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第拾参章 邪魔者 |
| 四の君と出会い、曲霊が再び襲い現れたあの日から二ヶ月近く経った。暦の上ではすっかり秋となり、御所の草木も秋らしい姿へと変化していき、御所の中も秋らしい物に衣替えされた。あれからというもの曲霊の攻撃は一切なく、平和な日々が続いている。四の君自身はというと、あの日のことがよほどショックだったのか、もしくは常葉と接吻できたことが嬉しすぎたのか、寝込んでいるそうだ。あたしはあの光景を思いだすたびに腸が煮えくり返りそうな気分になった。一方、無理矢理されてしまった被害者の常葉はよほど接吻されたのと、あたしに裏切られたのがショックだったのかず〜んっと暗くなり、ここのところまるで背後霊の如くあたしに引っ付いている。あたしにとってこれが鬱陶しくてしょうがない。しかも、夜になるとなるで常葉はさらに厄介な存在となる。一方的にあたしの身体を求めてきて、こっちが承諾をしていないのに、あたしの中に無理矢理入ってくる。おかげでここ最近まともに寝れたためしがなく、寝不足状態である。 あ〜だめ。今にも脇息に寄りかかって寝そうだわ。今日は五節句にあたる九月九日。おせちを食べるのに眠くてたまらないわよ〜。 そう思っていると、常葉があたしの部屋に来て、あたしの後ろに回り、あたしを後ろから抱きしめ、あたしの髪を片手で愛撫し、あたしの左肩に顎の乗せ、あたしの耳元でぶつぶつと言い出した。 「千景の髪って綺麗だよな―――」 まったく。今日も来たか。 「こんなに綺麗な髪を持ってて、可愛いのにさ、千景はあの日俺を裏切った――――…」 とあたしの肩に泣き伏せる常葉。 「もー…毎日同じことしか言わないんだから!!ちゃんと謝ったでしょ!!だからいい加減拗ねるのはやめてよね」 「俺は根が深い男なんだよ。いくら言葉でおまえが謝っても許してやんない。あんな裏切り方されたら俺の心はズタズタだよ―――…」 とさらに泣き出す始末。あたしはその行動に深い溜め息をついた。 はぁ〜…。いくら謝ってもコレだからなぁ…。この後に「じゃあどうしたら許してくれるの?」って訊くと、「これから夜の遊びをしよう」って言うんだもの。最初は「それで許してくれるならまあいいか」って軽い気持ちで承諾してたけれど、これが連日連夜続くと、いい加減やんなっちゃう。どうやったらこの拗ねてる常葉を一発で黙らせられるかしら。 溜め息をつきながらそう思っていると、常葉は泣きやみ、今度はジト目であたしに尋ねてきた。 「なんで『どうしたら許してくれるの?』って訊かないの?」 「言っても毎日同じ事しか言わないから」 「分かってるんだったら、さっさとやろうよ」 「イヤ」 とあたしがキッパリと断ると、ムッとなる常葉。そしてむっとなったまま再度あたしに尋ねる。 「どうしてだよ」 「イヤなものはイヤだから」 あたしがそう言い切ると、常葉はさらにムッとなり、 「俺に嫌われたくないだろ」 「別に」 「俺を怒らせたらヤバイぞ」 「別に」 「俺もおまえのように裏切るかも知れんぞ」 「別に」 とすべてさらりとした言葉を言い放つあたしに、よほど気に食わなかったのか、常葉はあたしから離れていった。 おんや?効果覿面かな? 「………千景。おまえ、俺のこと愛してるんじゃなかったのか」 「そりゃ、愛しているわよ」 「だったら、なんであんなことするんだよ」 ……そーくるか。今まで尋ねてこなかったから、すっかり理由を忘れてたわ。 「別に四の君が常葉と接吻できて嬉しそうだったから親切に仲睦まじい雰囲気を作ってあげようとしただけよ」 「それがお節介って言うんだ」 あたしは常葉の言葉にカチンッときて、投げやりに言い返した。 