ACT7 セレネ−B

 

 ……どれくらい時間だがったのだろう。
 あたしはゆっくり目を覚ましてみると、窓から注いでくるの光は満月の光だった。
 ……もう、夜か。
 あたしはそう思いながらベッドから体を起こし、自分の体を見渡した。
 変形した右腕には無理矢理といっていいほどのやり方でギブスがはめられ、至る所が包帯で巻かれて手当てされていた。
 ……クルスがやってくれたのかな?
 それにしても静かな夜ね。ここはティア達がいるところかしら?
 あたしはぐるりと部屋を見渡した。粗末なベッドとクローゼットしかない質素な部屋だ。吸血鬼の手から逃れた人にしてはまあまあな部屋かな。別の町では建物さえなく、毎日野宿を強いられていた人もいたし……。それに比べたらここは建物もある、食料もあるで普通の生活とは何も変わらないわね。
「ああっ!!セレネさん、目を覚ましたのね!!」
 ……げげげっ!!ティア!!
 あたしは部屋に入ってくるなり喜びの声をあげた人物に身を退いた。
 よりにもよって、目が覚めるなり一番会いたくない人物と顔を合わさなきゃならないなんて……。最悪……。
 起きて最初に会うのはやっぱりクルスのほうがいいわ……。
 そう思っていても現実は実に厳しい。ティアはあたしのところに近づくなり、あたしの腕に巻かれていた包帯を解き始めた。
「ちょ…っ?!何すんのよ?!」
「だって、そろそろ包帯を換える時間ですもの。」
「あ…っそ。」
 ティアの言葉にあたしは脱力した。
 なんだ……ただの勘違いか………。
「ティア、これ以上手当てしなくても良いわよ。」
「え?!」
 あたしの言葉にティアは心底驚いた。
 あたしは驚いたティアには目もくれず、右腕にはめられたギブスを勢いよく剥がした。それを見たティアは慌ててあたしの行動を止めようとした。
「セレネさん、ダメですよ!!まだ完治してないんですから!!」
「普通の人間ならね。
 でも、あたしの場合はこれくらいちょっと手を元に戻せば治っちゃうわよ。」
 あたしはそう言いながら、右腕をぐるんっと回した。すると、さっきまで変形していた右腕は見事元通りになった。
「おっしゃ、右腕修正完了!!」
「……うそ……」
 あたしの行動を見て、ティアは目を見開いて絶句した。
「だから言ったでしょうが、あたしの場合は特別だって。
 ところで、クルスたちはどこいったの?」
「……リビングにいます。」
 目を見開いたまま、ティアはドアの方を指差した。
 くぅ〜っ!!感動の(?)ご対面〜!!!
 あたしは喜びのあまりティアをほっといてドアに向かって走っていったのだった。