着いたらまず裁蕎麦を食べようと思っていた。先ほど食べた駅で買った小さなおにぎり二つではいくら何でも少なすぎる。美味い裁ち蕎麦を思い出したら急にお腹がすいてきた。ここまで来る沿道では両側に蕎麦畑が広がり、黒い蕎麦の実を付けて刈り入れを待っている。一部では既に借り入れが始まっていた。

 やがて懐かしい檜枝岐に到着。以前は沢や山スキーでちょくちょく来ていたが、来なくなって随分となる。一番最後は、11年前と思っていたが、5年くらい前のゴールデンウィークにCHALOOさんと小鉄号で来たのが最後だった。

 檜枝岐に着いてからは一路「まる屋」を目指した。ここで美味い裁ち蕎麦とビールを飲むために少し前から水を飲まず喉をカラカラにしてきた。喉が渇きすぎ、そして暑さのためにフラフラしながら店内へ。すかさず生ビール大ジョッキーと裁ち蕎麦を注文。ビールを一気に飲み干せばその冷たさにクラクラしながらも生き返った思いだ。やがて裁ち蕎麦が来た。期待していた裁ち蕎麦だがあまり美味いと感じなかった。確かに風味はあるものの、あまり美味いとは思えない。やはり一年中で一番古いそば粉を使っているからだろう。新蕎麦まであとひと月といったところか。店員に新蕎麦はいつからか、と尋ねるとその蕎麦は新蕎麦だという。えっ!と訊けば南会津では主は秋蕎麦だが夏蕎麦も作っているという。夏蕎麦は8月下旬に刈り入れし9月には夏の新蕎麦として出しているという。そして今食べてるのがその新蕎麦なのだと言う。それにしても特別美味いと感じない。これなら最近急速にウデを上げている樹々亭のあきちゃさんが打つ蕎麦の方が断然美味い。それにこのもり蕎麦に940円はチト高いなぁ。

 満腹になり、暑さで消耗した身体にいきなり生ビールを入れたせいか、酔っ払ってしまった。そこで酔い覚ましにおなじみの日帰り温泉「駒の湯」へ。気分の良い露天風呂に長々浸かり、まったりしているとアルコールが抜けてきたようだ。

 涼しい風が抜ける休憩室でビールを2缶飲んだ。血流が良いせいかアルコールがよく回る。またも少しフラつきながら酔い覚ましに温泉街を散歩する。



檜枝岐の六地蔵さん


 檜枝岐歌舞伎の舞台など廻り気分良く今宵の宿「かねや」へ。思っていた通りのボロい民宿であるが、宿のオヤジは人の良さそうな感じである。部屋は古いながらも清潔で気分が良い。すぐに別棟にある風呂へ。これまた古い檜風呂であるがいい温泉だ。湯上がりに瓶ビール大を貰い、これでまたも酔っ払う。食事は大抵18時以降であるから少し横になろうとしていたところに食事だという。ええっ、まだ17時だぜぃ。だけど出来たというのだから仕方あるまい、と近くの酒屋で買った酒を持って階下の食堂へ。食卓には山菜、キノコのお浸し、煮物、天ぷらにオヤジが釣ってきたという18センチ前後のイワナの塩焼きが2匹。そしてやはりオヤジが取ってきたサンショウウオの天ぷら。ズラリと並んだ料理に大満足。そして美味い。そば餅のはっとうに締めはやはり裁ち蕎麦だ。いやはや大満足だった。

 腹も膨れ、酔いも回って「はい、それまぁでぇよぉ」状態でそろそろ寝ようかと思っていた19時頃、突然オヤジが呑もうと乱入。断り切れず、片付けられた食堂で杯を重ねる。最後はなんと風呂にまで酒を持ち込み、オヤジと風呂場で延々と飲み続けた。就寝時間不明。

会津高原駅10:45――中山峠11:20/11:25――舘岩村R401分岐12:15――檜枝岐13:50


9月18日(快晴)

 4時30分に目が覚めた。二日酔いで気分が悪く、アタマも痛い。本日は小出まで走らなければならず、まったく参ったなぁ、と思いながら風呂へ。20分近く浸かっていたら血行が良くなったのか、頭痛は治まった。しかし気分は悪い。参ったなぁ、と部屋へ戻ろうとした時にオヤジが厨房から出てきた。夕べはど〜も〜。なんてケロッとしている。夕べはオレよりも遙かに飲んでいて随分酔っていたように思えるが、今朝はなんとシャンとしていて朝食を作っているではないか!なんてヤツだ。オレの負けだぁ、すっかりやられた!なんて思っていると湯上がりにはやはりコレでしょ?なんてビールを持ってきた。いや、さすがに瓶ビール大は飲みきれない、というと残してもいいから飲んでみたら、なんていいやがる。それじゃまあ少し飲むか。ワタクシも嫌いな方じゃないから・・・ってそんな場合か!今日の行程を少しは考えろ!でも結局全部飲んじゃった。(^^;