「お節介で悪かったわね」 「ああ、悪いよ。自分の夫を他の女性に、しかも夫が嫌いな女性に売り飛ばすなんてね」 「別に売ってはいないでしょ!!」 と半分喧嘩を売っているような常葉の口ぶりに、あたしも半分喧嘩口調で言い返すと、常葉も負けじと言い返す。 「売っていると同じだね。よりにもよってあんな奴に売られるとは思ってもみなかったなぁ。俺も舐められたもんだ。 俺はおまえがこんなことするヤツだとは自信を持って思っていたんだけどな。とんだ裏切り行為をされたもんだ」 「あーっそ。そんなにあたしの親切心がうざったいのなら、自分の本当の理想に合った他の女性とまた結婚すればいいんじゃないの?ま、そしたらあたしはお二人の蜜月の邪魔者になるわけだからさくさくっと出家してあげるから安心してちょうだ………」 ぱぁんっ!! とあたしが言い終わる前に、常葉はあたしの頬を引っ叩いた。 「なにすんのよ!!」 あたしは叩かれた頬を抑えながら常葉を睨みつけると、常葉はただ悲しそうな表情で涙を流していたのだった。そして、そのあと何も言わずに部屋の外へ出て行ってしまった。 い…一体なんなのよ……。 「女御様。今のは拍子とはいえ、いけませんよ」 と傍に控えていた八重がぼそりと言った。 「どうしてよ?」 「女御様と東宮様は仲睦まじく三途の川で愛を誓いあった仲ではありませんか。なのにあの言葉にはきついものがあります。 もし、私も恋人にあんなふうに言われてしまったら、悲しくて東宮様と同じ事をするでしょう」 「じゃあ、おまえはあたしが全面的に悪いとでも言うの?」 「完全にそうというわけではありませんが、先程の言葉は女御様が悪いです」 「私も姉上と同じ意見でございます」 と、八重の意見に賛同する利重。そして、利重はあたしにこんな質問を投げかけてきたのだった。 「もし、女御様が今の東宮様の立場で愛するお方にあのような言葉をぶつけられたらどうですか?」 「…………イヤね。愛する人にあんなこと言われたら深く傷つくわ」 あたしが素直に利重の質問に答えると、利重は笑顔で言った。 「そうでございましょう。東宮様は女御様の言葉にお心を痛まれ、泣かれたのでございますわ。 女御様も少しずつ本当の大人に近づいてまいったのですね」 「………あたし、常葉に謝ってくるわ」 「そうしてくださいまし。きっと今の女御様のお言葉であればきっと東宮様も許してくださるでしょう」 あたしは利重や他の女房達に応援され、あたしは慌てて部屋から飛び出し、常葉のあとを追おうとしたが、すでにどこかへ言ってしまったらしく、あたしはこの広い東宮御所を探し回ったが、常葉はどこにもいなかった。 いつものあの部屋にもいないなんて、常葉は一体どこへ行ってしまったの?!もしかして深く傷ついたあまり入水したとか言わないわよね!!それだったら凄くヤバイ!!早く探さなくちゃ!!っていっても他にどこがあるっていうのよ。 あたしはそう思い、半分焦りながら探していると、 「まぁ、女御様!!」 とあたしの行動に驚く女性の声。あたしははっと振り返ると、そこには三十路をいったあたりの女房装束を纏った女性数人が立っていた。 えーっと名前、なんて言うんだっけ? 「東宮はどこへ行ったか知ってる?!」 「え?!確か弘徽殿上御局にいらっしゃいましが…」 「そう。ありがと!!」 と、あたしは軽く礼を言い、その場から離れようとすると、そのあたしの質問に答えた女房が大声で叫んだ。 「女御たる者、廊下を走ってはなりませんよ!!」 こけけっ あたしはその女房の言葉にその場でコケた。 