ACT4 セレネ−@

 

 ……なんか……つまんない。
 あの、ティアという子があたし達を自分達の隠れ家に案内してくれて、なおかつ豪華な食事まで出してくれたのはありがたいけど、あのクルスにベタベタしているのには気にくわないわね。
 クルスは人がいいからあんな女狐に惑わされているんだわ!!
 アレスは長老に状況などの把握のために事情聴取、クルスはティアと仲良く談話している。そしてあたしは、一人だけ頬を膨らませてすねていた。
 こうすればきっとクルスが来て「だめですよ、セレネ。折角の顔が台無しですよ。」って言ってくれるはずだもん。
 ふんだ。
 つまんない、つまんない。
 なんかすっごく気にくわない!!
 こーゆーときには吸血鬼退治が一番よね。
 そこらへんにいる吸血鬼やゾンビを倒していけばこのもやもやとした気持ちは吹っ飛ぶはず!!
 そうと決まれば早速吸血鬼退治に行こうかな!!
 あたしはすくっと立ち上がり隠れ家から出ようとしたが、
「あれ?セレネ、どこへ行くんですか?」
 クルスがティアをほっといてあたしのところへ近づいてきた。
 あたしは思わず、目をウルウル輝かせてしまった。
 クルスってばティアとばかり話していると思ったらちゃんとあたしの行動見てるんじゃない。くぅ〜!!カワイイぃ〜!!
 って一人の世界に突っ走るところじゃなかった。
「ねぇねぇ、クルスも吸血鬼退治に行かない?」
「え?でも、アレス無しで勝手に行ったら、アレスからお叱りを受けちゃいますよ。」
 ちっ。気が小さいなぁ……。でも、そんなところがいいところなのよね〜。
「平気よ!!最強のあたしが付いているんだから!!」
「でも、ここの吸血鬼の親玉がどこにいるかさえ分からないのに、手当たり次第で行ったら親玉の所に着く前に僕達がバテちゃいますよ。」
 あたしは胸を張って言い切ると、クルスがまたもや疑問を投げかけた。
 おいおい……。
「な…ならさぁ…敵地の偵察にならどう?」
「偵察ねぇ……。」
 クルスはう〜んと考え込み、
「偵察ぐらいならいいでしょう。」
 とOKを出してくれた。
 さっすが、クルス。話が分かるぅ!!
「問題なのは敵地ですよね〜。」
「そんなもんテキトーにちょろちょろ動き回っていれば見つかるわよ。」
「ダメですよ。
 計画を立てていかないと、前みたいに自爆しますよ。」
「う……っ。」
 クルスの言葉にあたしは反論すらできなかった。
 クルスってばおっとりしてほえほえしているわりには厳しいこと言うのよね〜。
「あのぉ。親玉の住んでいる所なら分かりますよ。」
 と、あたし達の会話に割って入ってきたのはあのティアだった。
 なんで、こーゆーときに入ってくるのよ!!
「でも、あなたをまた危険な目に遇わせるわけにはいきませんから、場所だけ地図で教えてください。」
 と、クルスは控えめに断りがなら胸元に入れていた地図を広げた。
 なんか…半分あたしを残して二人の世界に入り込んでいるような気がする……。
 調子のいい奴……。
 クルスはティアに場所を教えてもらうと―――
「アレス。僕達先に敵地に偵察してきますね。」
 と地図をしまい手に黒のグローブをはめながら行き先を告げたのだった。
 いちいちアレスに言わなくてもいいのに……。
 あたしはそう思いつつ、馬にまたがり敵地の偵察に向かった。