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ここを占拠していたルカを倒し、ここに住む人たちに平和が訪れ、町はボロボロで復興には程遠いが人々に活気が戻り、明るい町となった。
それと同時に俺達はこの町から離れなければならない日も訪れていたのだった。
俺達は隠れ家に置かせてもらっていた荷物をまとめ、長老が好意で用意してくれた馬車に荷物を乗せた。
「今までお世話になりました」
俺は馬車に乗りながら長老に礼を述べると、長老は首を横に振り
「何を申しますか。礼を言うのはこちらの方です。
あの忌まわしき吸血鬼を倒してくれたことに感謝でいっぱいでございます。
これからどちらへ参るのですか?やはりこのまま吸血鬼狩りをなさるおつもりで?」
「ええ。それが俺達の使命ですから」
「左様ですか。ご武運を」
俺は馬の綱を振り、馬車を出発させた。
そのときだった――――
「クルス!!」
ティアが走りかけた馬車に近づいてきた。
それを見て、馬車に乗っていたクルスが身を乗り出した。
俺は慌てて馬車をを止めた。
「クルス!!これ、私だと思って大事にしてね!!」
とクルスに差し出したのは銀製のチェーンにアクアマリンがついたペンダントだった。
「ありがとうございます!!きっと―――」
クルスが言いかけたそのとき、ティアはクルスの頬のキスをしたのだった。
「――――――?!」
「あ゛――――――っ!!」
キスをされて耳まで真っ赤になり声にならない声を出すクルスとショックを受け叫ぶセレネの声が重なった。
「おまじないだよ☆」
とティアは赤くなっているクルスに笑顔を向けると、さっさとその場から離れてしまった。
「ずるいぃぃっ!!あたしだって一度もしたことないのにぃぃ〜っ!!あんの女狐めぇぇぇぇっ!!」
やれやれ……また始まったか……。
「クルス!!あたしにもほっぺにちゅーしてよ!!」
「ええ?!なんでですかぁ?!」
「いいじゃない!!」
「嫌です!!」
馬車の中で嫌がるクルスと怒るセレネが暴れまわる。俺は二人をほっておいて俺は再び馬車を走らせ、次の町へ向かったのであった。 |