いくらなんでもこんなとこで言わなくてもいいでしょうが…。 あたしは暫く女房が見えなくなるまでしずしずと歩き、見えなくなったのと同時に走った。 あたしは走って弘徽殿上御局に着くと、廊下のすぐ前の部屋の手前で脇息に寄りかかり、がっくり肩を落とす常葉が座っていた。 「常葉!!」 あたしが走りながら常葉の名前を大声で呼ぶと、はっとこちらに振り返る常葉。あたしは急いで彼のもとに行こうとしたが、そのとき足を滑らせ、外に落ちそうになった。 「ち…千景――――っ!!」 や…落ちる―――――っ!! あたしは目をつぶり、地面と接吻する覚悟をしたとき、何かがあたしを抱き上げた。 痛くない…。どうして? あたしはゆっくり目を開けてみると、目の前にあたしを心配そうに覗き込むあたしと年が近い若くて美しい顔の僧侶があたしを抱えて助けてくれた。 「……大丈夫ですか?」 ゆっくり優しく低い声で尋ねると、あたしは少し顔を赤くしながら頷いた。 「ありがとう」 と礼を言うと、その僧侶はくすっと微笑し、あたしを階段のすぐ傍まで抱き上げたまま連れて行ってくれた。階段の傍にはちょっと切れかけた常葉が待ち構えていた。 「……東宮様」 「我が妻を助けたこと感謝するぞ吏珀。おまえがいなかったら女御は大変なことになっていた」 と常葉の言葉にやたら動揺する吏珀という僧侶。ぼそりと常葉には聞こえないくらいの声で「この人が東宮の妻……?」と呟き、あたしをしばし凝視するが 「当然のことをしたまでございます。……と…東宮様の女御様をお守りするのは当然の務め。勿体無いお言葉でございます」 と、あたしを抱えてまま言う吏珀。常葉はすぐに言葉を続けた。 「女御の件はもう俺に任せ、公務を続けよ」 「しかし…」 と吏珀が言いかけたとき、常葉は吏珀に抱えられているあたしの身体を何も言わず、抱きかかえた。 吏珀はしばし何か言いたそうに常葉を見るが、すぐに一礼してその場から去っていった。 そしてその場にはあたしと常葉だけが残された。あたしは呆然と吏珀を見送っていると、常葉が何を思ったのかあたしを抱えたまま、夜御殿に向かった。あたしを夜御殿に連れて行くと、あたしを畳の上に置き、あたしを巻き込んで寝そべった。 「…………千景。おまえあの僧侶に惚れたのか?」 「どうして?」 常葉があたしの身体を自分の元に引き寄せながら尋ねてくると、あたしは首をちょっと傾げて尋ね返すと、常葉は不機嫌そうな顔で答えた。 「助けられた後ずっと奴のことしか見てなかったから」 「あれは助けてくれたからせめて見守ってあげても良いかなって思って見てただけよ」 と、心配かけないように答えると、常葉は不機嫌なまま 「そうか」 と答えるだけだった。 そのあと、常葉は一切口を利いてくれなかったのである。 夜が更けても口を利いてくれない常葉の態度にあたしは夜御殿にも通されず久しぶりに自分の部屋で寝ることになるなと思っていら、予想外なことにあたしは夜御殿に通されたのだった。 しかし、通された後も常葉は一切口を利いてくれなかった。いつもなら服を脱ぐのに、服を脱がず、ただ自分の傍にあたしの身体を引き寄せ、仰向けのままあたしを一切見ようとせず、無言であたしの髪をなでるだけだった。 もしかして、昼間のことまだ怒っているのかな。それとも廊下から落ちたあたしを助けてくれた吏珀のことで何か気に障るようなことをしたのかな。 あたしは常葉の傍で常葉に髪を撫でられながら、どうして常葉が不機嫌なのか、思い当たる限り考えたが、どうしても怒りに障るようことをしたとは思えなかった。 今日のこの空気、すごくどよんでる。あたしがいないほうがいいかもしれない。藤壺に戻ろう。 