最終章 それから……

 

 冬椰に告白をして見事カップルとして成立したあたしはそのあと父上に「今すぐ冬椰と結婚しなきゃ尼になって鴨川で自殺してやる」と強引に結婚したいと言うと、半分呆れつつも死なれては困るということで父上はあっさりとあたし達の結婚を認めた。そのあとはトントン拍子で結婚話が進み、陰陽師に頼み吉日を選んでもらい、あたしと冬椰は結婚した。
 結婚して何ヶ月か経ってあたしは冬椰の子をすでに身ごもっていることが判明して、父上を驚かせた。
 しかし、孫ができてからというものの、父上はちょくちょくあたしの部屋にやってきては生まれた子供を可愛がるようになった。
 今じゃあたしと冬椰の間には三人の子がいる。
 その三人をもう目の中に入れても痛くないほどの可愛がりぶりだ。
 ま、いいけどね。
 でも、もうすぐあたしはこの屋敷から離れる。
 あたしと結婚してから冬椰はみるみるうちに位を昇進させた。その冬椰がついに大納言にまで昇進して、冬椰の屋敷の者から冬椰の屋敷に住むようにと言われ、住むことになったのだ。
 位が昇進するのは嬉しいが、住み慣れたこの屋敷から離れるのは嫌だった。
 それに、あたしはすでに冬椰との四人目の子を身ごもっている。
 この子が生まれるまではこの屋敷から離れたくなかった。
 これという悩みの種があるが、それ以上に頭を悩ませていることは未だ東宮はしつこくあたしを入内させようと文をよこしてくる。
 本人は隠しているつもりだが、早く未亡人になって欲しいと言っているのが文を通して浮き彫りになっている。
 あたしはそんなので入内するつもりはもっぱらない。
 一人でやってろと本人の前で言いたいぐらいだ。
 そう思っていると、楓があたしの部屋に入ってきた。
 楓もあれから兵部督から求婚されて結婚したが、今でもあたしに仕えてくれている。
 と言ってもあたしの子供達の乳母となっているが、あたしにとって良き理解者である。
「ははうえぇ〜!!ちちうえがきたよ〜!!」
 あたしと冬椰の二番目の子供で今年3歳になってまだ言葉があやふやな薫(♂)がよちよちとあたしの元にやってきた。
 その後ろからはあたしの愛しの旦那様の冬椰がやってきた。
 冬椰はあたしと結婚してから公務が終わるとすぐにあたしの元にやってきてはあたしたちと一夜を過ごすようになり、あまり自宅に帰らなくなった。
 今日もそうだろう。
 それでもあたしの元に来てくれることが嬉しかった。
「白夜。体の調子は大丈夫か?」
 冬椰は優しくあたしの体を気遣ってくれた。
 だって結婚してからずっと子供を産みっぱなしなんだもの。さすがに生みっぱなしで陣痛やらそこらは慣れてしまったけどね。
 でも後悔なんかしてないわ。
 だって大好きな冬椰に愛されている証拠だから。
「大丈夫よ。お腹の子もすくすく育っているわ。
 それにあなたが来ることが分かってさっきらからお腹の子があたしのお腹を蹴っているのよ。」
 あたしは微笑みながら言うと、冬椰は苦笑しつつもあたしの頬に接吻をした。
 それを見て、子供達が
「あ〜っ。また母上と父上いちゃいちゃしてるぅ〜!!」
「らぶらぶぅ〜」
「あう〜」
 と冷やかす。
 冬椰は顔を真っ赤にしているがあたしは嬉しかった。
「冬椰」
「ん?」
「今、幸せ?」
「なんだよ、急に…」
「聞いてみただけ」
「なんだよそりゃ…。幸せだよ。おまえと子供がいるから。」
「あたしもよ。」
 あたしはおずおずと冬椰の手を握ると、冬椰はただあたしに微笑んでくれたのだった。
(おめでとう……姫……)
 幸せに浸っていたとき、かすかに式部卿宮様の声が聞こえた。
 ありがとう、式部卿宮様。

 

≪完≫