Mermaid princess

 

地上の住人が手を出すことが出来ない不思議な世界
どうしても行きたいと願うけど願いだけでいける場所じゃない
そこはとても穏やかで誰にも汚されない綺麗な場所
地上の住人が言う世界のどこかにある楽園を指すというならばここはまさしくそうかもしれない
ここは海の住人の楽園
何人たりとも近寄れず
何人たりとも汚すことが出来ない
ただ海の中で暮らす住人を静かに守っている

それを統治していたのは人間と魚の挟間から生まれた人魚だった
人魚の掟は地上の者に恋してはならないとある
恋をしたのならば潔く海の泡として消えるしかない

でもその掟を破ってしまってでも恋をしたらどうするんだろう?
それぐらいの覚悟の恋だってある
激情の最中に曝されて自分はどう進んでいくんだろう?
きっと今まで味わったことのない体験が待っているだろう

地上の者を恋した人魚
地上の生活に憧れた人魚
掟をまで破ってまで地上に憧れた人魚
それを突き放つ力になったのは恋だった

恋は潜在能力以上のことをさせてくれる起爆剤
でも一度使い方を間違えればどん底に落ちてゆく
起爆剤は人魚姫を人魚の掟を破って魔女に頼んでまで地上へ行く

でもそれは悲恋の始まり
恋した地上の人はもう好きな人がいた
こんなことが待っているのだったら最初から恋なんてするんじゃなかったと後悔してももう遅い
彼女はもう人魚としても人間としてもいられない
帰る場所なんてどこにもない
もう消えるしかないのに……
悲しみしか残らずただ泣くだけの日々
悲しみに刈られて行うのは負の行為
どんなに悲しくてもどんなに殺したいほど憎いと思っていも土壇場では結局出来なくなる
それが恋だから
恋は甘くて悲しいお菓子
それを口にしたものはその味を忘れることが出来ず何度もそれに手を出したくなる

でも人魚姫は違った
殺したいと思ったけど潔く人魚の掟に従って海の泡となった
最後は母なる海の世界の住人としてのプライドで消えたんだ
だから私達も人魚姫のような恋の行為ができるといいのにね

 

作者コメント→ちょっとテーマを「水」と考えていたら何故か「人魚姫」と思いついて書いてみました。最近の詩はなんか「恋」ばかり出ているような気がしてならないのですが…。

"幻想を奏でる夢"のメニューに戻ります。