あたしはそう思い、むくりと起き上がると常葉に尋ねた。 「常葉。なんでそんなに怒っているの?」 「……………」 あたしが尋ねても常葉は何も答えようとしない。あたしははぁっと溜め息をつき、今度は心の中を覗いてやろうと試みるが、心も一切閉ざしてしまっていた。 「もう、あたしとも口を利きたくなくなってしまったの? あたしもうこの空気に耐えられないから自分の部屋に戻るね」 「何も言わずにここにいろ!!」 あたしが立ち上がろうとしたとき、常葉がいきなり怒り口調で鼓膜が破れそうなぐらい大声で叫んだものだからあたしはびっくりした。 「……常葉?」 「いいからさっさと寝ろ。おまえが寝る場所はここだけだ」 「……はい」 とあたしの言葉に目もくれず、常葉は目をつぶって言った。あたしは何も言い返すことができず、ただ常葉の言う通りに元に戻って常葉の胸元で眠り始めた。 あたしがうとうと浅い眠りに浸っていると、突然前が翳った。あたしは目を閉じたまま疑問に思っていると、誰かがあたしの手を取り、そのあとに悲しそうな常葉の声が耳に入ってきた。 「………千景。何故俺がおまえと口を利かなかったのか理由を教えてやるよ。ま、寝てるからこのことは覚えてないかもしれながな。 俺は落ちたおまえを助けることができなくて悔しいんだ。自分の妻を自分の手で守れなかったからな。それで俺は自分の罰としておまえと口を利かないようにした。でも本当はおまえと言葉を交わしたかった。でもこれは俺の罰だから…。俺は罰さえなければおまえを抱きしめ、おまえの身体を肌で感じたい。今その罰を解いてもいいのだろうか。解いてしまったら俺は野獣と化すだろう。それでも俺はおまえを抱きたい」 と泣きそうな声で常葉は言うと、常葉は寝ているフリをしているあたしを強く抱きしめた。 「ああ…。この感触はやはり千景だ」 とあたしを自分の体を摺り寄せるようにあたしのからだの感触を確かめながら抱いて、耳元で感嘆の声を漏らす常葉。あたしは寝ているフリをしているので、何もすることができなかった。 「こんなことをして俺は神に罰せられるのだろうか。 いいや。それでも俺は千景を愛しているんだ。誰にも見せやしない。誰にも渡しやしない。神にだって渡すものか。千景は永遠に俺の物なんだからな!!」 常葉はそう叫ぶと、あたしに接吻をした。しばらくして常葉はあたしから唇を離し、あたしから離れた。 「千景。吏珀には惚れるなよ。仮にも俺の正妻なんだからな。 しかし、男の勘で言うとあの吏珀はおまえに惚れたみたいだ。抱きかかえたときのあいつがおまえを見る目は俺と同じようにおまえに恋しているときと同じ目をしていた。それに俺がおまえのことを妻だと言ったときのあの動揺ぶりは自分の惚れた相手が妻だとわかったときに見せるものだしな」 ってなんでそこまで詳しいのよ。 とあたしは寝たフリをしたまま心の中でツッコミを入れた。 「知ってるか。あの男は内裏でも女房達が溜め息をつくほどの評判ぶりなんだぞ。どんな女も味方につけるヤバイ男なのさ。 千景。安心しろ。必ず俺が何としてでもおまえをあの極悪男を守ってみせるからな」 そう言うと、あたしのおでこに接吻をしてあたしが寝ている夜御殿から出て行った。あたしはしばらく寝ているフリを続けてが、なかなか戻ってこないので、目を開け、飛び起きた。 きぃ… あたしはゆっくり戸を開けて夜御殿から出ると、昼御座には常葉はいなかった。あたしは単姿では寒いから何枚か上着を着て、髪を前で紐で結わき、昼御座の外へ出た。 うわぁ。この時間帯に昼御座から出たのってこれが初めてかもしれない。 そう思いながら、あたしは眩い無数の星空を見て感動した。 綺麗。これ常葉と一緒に見たかったなぁ。 