 朝食は6時から。ハイカー、釣り客の宿泊が多いせいか早い時間から食べられるの嬉しい。朝食を食べているとオヤジが酒を持ってきて「やるかい?」などと聞いてくる。えっ!というとどうせ自転車でしょ?などとのたまった。けっ、冗談じゃないぜ!とも言えず「いや昨夜も言った通り今日はこれから御池を越えて奥只見湖を通って小出まで行かなければなりませんから」というと「ああ、それは大変だねぇ、えらいねぇ」などと言ってやがる。まぁ〜ったくなんてオヤジだ。

 食事を終え、精算を済ませると「また来らっしゃい、また飲もう」なんて言ってやがる。けっ、もう当分来ないよ。今度来るとしたらじぃさん、アンタが死んでからだ!とも言えず「あい、また来ます。お世話さまでした」と言うとにっこりと「待ってるからねぇ」ですと。

 本日は走行距離110Km。total1,505m up。6時半出発。谷の村にはまだまだ朝陽は差し込まず少し肌寒いが少し走れば身体が暖まって来る。酔いがまだ残っているもののキリンテを快調に通過。七入からは御池への登りが始まった。御池まで400mup。やがてぶな坂だ。つづれ折れの激坂である。七入から御池までは10%から15%、平均12〜3%の登りが続き、身体が馴染んでいない朝は相当キツい。途中ぶな坂清水で小休止し、甘露な水で喉を潤せば元気が出てきた。



ぶな坂清水。冷たく美味い水だ


 相変わらずキツい登りが続くがぶなの巨木が疲れを癒してくれる。ようやく登り切った御池にはこれから燧、尾瀬沼に行くハイカーたちが大勢いた。御池の広い駐車場も本日はすぐにマイカーでいっぱいになってしまうのであろうか。早朝なのに既に沢山のクルマが停まっている。峠でゆっくり休み、そこから奥只見湖遊覧船「尾瀬口」まで一気に750mdownだ。下りは寒いだろうと一応グローブをはめた。下り出すとやはり寒く震え出した。手、指はグローブに保護されているため冷たさは感じられない。しかし寒い。長袖を着れば温かくなるのは判っているがスピードに乗っている自転車を止めるタイミングを見つけられず、鼻水を飛ばしながらも結局は最後まで着ないで来てしまった。ああ、寒かった。(^^;

 奥只見湖遊覧船の停泊場「尾瀬口」を見ておこうとしたが、見落としたらしく、気が付けば遙かに来てしまった。「尾瀬口」はこのコースのエスケープになるところだけに、後々のため確認しておこうと思っていただけに残念だった。

 「尾瀬口」から銀山平まで約30Kmあるが、その間に200m、140m、120mのupがある。途中、橋の付近に随分クルマが停まっているなぁ、と見れば「恋ノ岐沢」出合であった。恋ノ岐沢は平ヶ岳に突き上げている人気の沢だ。自分は沢から遠離ってしまったが、まだまだ沢屋は健在なのか、と思うと嬉しくなる。ここからまた登りだ。ダム湖沿いに付けた道だが複雑な地形故up downが連続する。疲れてきたなぁ、と思ってきたころに銀山平に到着。湖面には釣りのボートが何艘か浮いていて長閑な風景だ。



奥只見湖。気分良い湖面には釣りのボートが浮かぶ


 食堂に入り缶ビールを一気に飲み干せば生き返る思いだ。二日酔いもさすがに抜けている。あまり美味くない「けんちんそば」を腹に入れ、本日最後の登り、枝折峠に向けて出発だ。450up。疲れ始めた脚にキツい登りだ。時折顔を上げると毛猛の盟主、未丈が目の前にデカい。それが救われる。ようよう登り切った峠には沢山のクルマが停まっていた。こんなに沢山のクルマだが、ここに停めてどこに行くのだろうか?と地図を見れば越後駒への最短ルートとなっているのだ。知らなかった。このルートは当然無積雪期のみだが、これは近い。峠には5分の休憩で大湯温泉まで900mのdown。タイトなブラインドコーナーが続き、気が抜けない。それでもピューと下って13Kmを25分。枝折峠から小出駅までは40Kmを1時間。

 本日は14時まで小出に着くようだったら、越後湯沢まで(40Km)走るぞ!と堅く心に決めていたが、よくよく考えると湯沢まで行く意義も拘りにないことに気付き、止めにした。でも最低でも六日町までは・・とも思ったがやはりその「最低でも」に何の意義も見出せず止めにした。それならばせめて小出から上野までは普通列車で・・・と思ったがなにが「せめて」なのか判らなくなったので浦佐からフツーに新幹線に乗って帰ることにした。新幹線の中でビール、酒で酔っ払ったアタマでいろいろ考えたが、なぜ意味なく湯沢まで走ろう、とか最低でも六日町まで、とかせめて普通列車で、なのか?と自問するが、その自分で思いついて自分で否定するという、まさにマッチポンプの典型なのだが、一体何故なんだろうか?やはり体育会系?の血が騒ぐのであろうか?と思ったら車中でひとり大笑いをしてしまった。ワシってやっぱり体育会系?ってか。大爆笑。

 こうして秋のツーリング第1弾は終了した。今回もまた楽しい思い出が出来ました。次のツーリングに期待しながら。

檜枝岐6:30――七入7:00/7:05――御池8:00/8:20――恋ノ岐沢出合9:40――銀山平11:20/11:50――枝折峠12:45/12:50――大湯温泉13:15――小出駅13:50

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