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ACT6 アレス−A |
| 「な…なんだこりゃぁ……」 俺は偵察に行ったクルスとセレネが帰ってきて驚いた。 なんと、偵察に行ったはずなのセレネが大怪我をして帰ってきたのだ。 腕が複雑に折れて原形が留まっていない。セレネ自身も意識を失いぐったりしてかなりの重体だ。 一体誰にやられたんだ? 「ひどい怪我。早く手当てをしないと……!!」 ティアという娘を先頭に娘達が傷ついたセレネの手当てを始めた。 クルスは手を少し焦がしているがさほどの怪我ではない。 「一体どうしたんだ?」 「実は偵察に行ったところ、偵察している所を向こう側に気づかれちゃいまして……。とっさにセレネが魔法弾を放とうとしたら向こう側から逆に攻撃をされて、一瞬のうちにこうなっちゃったんです。 あ、僕のはわずかな情報を手に入れるために自分でやったんで平気なんですけどね。 でも、偵察へ行ったおかげで少々情報を入手しました。」 「どんな情報だ?」 「一つは向こうがかなりの魔力の使い手であり、人肉を食べる吸血鬼であること。 二つ目は強力な結界が張ってあって無理に入ろうとすると体が砕けることです。」 「策はあるのか?」 「前者の方は情報があまりにも少なく独断で感知したことですから、実際に戦ってみないと分かりません。 ですが、後者の方は歪曲結界術を使えば何とかなります。」 ……歪曲結界術。自分の意志で結界を張った術者を遮断し、結界を無理矢理歪ませる術か。なるほど、補助系魔法を得意とするクルスにしてみれば朝飯前だな。 けれど、俺以上の攻撃系専門のセレネがこの状態だと二人で敵を倒すにはかなりてこずるな。 どうする? このまましばらく野放しにして再度ここに訪れて倒すか、それとも二人だけで倒すか。苦渋の決断だな。 「どうしますか、アレス。」 「セレネがこうも簡単にやられたんだ。 もうしばらく奴を見張ることに………」 『きゃぁぁぁぁぁぁっ!!』 俺が言いかけたとき、外で女達の悲鳴があがる。 俺とクルスは急いで外に出てみると、外には大量のゾンビがこっちに迫ってきた。 「あの吸血鬼仕業でしょうか?!」 「恐らくな。クルス、やれるか?!」 「なんとか!!」 クルスは返事を返すと、構えて術を唱え始めた。 「我は天の使いにて汝を裁く者 汝は我によって裁かれる者 聖なる浄化の炎にて穢れた身を滅せよ!!」 クルスの周りに眩い光が発生する。それを見たゾンビたちは我先にと恐れをなして逃げようとする。 どういう効果か知ってか知らんかわからないが、ゾンビにしてはいい判断だな。 「浄化炎(じょうかえん)!!」 クルスが放った眩い浄化の炎は逃げ惑うゾンビたちに容赦なく襲い掛かり、キレイさっぱり消滅した。 「ふぅ……っ。」 汗を自分の服の袖で拭うクルスは俺の方を見てにこっと微笑んだ。 「アレス、あとのことは任せました。」 どういうことだ? しかし、その疑問はすぐさま解決された。 なぜならいくつかのゾンビたちは物などに隠れて難を逃れていたからである。 結構芸が仕込まれているじゃないか。 俺は手を鳴らし、呪文を唱え始めた。俺の横にクルスがピタッとくっつき、クルスもまた新たな呪文を唱え始めた。 「全ての忌まわしき民よ 我ら裁きを与えし者の声に応え 滅びを迎えよ」 「補助を目的とせんとする精霊の一つ光の精霊よ 我が前に立ち愚かなる民に裁きを与えし者に 汝の力もてその力を与えんことを!!」 俺とクルスが唱えている呪文が重なり合う。 それと同時にゾンビたちがあっという間に砂になって崩れていく。 「アレス、ナイスですぅっ!!」 クルスがにぱっと微笑んで俺の肩をぽんっと叩いた。 まぁ、今回はクルスのおかげでもあるんだけどなぁ…。 「おまえもありがとうな。」 「いえいえ、礼にも及びませんですぅ。 それにしても、なんか計画的ではないですかぁ?」 計画的? 「どういうことだ?」 「だってそうでしょう。 今までここは一度も襲われたことがないんですよ。 それが俺達が来たとたんまるでここが分かっているかのようにゾンビたちがやってきたんですよ。 おかしすぎるじゃありませんか。」 確かに言われてみればおかしすぎる。 長老の話だとこの隠れ家は一度も襲われたことがないと言っていた。 う〜ん。分からん……。 クルスに任せれば、何かわかるかもしれないな。 「クルス、頼みがある。」 「分かってますよ。この奇妙な謎を調べろでしょう?」 人の心を見透かすように微笑みながらクルスが答えた。 ……こいつに任せればなんとかなるか。 |