そう思っていると、近くに生えていた茂みががさっと動き、あたしは足を止め、息を飲み、茂みを見つめだ。 この時間にあんな茂みの中にいる奴なんていないわよ。もしかして、盗賊? そう思ったその時、茂みから現れたのは昼間助けてくれた吏珀だった。 吏珀はあたしを見るなり驚くが、すぐに嬉しそうに微笑みながらあたしに近づいてきた。 「吏珀」 あたしは表情を変えず言うと、吏珀はさもや嬉しそうに言った。 「女御様に我が名を覚えていただき光栄です。まさかこのような場所で会えるとは…。これも菩薩が導いてくださったのですね」 「なんであなたがここにいるの?ここは東宮の御座所よ」 「女御様を思うあまり、一度だけでもお姿を拝見したくてこのように夜を忍んで参ったのでございます」 と深々と礼をしながら吏珀は答えた。 あたしを思うあまりって、どういうことよ。 そう疑問に思っていると、吏珀は言葉を続けた。 「昼間の女御様はとても美しかったですが、夜の女御様の姿も大変美しい。化粧を落とし、ありのままの姿を私に見せてくださるとは……。大変嬉しく存じます。僧侶の身でなければ、女御様を力ずくで自分の物にしたいものです」 「無礼者!!あたしは東宮の妻よ。誰があなたの物になるもんですか!!」 「何をやっている?」 あたしが叫んだとき、ちょっと遠くのほうから常葉があたし達との光景に目を疑いつつ、あたし達の元にやってきた。あたしはすかさず常葉の傍に寄り添った。その行動に更に驚いた。 「千景…どうした?それに……何故吏珀がここにいる?」 常葉はあたしを守るようにあたしの肩に手を回した。それを見て、吏珀は敵意を見せるような口調で言った。 「私は女御様のことを思うあまり、一度だけでもお姿を拝見したくて夜を忍んでまいったのでございます」 その言葉に常葉は表情を変え 「つまり場合によっては夜這いをするつもりであったというわけだな」 「そのとおりでございます」 と何食わぬ顔であっさりと認める吏珀。 よ…夜這いですって?!なんでされなきゃならないのよ!! 「諦めよ。おまえにとっては叶わない恋だ」 「諦めませぬ。このような御方は二度と現れませんゆえ」 「仮にもおまえは僧侶だろ。東宮の妻を恋するとはなんたる奴だ」 「これも菩薩の導きでございます」 「導きにくそもあるか!!千景は俺の妻だ!!貴様には渡さん!!」 吏珀の言葉に常葉は次第に腹を立てていった。それとは対照的に吏珀は物静かに言い返した。 「東宮がそのように申されても、私は諦めません」 「では、どうすれば諦める?」 「女御様に私の子を身篭っていただきたい」 『?!』 吏珀の申し出にあたしも常葉も驚愕した。 つまりあたしに吏珀の子を産めってこと?! 「それは飲めない用件だな。千景は俺の子しか産むつもりはないのだからな」 「そうなのですか、女御様」 「そうよ。あたしは東宮の子供しか産むつもりなんてないんだから!!」 あたしは半分やけくそになって吏珀に向かって宣言した。その言葉に今度は今まで動揺の色を見せなかった吏珀が驚愕した。 「つーわけだ。さっさと諦めろ」 「いいえ。諦めません」 とまだ諦めない吏珀。さすがに常葉も呆れた。 「おまえも聞き分けのできない奴だな。千景は俺の子しか産まないって宣言しただろーに」 「いいえ。たとえ国を敵に回しても私は女御様を諦めません。必ずあなたから奪い取ってみせます」 「つまり俺の敵に回るわけだな」 「恋愛に関しては回させていただきます。公務の方は今まで通りにしますゆえ」 と、夜が更けあたし達以外は誰もいないところで静かに火花を散らし、敵対する男二人が存在した。 これからいったいどうなっちゃうわけぇ?! |